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怪傑スダ ~悪臭の誘導員~

クリスマスから大晦日の期間、バイト先の冷凍食品センター
では、入出庫の物量が激増します。

これに伴い、センターへの納入便数も増えますので、日曜日
でも午前中は、納入のための大型トラックで混雑します。

そのため、納入便トラックを誘導する係員を、構内に配置
することになっていて、庫内作業者が日替わりで3人ずつ
駆り出され、トラックの誘導をすることになってます。

たいてい、朝8時から10時頃までが混雑しますので、誘導係は
構内3ヵ所に立って、連携しながらトラックを誘導します。

で・・

今日の誘導係が、イトーさんチームから20代男子バイト1人、
スダさんチームからは僕・・

そして、もう1人がドライバーのMさんです。

今日のMさんは、配達が1つもないらしく、朝はトイレ掃除を
していたようですが、キヤマ課長から、

  おい、おまえ、今から構内で
  納入便の誘導やって来い!

とか言われて、相変わらずボロ雑巾のようにコキ使われている
みたいです。。

それでも、ここを辞めないのは…

他で雇ってくれる所がないから…らしいです。。。

さて・・

誘導係のうち、イトーさんチームの男子バイトは、納入に
やって来たトラックを一旦、センターの向い側にある待機
スペースに誘導・・

そして、僕は、待機中のトラックを順にセンター構内へ誘導・・

その後、Mさんが納入バースの番号をトラックドライバーに伝え、
誘導することになります。

それぞれが手を挙げて伝達したり、声を張り上げて誘導したり
するのです。

僕の場合、納品を終えたトラックが確認されると、Mさんが
手を挙げて合図してくれるので、それに従って、構内に待機
している1台をMさんの方へ、そして、向い側待機スペースの
トラックを構内へ誘導するわけです。

が…

時々、Mさんの姿が見えなくなるのです…。

  ・・・・・・・・・?
  アレ・・・?
  え・・・?

おかしいなぁ…、ちょっと前に1台、納入バースに誘導してた
みたいだけど…

  おーい!
  あそこ空いてンじゃねーの?

とか、

  早くしてよ!
  もう行ってイイだろ?

など、構内で待機している納入便のドライバーたちから声を
掛けられるんですが、Mさんの合図がない限り、勝手に納入
バースへ案内するわけにもいかず…

でも、ドライバーたちは年末の慌ただしさのせいか、少しでも
早く納入を済ませたい一心で…

  おいっ!もうイイだろ!
  後ろがつかえてるし!

  そっち空いたみたいだし…
  オレが先に行かせてもらってイイだろ!

そんなふうにイライラ感溢れる言い方されても…

  あ、あの、ちょっ…、ちょっと
  待ってください!
  スンマセン!
  納入バースの誘導係が居なく
  なっちゃったみたいで。。。

って、僕が焦りつつドライバーの対応をしてるところに、
Mさんがひょっこり現れて…

  ほーい!
  1台入れてイイよぉ~!

と、手を挙げて、呑気な顔で呑気に言うもんで…

そんなことが2回、3回繰り返されるうち、腹が立ってきて…

どうやらMさんは、勝手に抜け出してタバコを吸いに行ってる
らしいのです。。。

  全く言語道断な野郎だ!

僕は心の中で罵倒しながらも、目の前に控えている数台の大型
トラックの運転席で、うんざり顔で待っているドライバーたち
をチラ見しつつ、

  チャンとやってくれよ、
  チャンと。。

と、Mさんに、これ以上周りをイライラさせるな!って、そんな
祈りを込めて念じていたのですが…

トラック1台を納入バースに誘導させたMさんは、澄ました顔で
スーーーーっと、どこかへ消えようとして…

やっぱり、タバコを吸いに行っちゃったみたいです。。。

たまたま、僕はその様子を目撃しまして…

  あいつ、サボることだけは上手いなぁ!
  あいつ、アタマ使うのはサボることだけ
  なんやろなぁ!

と、3度ほど頷きながら、心底そう思ったもんです…。


そして、9時40分…

センター向いの待機バースから、イトーさんチーム男子バイトが
1台の大型トラックを構内へと送りました。

それを受け、僕も構内待機スペースに誘導します。

が…

その先の誘導係のMさんが居ない!

構内で待機していた順番待ちの1台が、ゆっくり発進していく
のですが、肝心のMさんが居ないので、納入バースの指示が
出来ないわけで…

それに目を取られていた僕が気づかないうちに、構内に誘導
されたトラックドライバーは勘違いでもしたのか、そのまま
納入バースに向かって行ってしまって…

あ、、ヤバいなぁ~…と、思っているところに、いかにも
ヤル気なさげな顔でMさんが戻ってきたようです。

ヤル気なさげな顔でMさんは、納入バースに向かって行った
外から入ってきた大型トラックを、ただただボーっと見送って
いるのです。。。

すると、Mさんの背後から、

  オウ、こらぁ~!
  順番違うやろっ!
  こっちが先だろーがっ!?

本来、納入バースへ行くはずのトラックの運転席からスキン
ヘッド、眉毛なしのバリバリ強面ドライバーが、Mさんを
怒鳴りつけたのです!

そのドライバーをひと目見たMさん…

スキンヘッド、眉毛なし、バリバリ、強面…

それらを即座に確認したらしく…

  あ…
  あ?
  あ! ちょっ、ちょっ…
  ちょっ、ちょっと、ちょっと待って…

即座にビビッたみたいで…

  ちょっとじゃねーわっ!!
  こっちは忙しーンやぞっ!

さらなる怒声を浴び、Mさん、しどろもどろになりつつ…

  もう、あの、あの…、あの…、
  もう、もうちょっと、もうちょっと…
  ちょっ、ちょっと待ってて…

そう言うものの…

  だからぁー!
  ちょっとじゃねーって言ってンだろーがっ!
  わかってンのかっ!
  テメー!!

そう怒鳴ったかと思うと、そのドライバーは運転席から
飛び出してきて、何と!

  テメー!
  なにヘラヘラしてやがンだっ!
  こっちはもう1軒、午前中に納品せな
  アカンのやぞっ!!

そう言いながら、Mさんの胸ぐらを掴み、力任せに揺さぶる
のでした。。。

しかし、次の瞬間…

  臭っ!!

ドライバー表情を歪めて、そう言い放ったのです。

  くっさぁぁぁーーーーーっ!

改めてドライバーは、自分の鼻を手でつまみながら言いました。

そのドライバーは、しげしげとMさんを見つめ、

  なんやオメー…
  オメー、何でそんなにくせぇーんや!?

そう言ってから、さらに、

  ねずみ男か、オメーは? 
  
そのやり取りを見ていた僕は、最初、ヤバい!と思いながら、
ヒヤヒヤして見ていたのですが、今、このドライバーの言葉を
聞いた瞬間、声をあげて笑ってしまいました。。。

そうか!

Mさんの身体から発するあの悪臭…

まさに、まさに…

水木しげる先生の、あの…

あの、ねずみ男かも知れんよなぁ~

そうだよ!

上手いコト言うもんだなぁ~

  それより、ふざけんなっ!
  おぅ!
  もう1軒の納品、遅れたらどーして
  くれるンやっ!?
  あぁーーっ?
  どーしてくれるンやてぇーーっ!?

迫力満点、全身全霊で声を張り上げ、強面ドライバーは、
Mさんを怒鳴り散らすのです。

さすがに臭いからなのか、もう胸ぐらを掴んだりしませんが、
その代わり、思いっきり罵声を浴びせるのです。。

それでも、Mさんはただただヘラヘラした態度で。。。

  何やオメー!
  なにヘラヘラしとるんじゃい!?
  こらぁーっ!

そう怒鳴りつつ、強面ドライバーは、Mさんの脛のあたりを
蹴り上げたのです!

  イテっ…!

ドライバーの安全靴の先で、力一杯蹴られたMさん、顔をしかめ、
苦痛の声を漏らしました。

その時です!

  この時間なら、もう配送便の
  積込みバースも空いている!
  そこへ接車させて荷卸し
  させたらどうだ?

積込みバースからとどろき渡るスダさんの声!

そして、スダさんは大きく両手を挙げ、ツルツル頭の強面
ドライバーに合図を送るのでした。

ドライバーは、Mさんをひと睨みして、スダさんに向かって
手を挙げて応え、再び運転席に戻りました。

そして、スダさんが立つ積込みバースに大型トラックをつけて
無事、納入することができたようです。

離れた場所ではありますが、このドライバーの怒鳴り声を
聞きつけ、スダさんは様子を見ていたのでしょう。

こうして悪臭を放ち、周りをイラつかせることばかりして
いるMさんですが、今回は怪傑スダの機転の利いた判断により、
危ういところを助けられたのでした。。
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