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笹やん SOS

今日の昼前、バイト先の冷凍食品センターへ、コンサル会社の
タカダさんが、急にやってきました。

コンサル会社のタカダさん…

彼は、このセンターの作業手順を改善したり、管理体制を構築
したり…

とにかく、カイゼン活動を指導する立場の人で…

見るからに神経質でインテリっぽい雰囲気の、小柄で中肉、
そしてベビーフェイスの50代男性です。

そして、彼の最大の特徴はと言えば…

  とにかく頭がデカい!

ってコトです。

見る者を圧倒するデカさです。

そんな彼を、我らが笹やんは“御カシラ”と陰で言ってます。

で…

御カシラことタカダさんは、何か緊急な用でもあるのか、不意に
やって来たようで、これにはセンター長もビックリした様子でした。

ここでは、社員とバイトは青い帽子、外来者は赤い帽子を被る
ことになっていますが…

タカダさんは、サイズが合わず、被り切れない赤い帽子をデカい頭に
乗っけて、センター長を従えるようにして、庫内で作業中の笹やんの
前までやって来ました。

さすがに笹やんも不意打ちを食らったようで、ポカンと口を開き、
呆然とした目つきで、タカダさんとセンター長を見ていました。

当然、僕らも、何事か?と言った感じで、この様子を横目に
見つつ、作業をするのでした。

  たった今、センター長にも
  お話したんですが…
  笹○さん、これは一体
  どういうつもりですか?

妙に落ち着き払った、そして、どこか上から姿勢の言い方で
タカダさんは、手にしている数枚のコピー用紙を、笹やんの
前に差し出しました。

  は…?

と言った感じで、笹やんは、少しとぼけた顔つきになり、タカダさんを
見ました。

そんな笹やんに、ふん…と、軽い鼻息を吐いて、

  先月の笹○さんの活動成果報告書を
  読まさせていただきました。
  これ、10月と9月も同じコト書いて
  ますよね?
  それ以前のは目を通していませんが、
  どういうつもりです?
  3ヵ月間、全く同じ内容の報告書って
  あり得ないでしょ?
  それも、成果らしい成果を上げて
  いないようだし…
  それに対する反省や対策など、一言も
  書かれていないし…
  これ、要するに何もやってないって
  コトでしょ?
  何も活動していないし、報告書すら
  作成していないってコトでしょ?
  ねえ?
  どういうつもりです?

まさに上から目線で笹やんを見て、あくまでも落ち着いた口調で、
じわじわと追い詰めるように言うタカダさん。。。

早くも作業場に緊迫した空気が漂ってきました。

横で、センター長は、さも神妙そうな顔で、うつむき加減になり、
手を前に組み、姿勢正しくタカダさんの言うことを聞いている
ようでした。

これに対し、笹やんは、ニヤ~っと笑いながら、目をパチパチ
させて無言のまま突っ立っています。

おそらく…

  バレたか…。

とでも思っているのでしょう。。。

  まず、質問に答えてください。
  笹○さん、どういうつもりです?
  みんなで力を合わせて、ここのセンターを
  良くして行こうって決めたんじゃ
  なかったんですか?
  そのために、それぞれの管理者が率先して
  作業ルールを守り、大勢のバイトさんたちを
  管理、指導するってコトになってたんじゃ
  ないですか?
  少しずつ、一歩ずつ良い方向へ進もうって
  コトだったでしょ?
  その進捗を活動の成果という意味で毎月
  作成して、それを自身が立てた計画と
  すり合わせてチェックしたり、他の社員と
  情報交換したり…、
  そのために成果報告書を作成することに
  なってたでしょ?
  成果報告書は月々の活動の記録でもあり、
  ここの資産にもなり得るから、みんなで
  進めて行こうってコトだったでしょ?
  それを、笹○さん、一体どういうつもりです?
  他の社員の方たちは、毎月きちんと作成して
  いますよ。
  今、私が言っているのは報告書の内容は二の次です。
  成果が上がらなかったのなら、それはそれで結構です。
  上がらなかったのは何故か、どうすれば成果は
  上がるのか…
  それを自身で考えて、報告書に書いていただければ、
  それで構いません。
  繰り返しますが、少しずつで構わないです。
  一歩ずつでいいんです。
  今月は、こんな事があった、こんな失敗があった、
  だから、この点を反省して、次回からこうしよう、
  ああしてみよう…
  そんなことを一つずつで構いませんから、
  自身で考えて作成するってコトが大切なんでしょ?
  そんな話も何度かしましたよね?
  そこで笹○さん。この3ヵ月、何がありました?
  何をしました?それでどうなりました?
  そして、どうして行きますか?
  そう言うことを書いてください。
  それを毎月毎月、全く同じ内容の報告なんて、
  あり得ないでしょ?
  ねえ?
  どういうつもりです?

実際には、もっと長々と話していましたが、まぁ、要約すると
こんな感じのコトを、タカダさんは落ち着いて、冷ややかに
言っていたようです。

つまり、笹やんは毎月のカイゼン活動に対して報告書を作成する
ことになっているらしいのですが、それを怠り、数ヵ月間、全く
同じ内容で提出していたようです。

それに気がついたタカダさんは、注意を促すべく、急きょ、
ここへやって来たと言うことのようです。

そして今、長々と笹やんを追い詰めるように、やたら質問攻めに
して、“どういうつもりです?”攻撃を連打させるのでした。。。

対する笹やん、これらの攻撃に一言も答えることが出来ず、ひたすら
センター長へ、SOS目線をチラチラと送るのみ。。。

  SOS、SOS…
  助けてください。
  SOS…
  ここらで何か言ってください。

  SOS、SOS…
  何とかなりませんか?

  SOS、こちらSOS…

タカダさんに攻められている間、そんな目線を送りながら、
センター長をチラ見する笹やんですが…

神妙な姿勢のまま、それをキッパリ無視するセンター長。。。

それでも必死に窮状を伝えようとする笹やん。

  SOS、SOS…

  おい!
  何か言えって!

  SOSって言ってるだろうが!

しまいには、こんな感じだと思います…。

それでも知らん顔のセンター長。

僕らバイトは、緊張と重圧を増したこの作業場で、黙々と手を
動かしながら、様子を窺い、耳を立てているのでした。。。

  笹○さんに言う前に、センター長へ
  話をさせていただきました。
  こんな報告書を提出されて、どうして
  何も注意しないんですか?
  それぞれの社員が作成した報告書に
  ちゃんと目を通していますか?
  センター長へは、そう話をさせて
  いただきました。

タカダさんの話の鉾先は、センター長へ向かいました。

姿勢を正したまま、センター長は少しうな垂れて見せました。
なかなかイイ芝居だと思いました…。

  センター長は、自身の管理不足を認め、
  笹○さんを改めて指導するとおっしゃって
  くださいました。

そんなタカダさんの言葉に、いかにも神妙そうな顔で、わずかに
頷いて見せるセンター長。
これもイイ芝居です。

  この後、センター長からご指導して
  いただくと思いますが、笹○さん。
  まず、私から直接言わせて
  もらいたかったので…、
  作業中に失礼かと思いましたが、
  こうしてお話させていただいたわけです。

タカダさんは、再び笹やんに鉾先を向けました。

この瞬間、センター長がホッとして肩を下げたように見えたのは
僕だけだったでしょうか?

  笹○さん。一言でいいですから
  答えられませんか?
  どういうつもりです?
  この報告書?
  これは、あなたのカイゼン活動に対する気持ち、
  やる気の表れと受け取って構わないですか?
  だとしたら、今後、私はセンター長と
  一緒になって、徹底して、まずは
  あなたからカイゼンしていくつもりです。
  それで構いませんか?
  いいですか?
  この活動は、みんなが一つにならないと
  進んで行きません。
  誰ひとり、よそ見していては前へ進みませんよ。
  しつこいようですが、少しずつで構わないのです。
  一歩一歩、前に進んで行きましょう。
  みんなで一つの目標に向かって進むことが
  大前提です。
  その大切な進捗状況の記録が、この報告書
  なんです。
  この報告書は、みんなが共有していくものです。
  大切な資産なんです。
  そのことは前から話しましたよね?
  何も難しいコトを書かなくて結構です。
  大切なのは自身の考えを自身の言葉で
  書き表すことだって話したでしょ?

タカダさんは、相変わらず冷やかに、笹やんを上から見て
攻め続けます。

しかし…

彼のデカい頭に乗っかっている赤い帽子が、それらの言葉の
説得性を、いま一つ損ねているような…。

笹やんは、ひたすら笑って誤魔化す戦術で、合間合間に
SOS目線をセンター長へチラチラと送り続けるのですが…

姿勢を正しているセンター長は、全身に完璧なバリアを張り、
その目線を反射させてしまうのです。。。

そのうち、笹やんのSOS目線は、僕らバイトにまで注がれるように
なってきました。

  SOS、こちらSOS…
  誰か、何か言え!

  SOS…
  おい、そこのオマエ!

  何とか言ってみろ!
  えっ?おい!

  SOSっだっつーの!!

そんな目で見られてもナァ…。

タカダさんの話は続きます。

とにかくクドクドと、冷ややかに“どういうつもりです?”攻撃で
笹やんをいたぶるように攻め続けるのです。

やがて…

  まぁ、過ぎたことになりますから、
  先月分までは書き直せとは言いません。
  しかし、今月からは、ちゃんと
  作成してくださいよ。
  しつこいようですが、難しいコトを
  書かなくて結構です。
  自身の考えを…

と言った時、タカダさんの赤い帽子が、ポロッと床に落ちました。

その瞬間、作業場を包んでいた緊迫の空気が、一気に緩みました。

バイトの誰かが、プッ!と吹き出したのを聞いたのか、タカダさんは
そちらの方を睨むように見つめました。

間髪入れず、笹やんもニヤ~ッと笑って、

  ちゃんと帽子被ってくださいよ。
  ちゃんと。

タカダさんへ言いました。

その途端、険しい表情になったタカダさん…

  ピシィッ!

こめかみ辺りの血管が切れた音が聞こえたような…

そこへ熟年バイト女子のひとりが、

  ちょっと笹やん!
  もう12時過ぎちゃったヨ!
  早くリフトで、空いたパレット
  運んで行ってヨ!

絶妙のタイミングで「助け舟」を出しました☆

SOS状態から形勢を整えた笹やん。大きな声で、おう!と言い、
颯爽とフォークリフトを操作します。

  ピッピッピッピ…

リフトから発せられる電子音を響かせ、笹やんは早々と作業場を
後にして行きました。

尻切れトンボ状態のタカダさん…

それを見守るセンター長…。

で…、長々と説教を食らった笹やん、この先、ちゃんと報告書を
作成するのでしょうか…?
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