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笹やん 氷攻め

実際のところ、数えたことがないので正確にはわかりませんが、
バイト先の冷凍食品センターには、約1万品目の商品が常時、
在庫されています。

それぞれの商品を格納する場所も決められており、ここでは
ロケーション番号と呼ばれる6桁の数字とアルファベットから
なる格納スペースが設けられるわけです。

が…

商品在庫は日々、変動し、さらに新規取扱品目があれば、
廃版品目もあり…

期間限定品目があるかと思えば、得意先限定の品目もあって、
格納スペースを調整するのは、非常に責任ある作業なわけで、
これを担当するのが、主に専任リフトマンと呼ばれている
入出庫専門のリフトマンたちです。

みんなは省略して“専任”と言っています。

確か専任は、現在では正社員2名、バイト4名でシフトを
組んでいるはずですが、とても追いつかない状況らしいです。

そのため、一部の社員も入出庫作業を行いますが、これが
笹やんの手によりますと…

  おいっ!
  笹○!

午前11時を過ぎた頃、センター長が作業場に来て、笹やんを
大きな声で呼びつけました。

  おめー、鶏モモ1Kgの格納場所
  間違えとるやろ!
  C-7113に納めなアカンのに、何で
  Zロケーションの仮置きスペースに
  入れるンや?
  それも4パレットも…
  アホか、おめーは…。

そう言われて、笹やんは「ハッ…?」って感じのトボけた
目つきでセンター長を見ると、

  アレ…?
  だって、タカハシが仮置きの
  スペースに入れろって言ったんスよ。

と答えました。

  ちゃうがな!
  タカハシが言ったのは、鶏モモのバラやろ!
  バラの方は今朝の入庫分が、そっくりそのまま
  夜便で出荷されるんで、仮置きスペースに
  入れとけよって、昨日、ミーティングで
  オレが言ったにもかかわらず!
  っつーか、鶏モモ1Kgは前々からレギュラー品だって
  コトぐらい、おめー、認識しとるやろ?
  なぁ?
  ロケーションだって前々から変更されとらんやろ!?
  なぁ?
  今さら何で…
  ったく、おめーは…

イラつきを隠すことなく、センター長は笹やんを叱りつけます。

  え゛?
  そんな…、だってタカハシが…


  おめー、何がタカハシや…
  タカハシが言っとるのは、
  バラの方やって言っとるやろ!


  おかしいナァ…
  あいつ、確かに1Kgを仮置きにって
  言ったんだけどナァ…


  おめー、いつまで他人のせいに
  しとるンや?
  自分の聞き間違いか、勘違いか
  知らんけど、さっさと非を認めろ!


  いや、でも、タカハシのヤツ、
  間違いなく1Kgを仮置きって…


  他人のせいにするなっつーの!
  おめーはそうやって、いっつも!

センター長と笹やんが言い合っている、まさにその時、
タカハシさんが通り掛かりました。

タカハシさんは、ここのセンターでは一番若い社員で、
とても大人しくて真面目な性格の人です。

  このセンターで唯一、まともな社員

って言うバイトもいます…。

  あ!
  タカハシぃ!
  おまえ、オレに鶏モモの1Kgを
  Zロケーションに仮置きしろって
  言ったよな?

すかさずタカハシさんに声を掛ける笹やん。

その声に立ち止まり、少し首をかしげて笹やんとセンター長を
交互に見ながら、タカハシさんが答えます。

  は?
  Zロケーションに仮置きするのは
  バラの方だけで、1Kgは通常の
  Cロケーションに入れてくれれば
  イイですって言いましたけど…

その言葉を受けて、センター長が笹やんに言います。

  ほれ見ろ!
  おめーの聞き違いやろ!

すると、笹やんは、タカハシさんに向かって
  
  え゛~~っ!
  いやいや、そんなコト
  聞いとらんゾ!

これを聞いて、困った顔のタカハシさん。。。

  え~~っ!
  そう言われても…


  そうも何も…
  タカハシ!
  おまえ、オレにZロケーションに…って
  言ったはずだ!


  いやぁ、言ってないですけど…


  いや、言った!


  いやぁ~…

すっかり困り果てた様子のタカハシさん。

ま…、この場合、センター長のみならず、ここに居合わせている
バイト全員、タカハシさんがそんなコト言ってないと信じて
いるわけで…

笹やんの往生際の悪さに呆れつつ、タカハシさんが可哀そうで、
それはセンター長も同じ思いだったようで…

笹やんの着ている防寒服の後ろ襟を、センター長が引っ張ったかと
思うと、何やら、そこへ放り込んだようで、

  あ…?

笹やんが軽く声を上げたかと思った次の瞬間…

  あ゛ぁぁぁ────────っ!!

悲鳴に近いような叫び声に変わる笹やん。。。

  あ゛ぁぁ─────っ!!
  あ゛ぁぁぁ────────っ!!

両肩をすぼめるようにして、その場でクルクルと回転してみせる
笹やん。。。

再びセンター長が、笹やんの後ろ襟を引っ張り、何かを
放り込んだのでした。

それは、ロックアイスなのでした。

そう言えば、センター長は、ビニール袋に入っている
ロックアイスを一袋持っていました。

たぶん、破袋して売り物にならなくなったのでしょう。
そのロックアイスを、笹やんの背中へ入れたわけです。。。

  あ゛ぁぁ─────っ!!
  あ゛ぁぁぁ────────っ!!

事情を察し、少し余裕が出てきたのか、笹やんは叫びながらも
苦笑い…

センター長と僕らバイトは大爆笑…

タカハシさんは困り顔のまま、少し笑っていました。

  あ゛ぁぁ─────っ!!
  あ゛ぁぁぁ────────っ!!

氷攻めにされた笹やんの叫び声は、しばらく続きました。。。
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