________________________________________________________________________

笹やん 春浅し

朝、バイト先の冷凍食品センターへ行ってみると…

何となく元気なさそうな笹やんがいました。。。

  どうしたんスか?
  何か、あったんスか?

思わず笹やんに、そう尋ねると…

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・
  ふん…、
  この先のコトについて、な…

しばし沈黙した後、意味深っぽく答えました。

先のコト…?

行き当たりばったりっつーか…

風の吹くまま、気の向くままっつーか…

計画力が思いっきり欠如している…

そんな笹やんが…

先のコトについて…?

って何ソレ!?

その場その時、そのままの気分次第で生きてるような
笹やんが、この先のコトって…

どんな笹やんが言ってるんや~~!?

僕は頭の中が、何だかグルグル渦巻いているような気分で
ボケ~っと笹やんを見ていると、

  はぁ~

そんなため息を吐き、何やらトボトボと弱々しげに歩いて
いきました。

  ねえ!
  笹やん、どうしたの?

バイト仲間のヤノさんに尋ねてみても、何も知らないようで、
昨日あたりから様子がおかしくなったとのこと。。。

しかし、笹やんが気落ちしている原因は、その後すぐに
わかりました!

笹やんチームの中ではリーダー的存在の熟年女子バイト・
キノシタさんが午前の仕分け作業中に話してくれたのです。

  シマダさんのお父さん、ちょっと具合が
  良くないみたいで、それでシマダさん、
  今月いっぱいでバイト辞めて、実家へ
  帰るんだって…

シマダさんの実家は、笹やんと同じく福岡県。

どうやらお父さんの看病のために帰郷を決めたそうです。

ってワケで…

これまで何度か、笹やんはシマダさんをウチへ連れ込み、
二人で夕食などを共にしていた仲でしたが…

ま…、笹やんとしては何とかしてシマダさんをモノにして
やろうという魂胆があっただろうと思いますが…

こうして福岡へ帰っちゃうんじゃナァ~…

せっかく二人だけでホットプレート出して焼肉やったり、
熱々のお鍋をつついたりしたのにナァ~…

これまで二人で過ごした時間、ささやかながら楽しかった
時間が…

  はぁ~

そんなため息の一つも吐きたくなるわナァ~。。。

  だけど、これでヨカッタと思うよ、
  アタシは…

どこかしんみりとした様子でキノシタさんが言いました。

  そりゃあシマダさんは独身かも
  知れないけど、笹やんとじゃ可哀そうだよ。
  シマダさん自身、結婚に対してどう思っているか
  知らないけどさぁ…
  何も笹やんじゃなくてもイイでしょ?
  シマダさん、まだ43か44歳でしょ?
  笹やんと20歳も差があるんだよ!
  笹やんなんかと手を打つことないんだよ。
  福岡へ帰って、イイ男、見つけりゃいいんだよ。

キノシタさんとしては、いつもニコニコしている朗らかで
元気なシマダさんが、笹やんの毒牙(?)に侵されるのが
可哀そうと言うわけです。

が…、

これを聞いていた若手バイト・スダさんが反論しました。

  そんなコト言っちゃ、笹やんが
  可哀そうッスよ!
  笹やん、今回は真面目にシマダさんと
  つき合ってるみたいだし!
  オレ、笹やんの味方ッス!

そもそも、このスダさんが、笹やんとシマダさんの交際の
第一発見者でもあり、彼的には笹やんとシマダさんが
上手くいけばイイと純粋に思っているみたいです。

  スダ!
  おめぇ、甘いんだよ!

女性とは思えないような言い方で、スダさんを一蹴する
キノシタさん。

  笹やんはなぁ…
  オンナなしでは生きていけない
  ヤツなんだよ。
  だから、いっつも真面目だよ!
  おお!
  オンナに対してはクソ真面目に
  つき合って攻略しようとしてるんだよ!

周囲から笑い声があがりました。

  何か、笹やんのコト…
  魔物っつーかモンスターみたいに
  言ってません?

そう言って、こわばった笑い顔を見せるスダさん。。。

  おおヨ!
  笹やんはなぁ、オンナの肉を食らう
  モンスターよ!

キノシタさんが芝居っ気を見せ、両手を上げて襲い掛かる
振りをしながら言いました。

  そうかなぁ…?
  オレ…、やっぱ笹やんには
  頑張ってほしいッス


  何を頑張ってほしいんや!?
  なぁ、スダ…
  腰の激しい振り方か?
  20分でも30分でも振り続けられる
  ように頑張ってほしいんか!?

スダさんに対し、今度は卑猥に腰を振って見せるキノシタさん。。。

人生の海千山千とも言うべき、このキノシタさんの前に、
若くて活きの良いスダさんもタジタジ気味。。。

周囲からは、ますます笑いが起こりました。

そんな中、モンスターが…、笹やんが姿を見せました。

いつもより大人しげなモンスター・笹やんです。

  おまえ、何やっとるんや?

腰を振るキノシタさんに、笹やんが声を掛けますと、

  スダに腰の動かし方でも教えたろうと
  思ったんやけど、ちょうどエエわ!
  笹やん!
  男は男の腰の使い方があるやろ?
  スダに教えてやってくれ!

ヘンな方向に話を持っていきました。

  は?
  まだ10時やぞ。
  朝からナニ言っとるんや?
  キノシタ…、
  おまえ、欲求不満か?

笹やんに言われ、キノシタさんは大笑いしながら、

  笹やんから欲求不満って聞かれるとは
  思わんかったわ!
  そりゃ、ここンところご無沙汰で…って
  何を言わすんや!
  笹やんの方はどうや?

こんな返しをするキノシタさんも、立派な笹やん喜劇団の
役者です。。。

  オレか…

笹やんは、そう言って、ちょっと遠くを見つめるような
目で黙り込みました。

そこへスダさんが口を挟みます。

  笹やん!
  シマダさん、福岡へ帰っちゃうんでしょ?
  どうするんスか?

どうするも何も…

笹やん、スダさんを見つめ、困惑した表情。。。

そうか…

その時、僕らは、笹やんがシマダさんに対して、決して
遊び半分につき合っていたわけじゃないという思いを
持っていたことが何となくわかったような気がしました。

笹やんは、モンスターじゃなくて純粋にシマダさんとの
時間を楽しんでいたのかも知れない!

もっとそんな時間を持ちたかっただろうけど、それが
叶わなくなってしまった今…

笹やんとしては、それを小さいけれど深い思い出として
刻んでおきたいと思っているんじゃないでしょうか。

だから、これ以上、シマダさんを追い駆けるようなマネは
しないし、縛りつけることもしない…

このまま流れに任せ、思い出にしてしまおう…

何となく、そう思ったのです。

が…

  しゃーないやろ…

そう言って、笹やんは周囲を見回し、一点に視線を止めました。

僕らは、その視線の先を見つめました。

そこには…

  笹やん、やっぱ、おめぇ
  サイテーや!

キノシタさんが、本気とも冗談ともわからないような言い方で
笹やんを罵りました。

笹やんの視線の先には、マエダさんがいたのです。

一時、笹やんは下心まる出しで、マエダさんに迫っていた
のですが、シマダさんとの一件で沈静化していました。

しかし、ここに来て、再燃したようで…。

それにしても、マエダさんは独身ではありませんから、
シマダさん以上に攻略しづらいんじゃ…

この時期、暦の上では春ですが、まだ寒さが厳しいため
“春浅し”と言いますが…

こんな交際が厳しい相手に目をつける笹やんは“思慮浅し”と
言うべきかも知れません…。
にほんブログ村 オヤジ日記ブログへ
にほんブログ村




nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

トラックバックの受付は締め切りました