笹やん 安心安全
今日、バイト先の冷凍食品センターのハンドリフト置き場に、
A3サイズの貼紙がありました。
危険！
ハンドリフトはスケートボードでは
ありません。
危険ですから、ハンドリフトに乗って
庫内を移動しないでください。
と書かれていました。
パレットに積載された商品を運ぶために、ハンドリフトを使う場合が
あり、僕も毎回使っています。
そのハンドリフトを作業現場まで運ぶ際、それに乗って、まさに
スケートボードのように、スイスイと移動するバイトもいます。
特に若いバイトに多く見られます。
この貼紙を見て僕は、
何かあったんスか？
と、笹やんに尋ねますと、この前の火曜日、そして木曜日に、
ハンドリフトに乗って移動していたバイトがケガをしたそうで…
火曜日の事故は、脇見をしていたのか、バイトが運んでいた
カゴ車に激突し、ハンドリフトに乗っていたバイトは前歯を
折って、口から出血が酷かったそうです。
木曜日には、別の若いバイトが単独事故で、勢い余ってバランスを
崩して転倒し、頭を床に強く打ちつけたらしく、救急車まで呼ぶ
大騒ぎになったそうです。
こうして立て続けにハンドリフト事故が起こり、しかも、
ケガをした二人とも、笹やんの管轄の若手バイトで、笹やんは
センター長から散々叱られたとか。。。
以前から、ハンドリフトに乗って、転んだり、ぶつかったりする
ことは何度かあったようですが、負傷者が続いたため、
とりあえず、貼紙でもして
注意を促しておかんと…な
笹やんは、そう言って、腕を組みながら神妙な顔つき…
このハンドリフトに関する貼紙は他にもあり、
「ハンドリフト負傷事故現場」
とか、
「ハンドリフト走行厳禁！取り締まり中」
とか、
「ハンドに乗るな！乗るなら来るな！」
などと書かれた貼紙が、庫内に数枚、貼られていました。
ほら、道路に「交通事故現場」とか、「飲酒運転撲滅」とか、
「この先カーブ 事故多し」など、警察による看板が立てられて
いるのを見ること、ありますよね。
あんな感じで、庫内の壁面に何ヵ所か貼られているんです。
これらは全て笹やんが、一昨日から昨日に掛けて、一所懸命に
作成し、ここぞと思った箇所に貼り付けたわけです。
事故のない安心、安全な
センターであるよう、
オレが慣れないパソコン使って
作ったんだ。
交通課の警察官みたいなセリフを口にして、笹やんは自ら作成した
貼紙を満足気に見つめています。
で…
昼過ぎ、1時半頃だったと思います。
おいっ！
オマエ、なに考えとるんだ！
センター長が血相変えて、笹やんに怒鳴りに来ました。。。
何のことかわからないと言った表情で笹やんは、ポカンとしながら
センター長を見ます。
オマエ、あちこちに変な貼紙
貼りやがって！
何が「ハンドに乗るな！
乗るなら来るな！」や！
なぁ？
ふざけんなっ！
真っ赤な顔をして怒鳴るセンター長に対して、笹やんは平静を装い、
ああ、アレのことですか。
だってセンター長…、
言ったでしょ。
ハンドリフトに乗って
移動させないよう、
バイトたちに注意しろって
と答えました。
言ったけどぉ…
オレが言いたかったのは、
直接、バイトたちに…
特にハンドリフトに乗りそうな
若手に、オマエが直接言って、
注意しろってコトや！
そんな…
一人一人に言えって
言われても、こっちも
忙しいし…
一人一人って、オマエ…
10人も20人もおらんやろ！
オレが見たところ、ハンドに
乗りそうなのは、5、6人やろ！
そいつらに顔合わせて注意すれば
済むことやろ！
口で言っただけじゃ、後から
聞いてないとか言われると
いけないんで、それで
貼紙にしたんスよ
オレが言いたいのは、
ああいう貼紙を貼ること自体、
恥ずかしいコトだと思えって
コトだ！
なぁ？
そう思わんか？
別に思わんです。
だって注意を促すためですし…
この前、救急車が来た時にも
言ったけど、そもそもハンドリフトを
スケートボード代わりにして遊ぶことが
大間違いなんや！
道具は正しく使えって言ったろ！？
このセンターでは、そんなふざけたコトを
させているのかと思われないように
徹底して注意しろと言いたいンや、オレは。
なぁ？
にも拘わらず、あんな貼紙…
なぁ？
アレを第三者が見たら、どう思われるかって
コトを考えろ！
すると笹やん、澄ました顔で、
安全管理が行き届いている
センターだと思われるんじゃ
ないですか？
と答えました。
アホッ！
何が安全管理やっ!!
そもそもハンドに乗ることが
間違いやって言っとるにも拘わらず…、
あんな貼紙見られたら、
『あっ！ここはハンドに乗って
遊ぶヤツがおるのか！』って
思われてまうやろ！
安全管理以前の問題や！
なぁ？
ここは管理レベルが低いと笑われて
まうやろっ！
さらにセンター長は、ツバを飛ばす勢いで、激しく笹やんを
怒鳴ります。
今度の水曜日、本社から専務と本部長が、
庫内視察に来るんや！
その時、あんな貼紙見られてみろ！
っつーか、オマエ、実は先日、
立て続けに負傷事故がありました…なんて
知られてみろ！
怒られるのはオレなんやゾ！
なぁ？
おまけに救急車まで来るわ…
なぁ？
そんなコト知れてみろ。
始末書を書かされるだけでは済まんゾ！
と、ここで僕は、思わずニタリと笑いを浮かべてしまいました。
要するに、今、センター長は保身の体勢に入っているわけで…。
それを感じたのは僕だけじゃないようで、他のバイトも、もちろん
笹やんも、同じ思いだったようです。
周りの空気が、急に冷たくなってきたのでした。。。
センター長も、それを感じたか…
オレは別に、本社から怒られるのを
恐れとるわけやないゾ…。
なぁ？
ケガしたバイト二人には悪いけど、
ハンドに乗るなんてコト自体、
レベル低過ぎってコトや！
そんなことをわざわざ外部に知らせる
必要はないやろ！
恥かしいと思わんか？
声の調子と、言ってることが何となく弱々しくなってます。。。
ここで笹やん、ちょっと意地悪そうな目線でセンター長を見て、
恥かしいことだと思いますけど、
起きてしまったものは仕方が
ないじゃんねぇ。
それよりも隠さずに、事実は事実として
明らかにして、これから二度と事故の
起こらないように、しっかりと注意を
促すことが大切じゃないですか？
と言えば、
オマエ、何もっともらしいコト
言っとるんや？
そんなことはオレだって
わかっとるンや！
注意を促すことは大切なんだけど、
それはそれで大切なんだけどぉ…
要らんことで本社に怒られるマネを
することはない…ってコトを
言いたいんや、オレは！
と、ここで開き直ったのか、ありのままの気持ちをさらけ出す
センター長。
さらに、
オマエ、怒られるのはオレだけじゃ
ないんやゾ。
バイトの指導に関して、オマエの責任も
追及されるんやゾ。
なぁ？
オマエだって始末書を書かされるんやゾ！
わかっとるんか！？
この一言で、笹やん…
え！？
表情を急変させ、絶句しました。。。
とにかく、すぐに貼紙をはがせ！
･･･････
･･･････。
こうして、一所懸命、笹やんが安心安全のためにと作成した
貼紙ですが、保身のため、わずか1日で虚しくはがされる
ことになりました。。。
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A3サイズの貼紙がありました。
危険！
ハンドリフトはスケートボードでは
ありません。
危険ですから、ハンドリフトに乗って
庫内を移動しないでください。
と書かれていました。
パレットに積載された商品を運ぶために、ハンドリフトを使う場合が
あり、僕も毎回使っています。
そのハンドリフトを作業現場まで運ぶ際、それに乗って、まさに
スケートボードのように、スイスイと移動するバイトもいます。
特に若いバイトに多く見られます。
この貼紙を見て僕は、
何かあったんスか？
と、笹やんに尋ねますと、この前の火曜日、そして木曜日に、
ハンドリフトに乗って移動していたバイトがケガをしたそうで…
火曜日の事故は、脇見をしていたのか、バイトが運んでいた
カゴ車に激突し、ハンドリフトに乗っていたバイトは前歯を
折って、口から出血が酷かったそうです。
木曜日には、別の若いバイトが単独事故で、勢い余ってバランスを
崩して転倒し、頭を床に強く打ちつけたらしく、救急車まで呼ぶ
大騒ぎになったそうです。
こうして立て続けにハンドリフト事故が起こり、しかも、
ケガをした二人とも、笹やんの管轄の若手バイトで、笹やんは
センター長から散々叱られたとか。。。
以前から、ハンドリフトに乗って、転んだり、ぶつかったりする
ことは何度かあったようですが、負傷者が続いたため、
とりあえず、貼紙でもして
注意を促しておかんと…な
笹やんは、そう言って、腕を組みながら神妙な顔つき…
このハンドリフトに関する貼紙は他にもあり、
「ハンドリフト負傷事故現場」
とか、
「ハンドリフト走行厳禁！取り締まり中」
とか、
「ハンドに乗るな！乗るなら来るな！」
などと書かれた貼紙が、庫内に数枚、貼られていました。
ほら、道路に「交通事故現場」とか、「飲酒運転撲滅」とか、
「この先カーブ 事故多し」など、警察による看板が立てられて
いるのを見ること、ありますよね。
あんな感じで、庫内の壁面に何ヵ所か貼られているんです。
これらは全て笹やんが、一昨日から昨日に掛けて、一所懸命に
作成し、ここぞと思った箇所に貼り付けたわけです。
事故のない安心、安全な
センターであるよう、
オレが慣れないパソコン使って
作ったんだ。
交通課の警察官みたいなセリフを口にして、笹やんは自ら作成した
貼紙を満足気に見つめています。
で…
昼過ぎ、1時半頃だったと思います。
おいっ！
オマエ、なに考えとるんだ！
センター長が血相変えて、笹やんに怒鳴りに来ました。。。
何のことかわからないと言った表情で笹やんは、ポカンとしながら
センター長を見ます。
オマエ、あちこちに変な貼紙
貼りやがって！
何が「ハンドに乗るな！
乗るなら来るな！」や！
なぁ？
ふざけんなっ！
真っ赤な顔をして怒鳴るセンター長に対して、笹やんは平静を装い、
ああ、アレのことですか。
だってセンター長…、
言ったでしょ。
ハンドリフトに乗って
移動させないよう、
バイトたちに注意しろって
と答えました。
言ったけどぉ…
オレが言いたかったのは、
直接、バイトたちに…
特にハンドリフトに乗りそうな
若手に、オマエが直接言って、
注意しろってコトや！
そんな…
一人一人に言えって
言われても、こっちも
忙しいし…
一人一人って、オマエ…
10人も20人もおらんやろ！
オレが見たところ、ハンドに
乗りそうなのは、5、6人やろ！
そいつらに顔合わせて注意すれば
済むことやろ！
口で言っただけじゃ、後から
聞いてないとか言われると
いけないんで、それで
貼紙にしたんスよ
オレが言いたいのは、
ああいう貼紙を貼ること自体、
恥ずかしいコトだと思えって
コトだ！
なぁ？
そう思わんか？
別に思わんです。
だって注意を促すためですし…
この前、救急車が来た時にも
言ったけど、そもそもハンドリフトを
スケートボード代わりにして遊ぶことが
大間違いなんや！
道具は正しく使えって言ったろ！？
このセンターでは、そんなふざけたコトを
させているのかと思われないように
徹底して注意しろと言いたいンや、オレは。
なぁ？
にも拘わらず、あんな貼紙…
なぁ？
アレを第三者が見たら、どう思われるかって
コトを考えろ！
すると笹やん、澄ました顔で、
安全管理が行き届いている
センターだと思われるんじゃ
ないですか？
と答えました。
アホッ！
何が安全管理やっ!!
そもそもハンドに乗ることが
間違いやって言っとるにも拘わらず…、
あんな貼紙見られたら、
『あっ！ここはハンドに乗って
遊ぶヤツがおるのか！』って
思われてまうやろ！
安全管理以前の問題や！
なぁ？
ここは管理レベルが低いと笑われて
まうやろっ！
さらにセンター長は、ツバを飛ばす勢いで、激しく笹やんを
怒鳴ります。
今度の水曜日、本社から専務と本部長が、
庫内視察に来るんや！
その時、あんな貼紙見られてみろ！
っつーか、オマエ、実は先日、
立て続けに負傷事故がありました…なんて
知られてみろ！
怒られるのはオレなんやゾ！
なぁ？
おまけに救急車まで来るわ…
なぁ？
そんなコト知れてみろ。
始末書を書かされるだけでは済まんゾ！
と、ここで僕は、思わずニタリと笑いを浮かべてしまいました。
要するに、今、センター長は保身の体勢に入っているわけで…。
それを感じたのは僕だけじゃないようで、他のバイトも、もちろん
笹やんも、同じ思いだったようです。
周りの空気が、急に冷たくなってきたのでした。。。
センター長も、それを感じたか…
オレは別に、本社から怒られるのを
恐れとるわけやないゾ…。
なぁ？
ケガしたバイト二人には悪いけど、
ハンドに乗るなんてコト自体、
レベル低過ぎってコトや！
そんなことをわざわざ外部に知らせる
必要はないやろ！
恥かしいと思わんか？
声の調子と、言ってることが何となく弱々しくなってます。。。
ここで笹やん、ちょっと意地悪そうな目線でセンター長を見て、
恥かしいことだと思いますけど、
起きてしまったものは仕方が
ないじゃんねぇ。
それよりも隠さずに、事実は事実として
明らかにして、これから二度と事故の
起こらないように、しっかりと注意を
促すことが大切じゃないですか？
と言えば、
オマエ、何もっともらしいコト
言っとるんや？
そんなことはオレだって
わかっとるンや！
注意を促すことは大切なんだけど、
それはそれで大切なんだけどぉ…
要らんことで本社に怒られるマネを
することはない…ってコトを
言いたいんや、オレは！
と、ここで開き直ったのか、ありのままの気持ちをさらけ出す
センター長。
さらに、
オマエ、怒られるのはオレだけじゃ
ないんやゾ。
バイトの指導に関して、オマエの責任も
追及されるんやゾ。
なぁ？
オマエだって始末書を書かされるんやゾ！
わかっとるんか！？
この一言で、笹やん…
え！？
表情を急変させ、絶句しました。。。
とにかく、すぐに貼紙をはがせ！
･･･････
･･･････。
こうして、一所懸命、笹やんが安心安全のためにと作成した
貼紙ですが、保身のため、わずか1日で虚しくはがされる
ことになりました。。。
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