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笹やん 二枚舌

午前9時55分・・

バイト先の冷凍食品センターの仕分け作業場にセンター長が
やってきて、

  マンガ喫茶のB店から、発注した
  グリルハンバーグ1ケースが
  未納だと言う連絡が入った!

笹やんに向かって、そう言いました。

  ・・・。

笹やんは無言でセンター長を見返すのみ。。。

  昨夜の仕分け票も、今朝の積込み
  チェック票にもオマエのサインが
  してある。

  ・・・。

  オマエ…、
  ちゃんと検品したンだろうな?

  ・・・。

  ちゃんと昨夜、B店へ納品する商品を
  確認して、それで今朝の積込み時にも、
  ちゃんとチェックしたんだよな?

  ・・・。

  おいッ!
  どーなんだ!?

  ・・・ええ、、

  ええ…って、何や?
  どーなんだっつーの?

  ええ、しましたよ。
  間違いなく検品してますよ。

ようやく澄まし込んだ顔つきで、センター長を見て、そう答える
笹やん。。。

すると、センター長は意地悪そうな笑顔を作って、

  じゃあ何でB店に未納が
  発生するンや!?

何だか勝ち誇ったような口調で笹やんに言いました。

  なぁ?
  何で未納が発生するンやっつーの?

畳みかけて攻めていくセンター長。。。

  仕分け後にも、積込み時にも
  検品したんやろ?
  オマエ、検品したから票に
  サインしたんやろ?
  その時、ちゃんとグリルハンバーグが
  1ケース積まれているのを確かめたんやろ?
  なぁ?
  そんじゃ何で未納になってまうンや?
  おかしいと思わんか?
  なぁ?
  オマエ、自分で検品しておいて、おかしいと
  思わんのか?
  どーなんや?
  おかしいやろ?
  おかしくないンかい?
  なぁ?

メチャクチャくどい畳みかけ方です…。

  ・・・。

笹やんは口を歪め、しばし無言のまま。。。

  オレがオマエの立場だったら…、
  間違いなく検品をしたと言い切れる
  立場だったら、もっと自信持って
  「グリルハンバーグ1ケース、ちゃんと
  積んでます!」って答えるゾ。
  そうやろ?
  なぁ?
  だって、ちゃんと検品したんだもん。
  そうやろ?
  昨日の夜と今朝、2回も検品したんだもん。
  「間違いありません」って、自信持って
  答えられるゾ。
  そうやろ?

このクドクドと攻め込んでいくやり方…

これ…、センター長の新しい戦法なんですかねぇ…?

相手を嫌味ったらしく追い込んでいき、相手をカッとさせて、
冷静さを失わさせ、やがて抵抗する気力も失わさせていくと
言う…

恐ろしい戦法です。。。

しかし、ここは笹やん・・

さすが百戦錬磨の強者・・

  B店へ配達したドライバーは
  Mでしたね?

と、一気に鉾先を変えてきました。

笹やんとしては、自分の検品に落ち度があるのではなく、
配達したドライバーに問題があるのではないかと言いたい
わけです。

  あのMの野郎のことだ。
  どうせ別の店にでも
  納品しちまったンでしょ。。

フッと鼻で笑いながら笹やんが言うと、

  オマエ、他人のせいにする気か?

センター長は、呆れた目で笹やんを見て、そう言いました。

  他人のせいも何も…
  Mの野郎、信用できませんから。。。

  オマエ、他人のコト言えんやろ…。
  オマエが疑う前に、念のため、
  Mに電話して確かめてみたわ。
  そしたら、「間違いなくB店の
  グリルハンバーグはなかった」と
  自信たっぷりに答えとったわ!

  ホントですかねぇ?

  あいつは、以前に比べてミスが減ってきた。
  この頃は事故も起こしとらんしナ。

  そうですかねぇ?

・・と、まぁ、このように、笹やんの“鉾先転換”作戦は失敗に
終わりそうで…

これを見ている僕らは、それぞれ思い思いに、笑いを堪えたり、
声を出して笑ったり…

中には、既に腹を抱えて笑い転げてるヤツも…

  Mのせいにするんじゃなくて、オマエ、
  間違いなく検品したンかい?

  しました!
  しましたよッ!

  自信持って言えるンかい?

  言えます!

  じゃあ何で未納になるンやて!?

  ・・・。

  何で未納のクレームが入るンやて!?

  ・・・。

と、ここでまた振り出しに戻るかと思っていたら・・

  じゃあ、B店の店長だか仕入担当が
  勘違いしてるンですよ!
  納品されてるのに、勘違いして
  納品されていないと思ってンですよ!

笹やんの“鉾先転換”作戦・パート2。。。

  そんなワケあるか!

と、これは早くもセンター長に一蹴されて失敗。。。

すると、そこへタカハシさんがやってきました。

日頃よりセンター長から、

  このセンターで、唯一まともな社員は
  タカハシ一人だけだ!

と言われている人望厚きタカハシさん。

いつもの通り大人しげな表情で、そして、落ち着いた口調で、

  グリルハンバーグの在庫を確かめたら、
  1ケース多いんで、昨日の納品先別出庫数量を
  確認したところ、マンガ喫茶の分が1ケース
  不足していました。

と、センター長に報告しました。。。

  ・・・・・・・・・・・・・・・
  ・・・・・・・・・・・・・・・
  ・・・・・・・・・・。

このタカハシさんの報告に、しばらくの間、作業場は静寂に
包まれました。

誰一人、口を開くことなく、それぞれ目と目を合わせ、
何かを確認し合っているのでした。

その確認とは…

  笹やん、アウトや!

明るく大きな声でそう言ったのは、熟年女子バイトのリーダー格
キノシタさんでした。

本来、マンガ喫茶からのグリルハンバーグの総受注数は11ケース
であったのに、10ケースしか出庫しておらず、それを仕分けて
いたわけですから・・

どこかの店舗が未納になるのは当り前ってコトで。。

このキノシタさんの一声を受け、センター長の怒声が響きました。

  おいッ!笹○!

  ・・・。

  おいッ!

  ・・・。

  おいッつーの!

  は…!?
  ええっ!
  え…、いや、おかしいなぁ…。
  検品した時、ちゃんとあったンだけどなぁ…。

  あるわけねーだろ!
  出庫数自体が不足しとったンやぞ!
  あるわけねーだろ!

  つあぁ~~

と、何とも情けない声をあげる笹やん。。。

ここで僕らは一斉に、崩れ落ちるように笑い転げるのでした。。。

  ったく、何が「検品しました!」や。
  よう言えたモンやな!
  オメーの舌は、2枚どころか3枚も4枚も
  あるナァ!

思いっきりセンター長から罵られる笹やん…

ま…、今さら始まったコトじゃありませんけど、こうした笹やんの
二枚舌が、周囲をこじれさせ、また、笑わせてくれるのでした。。。
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