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笹やん 手打ち蕎麦

フードコートやパーキングエリアなどへ納品される商品の中で
「業務用・冷凍手打ち蕎麦」ってヤツがありまして・・

特に先月あたりからフードコートの店舗数が増え、この商品の
出荷量が爆増していまして・・

それで、フードコートやパーキングエリアを担当しているのが
笹やんですから・・

めっちゃ大雑把に発注して、際限なく入庫させてるンで・・

バイト先の冷凍食品センターの格納庫は「業務用・冷凍手打ち蕎麦」
だらけ…って感じになっちゃってます。

大量在庫のため、格納庫どころか庫内通路の一部に溢れ出していて、
この様子を見たリフトマンのエサキさんが、

  ちょっと笹やん!
  ナニ考えてンの!?
  こんなに手打ち蕎麦だらけにして…
  どーゆーつもり!?

まぁ、当たり前と言えば当たり前ですが、笹やんに噛みつく
わけです。

  どーゆーも、こーゆーもあるかっ!
  いきなり店舗数が増えて、しかも全部、
  オレの担当にしやがって!
  毎日、どれだけ出庫するのか、全然読めん!
  どーゆーつもり…って言いたいのは
  こっちの方や!

と、すかさず笹やんも反撃。。。

  いくらなんでも、これはメチャクチャやわ!
  加減っつーモンを知らんのか!

  知るか!そんなモン!
  文句あるなら、オメーやってみろ!

  またメチャクチャなこと言い出して…。
  常識をはるかに通り越してるよね!

  うるせー!
  どンだけ担当増やす気や!?
  そっちの方が常識をはるかに
  超えとるやろっ!

  そんなこと、オレに言われても
  知らないよ!
  とにかく、これじゃ困るんだよ!

  うるせー!

  うるせー!じゃなくてサァ。。。
  とりあえず、冷凍野菜の前に置いてある
  蕎麦だけでも移動させてよ!
  イトーさんが困ってンだよ!

こうして、笹やんとエサキさんの戦いが繰り広げられている中、
困惑し切った顔で、フォークリフトに乗ったイトーさんが、

  あの~、すいませ~ん。。。
  やっぱ、冷凍野菜が出せないンで…
  ちょっと手打ち蕎麦のパレットを
  どけてもらえませんか…?

目を泳がせつつ、笹やんとエサキさんの両方に向かって
必死に懇願するのでした。。。

ここでエサキさんは、

  オレ、××分の出庫で忙しいから、
  笹やん! 責任持ってイトーさんを
  手伝ってやってよ!

間髪入れぬ口調で言い、そのまま格納庫へ向かって行きました。

  チッ!

エサキさんの後姿を見送りながら舌打ちする笹やん。。。

そして、イトーさんの方を見て、

  ・・ったく、こっちも忙しいンだよ!
  1人で何とかならねーのか?

などとグチる笹やん。

イトーさんの担当する納品先へ、各種の冷凍野菜を出庫して
仕分けないといけないのですが・・

何しろ、それら冷凍野菜の収納ラックの前に、

  「業務用・冷凍手打ち蕎麦」

と印刷されたダンボールが積み上げられたパレットがいくつも
立ちはだかっていて・・

さらに、ムリやり「業務用・冷凍手打ち蕎麦」のパレットを
冷凍野菜の収納ラックに押し込んだりしているので・・

さらに、さらに…

格納庫の一部の通路にまで、2段、3段と「業務用・冷凍手打ち蕎麦」の
パレットを積み上げているから、とてもイトーさんの手に負えない
状態なのです。

  ホントにしゃーねーナァ。。。
  おい、イトー。
  おまえ、そっちの方から蕎麦のパレットを
  1枚ずつ後ろのラックの方へズラせや。
  オレは、手前の方からズラしていくから。

そんなことを言って、笹やんはフォークリフトを操り始めました。

でも、「ホントにしゃーねー」のは笹やんの方なのですが、
本人は、全く自覚していないみたいで。。。

ピピーッ・・ ピッピッ・・
ピーッ・・ ピッピッ・・

リフトの電子音を響かせながら、粛々と「業務用・冷凍手打ち蕎麦」
のパレットが移動されていきます。

やがて、エサキさんも戻ってきて、ブツブツ文句を言いつつ、
手伝い出しました。

ピピーッ・・ ピッピッ・・
ピーッ・・ ピッピッ・・

少しずつ「業務用・冷凍手打ち蕎麦」が積まれているパレットが
冷凍野菜のラック、及び、その付近の通路から除外されていきます。

が…

基本的に「業務用・冷凍手打ち蕎麦」の超過剰な在庫は減ったわけ
ではありませんから、今後、またどこかの商品の入出庫の際には
障害が出ることに。。。

  あぁ~あぁ…
  こんなに蕎麦だらけになっちまって…
  全く世話が焼けるぜ!

と、言いながら、リフトマンのカワサキさんもやってきて、
蕎麦のパレットをフォークリフトで移動させました。

ピピーッ・・ ピッピッ・・
ピーッ・・ ピッピッ・・

各種の冷凍野菜が収納されているラック付近の「業務用・冷凍手打ち蕎麦」
のパレットが、こうして4人掛かりで除去されているわけです。

  おーい!
  もう置き場所がねえぞ!

大声でそう言ったのが笹やんでした。

  置き場所がないほど、バカみたいに
  入庫させたのは誰だ!

これには、エサキさんが大声で対応しました。

ピピーッ・・ ピッピッ・・
ピーッ・・ ピッピッ・・

エサキさんの言葉を無視し、リフトを操作する笹やん・・

そのうち・・

ガコン!!

  危ねー!

エサキさんの叫び声が響きました。

どうやらイトーさんのフォークリフトが、エサキさんのリフトに
接触したようです。

  これも全部、笹やんのせいだ!


  そうだよ!
  笹やんが、こんなに蕎麦を注文して
  入庫させるから…

エサキさん、カワサキさんが、そんな文句を言いつつも・・

ピーッ・・
ピッピッピッ・・

この二人は、息の合った絶妙のリフト操作で、巧みに蕎麦の
パレットを別の場所へと移動させていくのです。

そんな様子を見ていると、この二人のフォークリフトは
合体して、何かロボットにでも変身するのではないかとまで
思えるほどなのです。。。

  エサキー!

  カワサキー!

  行くぞ!

  合体っ!

  リフトロボ!

・・って感じで、マジ見惚れてしまうほど、この二人の呼吸が
合っているのです。

こうして見惚れていたら・・

冷凍野菜の収納ラックの奥の方から・・

ガタガタッ…

ガタタッ!

ゴゴォォォォォ──────────ン!!

大音響が庫内全体に響き渡りました。

僕らが見ていた作業場の床が揺れるほどの大音響。。

  何や!?

  どうした!?

みんな、口々に叫んで、その大きな音の発信源と思われる
ところへ駆け寄っていきました。

そこには…

「業務用・冷凍手打ち蕎麦」のダンボールが崩れ落ち、床上に
散乱しているのでした。

中には、ダンボールが破損し、中身の商品が飛び出している
ものがあります。

どこをどうしたものか…

イトーさんが、「業務用・冷凍手打ち蕎麦」のパレットを
移動させているうちに、そのパレットを倒してしまったらしい
です。。。

  ああ──────!

   あぁぁ~~~~~~!

    うわぁ────!

みんな、口々にそんな声をあげました。

  すわっ!
  こいつぁ、イトー!
  前代未聞の破損やぞ!

と、何故か笑顔で笹やんが言うのでした。。。

それだけ大量に「業務用・冷凍手打ち蕎麦」を破損させたわけですが…

そもそもの原因は笹やんにあるのです…。

  イトー――ッ!

騒ぎを聞きつけたセンター長が、そんな雄叫びをあげながら
庫内へ素っ飛んできました。。。

  オメー、何やっとるンや!
   オメー、何やっとるンや!
    オメー、何やっとるンや!
  オメー、何やっとるンや!

何回も同じことを叫んで、イトーさんの目を泳がせてしまって
いるのでした。。。


そんなコトがあって、午後1時20分・・

冷凍食品センターの休憩室で・・

笹やんが、破損した「業務用・冷凍手打ち蕎麦」を茹で上げて
もりそばを作って、みんなに食べさせていました。。。

その前に、笹やんは、僕とバイト仲間のヤノさんに、

  近くのスーパーへ行って「めんつゆ」を
  2、3本と、ねぎ一束に練りわさびを
  買ってきてくれ。。

と言い、千円札1枚を渡してくれました。

なので・・

僕らはスーパーで、1リットル入り「めんつゆ」3本などを
買ってきたのでした。

戻ってみると、笹やんが既に、大量に蕎麦を茹で上げ、ざるに
盛っていたのでした。

まだまだ大きな鍋にはお湯が沸いていて、そこへ笹やんが
破損した蕎麦を放り込んでいるのでした。

この一連の出来事は…

イトーの「手打ち蕎麦事件」と名付けられるとともに…

笹やんの「蕎麦振舞い」とも言われることに…

  笹○っ!
  オメー、何やっとるンや!
    オメー、何やっとるンや!

休憩室へ飛び込んできたセンター長は、先程と同じような
ことを繰り返し叫ぶのでした。

が…

  やあ、センター長もどうです?
  早いモン勝ちですよ。

と、笹やんに、もりそばを勧められると・・

  ズルッ…
  オメーは勝手に何やっとるンや。。
  ズルッ…

などと文句を言いつつ、素直に蕎麦を啜っているのでした。。。

  ズルッ…
  おまえ、ちゃんと破損した数量を…
  ズルッ…
  ちゃんと…
  ズルッ…
  把握しとけよ。
  ズルッ…
  ちゃんと台帳に…
  ズルッ…
  記入しとけよ。

実に手際よく、笹やんは蕎麦を茹で上げて、休憩室にやってきた
人たちに振る舞っていくのでした。。。

僕も食べましたが、「業務用・冷凍手打ち蕎麦」は出庫量が
多いだけに人気があるのか、とても旨かったです☆
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