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笹やん 皮算用

今朝、バイト先の冷凍食品センターで、朝礼がありました。

出勤している社員、バイト全員揃っての朝礼なんて
珍しいコトです。

パレットを3枚重ね、それを台にして、センター長がそこへ
上って、話し始めます。

  いい?
  みんな聞こえてる?
  聞こえにくかったら前へ
  出てきていいから。
  ちゃんと聞けよ。

そう言って話した内容は、傘立の中に傘が放置されたままに
なっているというモノでした。

タイムレコーダーが備えてあるカウンター近くに、大きな
傘立が置いてあるのですが、そこに傘が、いつまで経っても
入ったまま…、それも何本も入ったまま放置されていると
言うのです。

  雨の多い時期なんで傘を
  持ってくるのはイイけど、
  持ってきた傘は持って帰れっ!
  帰りに雨が降ってないと忘れがちだけど、
  せめて翌日にでも持って帰れよ!
  なぁ?
  持ち帰るの忘れて、また雨降りの日に
  新しい傘を持って来て、それをまた
  傘立に入れたまま帰る…、そんなことが
  繰り返されているから、傘立に傘が1本も
  入らんぐらいになってまったやろッ!
  アレ見て、みんな何とも思わんのか!?
  なぁ?
  整理整頓!
  センター内の至る所に貼紙がしてあるやろ!
  整理整頓って!
  傘立も整理整頓や!
  そういえば、毎年これくらいの時期になると
  傘立の話をしとるけど、毎年同じこと
  言わすなよ!
  この中に心当たりのあるヤツは
  何人もいるやろっ!
  なぁ?
  今日、一旦、放置されている傘は
  処分するからな!
  処分されたくなかったら、朝礼の後、
  自分の傘を傘立から持ってけ!
  入ったままの傘は処分するぞ!

傘立の傘…で長々としゃべり続けるセンター長。。。

少なくとも、僕の傘は一本もないはずです。

なぜなら、僕は傘を使わないから。

どれだけ雨が降っていても、駐車場から、センターまで
傘を差さずに行きます。

傘を差すのが面倒だし、わずか1分足らずの移動のために
傘を使う必要などないと思っているのです。

ま…、それはイイとしまして…、

  そう言うわけで、笹○。
  毎回のことだけど、傘立の
  整理整頓って言うか、放置傘の処分…
  おまえ、頼むぞ!
  この後、すぐにやれ!
  みんな、笹○が処分する前に、
  自分の傘を持っていくように。
  後になって傘がない…とか
  言われても知らんゾ!

そう言って朝礼を終え、センター長は事務所へ戻って
いきました。

笹やんの管轄のバイトである僕らは、傘の処分を
手伝うことになりました。

傘を使わない僕は、それまで気に留めることがなかったの
ですが、改めて傘立を見ると、確かに傘が林立しています。

  確かになぁ…、
  雨の日、ここへ傘を
  立てようと思っても、
  どこに入れればいいのか
  困っちゃうモンなぁ

バイト仲間のヤノさんは、そう言って、しげしげと林立した
傘を見つめています。

  10分待つ。
  10分経ったら、ここの傘、
  一本残らず片づけるから

笹やんが、そう言いました。

待っている10分間、休憩しようと言うことになり、僕らは
自販機で飲み物を買い、ベンチに腰掛け、世間話をして
いました。

ところで、この傘立の放置傘を処分する作業は、年に2、3回
するらしく、僕は今回初めてですが、毎回、笹やんが行って
いるとのことで、

  おかげで、ここ数年、
  傘を買ったことがない

と、笹やんが言いました。

つまり、処分するとき、気に入った傘を見つけると、それを
拝借するというわけです。


さて…、

休憩を終え、僕らは放置傘の処分をすることにしました。

そのやり方は、傘を10本ほど束にしてビニール紐で縛ると
いうものでした。

放置されている傘は、およそ50本。

ビニール紐で縛り、5束にしたのを台車に乗せ、それを
笹やんの後に続いて、構内の一角へ運びました。

  ここ…、
  ここに入れるから…

笹やんは、そう言って、ポケットから鍵を取出し、外壁に
備えられているドアを開けました。

  !…
  #▲◎※◆℃!!!

ドアの中の光景を目にした僕とヤノさんは、ちょっとした
驚きのあまり、言葉を失いました。。。

その部屋は…、そうですねぇ、6畳分のスペースですか…、
部屋の真ん中に太いパイプが3本ほど、床から天井を通して
立っていて、配電盤のような装置も見えました。

おそらくセンター内部の一部分の温度を調整する一室だろうと
思います。

普段、ここへは誰も来ないでしょうし、ドアさえ開ける人も
いないでしょう。

その一室に、ギッシリと傘の束が積まれているのです。

まさしく山のように。。。

ある意味、壮観な眺めです。

どんなスーパーやホームセンターでも、これだけの本数の傘を
並べている売り場はないでしょう。

そして今、その傘束の山に、新たに束にしたばかりの傘を
置けと、笹やんは言うのです。

  ・・・・・何本、あるんスか?

僕は、笹やんに尋ねました。

  わからん。
  数え切れんだろ…、もう、
  こうなっては…。

笹やんが、そう答えるように、数え切れないほどの傘が
束になって積まれているのです。

要するに…、

傘立の整理整頓と称して、放置傘を傘立から取り除いては
いるものの、その放置傘は、この部屋に放置されたまま
なのです。

これまでの傘立の整理整頓により処分された何本もの傘が、
この部屋に累積しているわけです。

傘立の放置傘は処分されたように見えても、放置傘そのものは
処分されていなかったのです。

  雨の日、傘を忘れたら、
  ここにある傘、どれでも
  使っていいから…

軽い感じで、笹やんが僕らに言いました。

はぁ…、とヤノさんが返事をして、

  けどさぁ…、
  このままじゃ、この部屋も
  傘が入り切らなくなるよね

そんな心配を口にしました。

ちなみに、センター長は、この部屋に放置傘が収納されて
いることは知っており、以前から、ある程度溜ったら
廃品として業者に持って行ってもらえと笹やんに伝えて
いるそうですが…、

  それも面倒臭くてなぁ…

と、笹やんは放置したままにしているわけです。。。

  これさぁ…
  廃品じゃなく、フリーマーケットとかで、
  1本10円から50円で売れば
  イイ小遣いになるんじゃない?

ヤノさんが言うと、笹やんは目を輝かし、

  え!?
  そんなコト出来るの?
  ねえ?
  どーやってやるの?
  売れるなら売ろうよ!
  ねえ?
  小遣いにしようよ!

そう言って、食い付いてきました。。。

  待って。
  知り合いに聞いてみるから。
  オレの知り合いでフリマに
  よく顔出してるのがいるから、
  そいつに聞いてみるよ。

ヤノさんは携帯電話を取り出しながら答えます。

笹やんは、ここの放置傘が実際に売れたら、3人で売上金を
山分けしようと提案しました。

とても目を輝かせ、笹やんは、

  これから傘立の整理整頓、
  気合入るな!

何やら、皮算用しているみたいです。。。
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