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笹やん 新喜劇

午前10時頃、バイト先の冷凍食品センターで、僕は数種類の商品を
出庫し、パレットに積み上げていました。

すると、少し離れた場所で…

  わわ…わ
      わ
       わっ!

   うわっ!  わっ!
  ギャッ!!

     うっそ───っ!?

   ちょっ…!  やだっ!

  わっ! なっ!?

  マジか───っ!?
            わわっ!

     やっ!?

  げッ!
                !
  た           っ!
   た         な
    た       な
     た     な
      た   な
       た
        た
         た
          っ…

こんな感じで、複数の男女の奇声とか、驚嘆、悲鳴…、
そんな声が入り混じって聞こえてきました。

  お…?
  何や、何や?

バイト仲間のヤノさんが、そう言いながら、入り混じった声の方へ
向って走っていきました。

思わず僕も後をついて行きました。。。


  ひょうッ!

と、ヘンな奇声をあげて、50歳ぐらいのバイトのおじさんが、
手にぶら下げた何かを、近くにいた30代の女性に向かって
投げますと、

  ギャ───ッ!!!
  やめてぇッ!

腹の底から絞り込んだような悲鳴をあげて飛び退きました。

おじさんが投げたモノが床に落ち、それを見てみると…、

どうやらそれは、ネズミの死骸のようです。。。

それが結構大きくて…、うん、そうですねぇ…、
ざっと、20センチ…、それ以上かな?
ティッシュペーパーの箱ぐらいの大きさはあります。

そんな大きさのネズミの死骸…、

濃いめの茶色と灰色を混ぜ合わせたような毛の色で、尻尾が
細長くて、ハッキリとネズミとわかる顔…、

目は閉じられていました。口も閉じてました。。。

  オイッ!
  信じられんゾ!!
  何でこんな所に…!
  ナンでや?
  ナンで…、ナンでネズミなんや!?

そう叫びながら、若いバイト男子が、床上のネズミの死骸を
しげしげと見つめました。

そして、彼が細長い尻尾をつまみ上げ、ぶ~~~ん…と
放り投げると…、

  それっ!  わわっ!!

    オイッ…  まあ──ッ!!

   たたっ…
       た
        た         ホゥッ!!
         た   のわっ!
          た           め…
           た…        や
                    や
              ちょっ… や


再び、いろんな奇声、悲鳴が混ざり合って辺りに
響き渡りました。。。

  よくあんなモン
  さわれるな…

僕の横で、つぶやくようにヤノさんが言いました。

それにしても、若いバイト男子が言う通り、何でこんな所に
ネズミが…?

  あはは… あははは…
  あはははは…

僕の後ろから、そんな笑い声が聞こえてきました。

いつの間に来たのか、笹やんが、この様子を見て笑って
いるのでした。


  やだー! もうッ!!

まだネズミの死骸を放り投げて、女子バイトたちをからかって
いて、その度に彼女たちが悲鳴をあげ、飛び退いています。

  おい!ワタナベ!
  もうやめとけ!

笹やんが、若い男子バイトの名を呼んで注意しましたが、
バイトはヘラヘラ笑いながら、調子の乗って、まだネズミの
尻尾を振り回しています。

  お…

勢い余ったのか、スルッとネズミの死骸が予期せぬ方向に
飛んでいき、40代の男子バイトの顔に直撃しました。。。

  もがっ!!!

40代は声にならないような叫びをあげ、その場にうずくまり、
ゴシゴシと顔を上着の袖でこすっていました。

周囲は爆笑の渦です。。。

  おい、もうやめとけ!
  仕事しろ、仕事!

笹やんも笑いで顔を崩しつつ、とりあえず、この騒ぎを
抑えようと注意しました。

  しかし、でけぇネズミだな?
  って言うか、これネズミ?

笹やんは床に落ちている死骸を見て言いました。


  ネズミだと思いますよ。


  こんなデカいの、珍しいな。


  ボクも初めて見ました。


  って言うか…、
  誰だ?
  ネズミの死骸なんか
  持ち込んできたヤツは!


  持ち込んできたっつーか、
  最初見つけたのはオレですけど…


  どこで見つけたンや?


  北側通路…、収納庫の手前の
  扉近くに落ちてたんで…


  で…?
  それをわざわざ持って来て、
  遊んどったンか?


  せっかくだから、みんなに
  見せたくて…


  おっきなネズミやもんなぁ…
  って、捨てろ!
  そんなモン、こんな所に
  持って来て遊ぶな!


  とか言って、笹やんさんも
  笑ってたじゃん!

笹やんとカワカミと言うバイト男子のそんな会話を
断ち切るように、30代の女性バイトが言いました。

  って言うかさぁ、どうして
  こんな所にネズミが
  死んでたか…ってコト、
  問題じゃない?

その通りだと思いました。

ここは食品のセンターです。

そんな所に、ネズミの死骸が落ちてた…ってコトは
重大な問題になるんじゃないでしょうか?

  このネズミは凍死したわけか?

笹やんがカワカミ君を見て言いますと、

  凍死…じゃないでしょ。
  最初から死んでたんじゃないの?
  こんなマイナス20℃の所で
  ネズミは生活しないんじゃないの?

カワカミ君が答えましたが、笹やんは首を振りながら、
言い返しました。

  いや、天井裏だったら常温だから
  そこに巣食っているかも知れん。


  それじゃ、天井裏で生活してた
  ネズミが、うっかり冷凍庫に
  入っちゃって凍死したと…?
  あり得ねーよ!
  そんな間抜けなネズミ
  いねぇーんじゃない?


  いや、ここには豊富にエサが
  あるからな。


  え?
  それじゃ、ネズミが庫内に入って
  冷凍ハンバーグとかチキンナゲットとか
  食べるってーの?
  ないない!そんな話…
  寒過ぎて入って来ないって!


  それじゃオマエ、どう思うんだ?
  このネズミの死骸…


  たぶん、何かの商品のダンボール箱の
  中に入ってたんだよ。
  中国とかさぁ…、あっちから
  輸入されてくる商品、あるでしょ?
  その中に入ってたんだよ。


  何でダンボールの中に
  ネズミが入るんだ?


  ありそうな話じゃん。
  中国とかなら…
  それこそエサを求めて
  うっかり箱に中に
  入り込んじゃって、
  そのまま日本まで運ばれて来るうちに
  死んじゃったんだよ。
  それとも故意にネズミの死骸を
  ダンボール箱の中に紛れ込ませたとか…
  これも中国ならありそうな話じゃん。


  オマエ…、
  中国人が聞いたら怒るゾ…


  でも、ありそうでしょ?
  ここで巣食ってると言う説より
  有力じゃない?


  それじゃ、このネズミ
  中国産って言うことか?


  だと思うよ。
  日本にこんな大きなネズミ
  いねーよ。
  っつーか、中国って決めつけてるの
  笹やんさんじゃない!?


  あ…
  あはは… あははは…


  中国の人、聞いたら怒りますヨ!
  ネズミだけに、
  「なんチューこと言うんや!」
  とか言って…


  あははは… あはははは…
  ネズミだけに、チュー意します…ってか!
  あはははは…

僕らは、笹やんとカワカミ君のやり取りを、とても
なごやかな気分で聞いていました。

途中で吹き出す人も続出し、まるでお笑いを見ている
雰囲気でした。

先ほどの30代女子バイトも悪ノリして、

  もうエエわっ!

とか言って、笹やんの肩をパン!と叩きます。。。

これぞ笹やん新喜劇!

で…、

結局、ネズミの死骸は謎のまま。。。

新聞紙にくるまれて、ゴミ箱に捨てられました。。。
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