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笹やん 忍法帳

バイト先の冷凍食品センター。

午後4時ごろ…、

得意先から、どうしても今日中に持って来てほしい商品が
あるから配達してくれ!という電話があったらしく、
センター長が、笹やんを探しに、庫内へやって来ました。

  笹○───ッ!
  お──い!
  笹○、どこ行った───ッ!

何度呼んでも、笹やんは姿を見せません。

確かトイレの方へ歩いていったみたいだったけど…、と近くにいた
バイトがセンター長へ告げると、

  ちょっとオマエ、
  トイレ見に行ってこい!
  笹○を見つけたら、すぐ
  オレの所まで来るように
  言っとけ!

そうバイトに言いつけ、センター長は、また別の場所へと歩いて
行きました。

笹やんに配達を頼もうとしているわけです。

しばらくしてから、トイレを見に行ったバイトが戻ってきましたが、
笹やんはいなかったそうです。

  いやいや、笹やんなら
  外でタバコ吸ってたよ

と言う証言もあり、今度はそっちを見に行きましたが、笹やんは
既にいなかったようで。。。

  あっ!
  あれ、笹やんさんじゃない!?

バイトの一人が、正面奥の扉の開いた冷凍室を指差しました。

  今、笹やんさん、
  リフトであそこを通って
  行ったような…

と言っているうちに冷凍室の扉が閉まり、笹やんだったのかどうか、
確認できませんでした。

そのうち、センター長が戻ってきて、

  アイツが一番、手が空いて
  いるだろうと思って、
  配達に行かせようと思ったんだが…
  アイツ…、
  今日は忍者みたいなヤツだな…
  姿を見たと思ったら雲隠れしやがって!

と、こぼしていました。

センター長は「今日は…」と言ってましたが、実は笹やん、時々
こうして姿をくらませる時があるんです。

ホント、どこ探しても見つからない時があります。

センター長が「忍者みたいなヤツ」と言ってましたが、まさに
その通り!

雲隠れの術か、霧隠れの術か知りませんが、たいしたモンです。


  アカン!
  時間が遅くなる…、
  笹○の次に手の空いている
  社員と言えば…、
  おお!イトー!
  イトー、オマエ、
  今、手ぇ空いてるだろ?
  ちょっと配達して来てくれ!

センター長の前を、丁度ふらりと通り掛かったイトーさんに
白羽の矢が当たりました。。。

  ええ~~~っ!
  あそこの店、片道2時間近く
  掛かりますよ!
  特に日曜のこの時間、
  あの辺、道混んでますしぃ~…

通称、“泳ぎ目のイトー”と呼ばれているイトーさん、早速
動揺したのか、キョロキョロキョロキョロ…、左右に目を泳がせ
ています。

  そんなもん仕方ねーだろ!
  どーしても今日持って
  来いっつーんだから!
  他に手の空いてる社員いないんで、
  オマエ、行ってこい!

センター長に大きな声で命令されながらも、イトーさん、

  手の空いてる社員なら
  笹○さんがいるのに…

そんなコトを思い、目をキョロキョロ泳がせ、笹やんの姿を
探しているように見えます。。。

僕はこの時、改めて笹やんのスゴさを感じました!

  そうなんだ!
  笹やん、こんな時間に
  往復4時間も掛けて配達に
  行きたくないから、
  それを察知して姿を
  くらましてるんだ!

恐るべし笹やん、ああ見えて油断も隙もない…、まさに忍者!?


やがて、イトーさんは不貞腐れたような顔で軽の冷凍車に商品を
積み込み、センター長から詳しい地図を書いてもらっています。

  いいか?この道よりも
  1本南側にある道の方が狭いけど、
  混んでないから。
  そっちを走って行け!
  で…、
  オイ!
  オマエ、聞いとるんか!?
  どこ見とるんだ!?
  ちゃんと聞けよッ!
  人が一生懸命、場所を教えとるのに!
  いいか?

熱心にセンター長が地図を書き、ルートを説明していましたが、
イトーさん、キョロキョロの泳ぎをピタリと止めて、一点を注視
しました。

なんと!

そこに笹やんが!!

イトーさんを囲むようにして、商品の出庫を手伝った僕らバイト
3人とセンター長の少し後ろに、笹やんが、ニコ─────ッ!と
満面の笑みをたたえ、僕らと一緒になって地図を眺めているでは
ありませんか!

  この時間、そっちの道も
  少し混むかも知れんけど、
  でも帰りの時間になれば、
  だいぶ空くようになるから…

とか言って笹やん、したり顔でひとり頷いてます。。。

  何だ、笹○!
  オマエ、探しとったンだぞーっ!
  どこ行っとったンだ!?

そうセンター長が言うと、笹やんは澄ました顔で、

  ええ、その…、
  バイトのマルヤマとふたりで
  一番奥の冷凍室のラックの
  ネジが緩んでいたのを直して
  おりまして…、
  これが、また…、
  えらく手間が掛かっちまって…
  ええ…

と、ゆったり腕を組みながら語る笹やん。。。

  ああ…、あそこはオレも
  気にしてはいたけど…、
  それよりオマエ、
  イトーの代わりに配達行くか?
  そんなに道に詳しいんだったら…

と、センター長に言われて、笹やん、さらに澄まし顔で、

  ええ、いいですよ…

軽く引き受けたと思わせつつ、

  おっと!そう言えば忘れてた!
  先月の在庫表、今日中に
  仕上げるんでしたっけネ!?

若干、芝居がかった感じで言うや、そそくさと事務所の方へ
行こうという素振りを見せる笹やん。

ここでも笹やん、忍術を披露!

笹やんの得意な、変わり身の術…です。。。

一瞬、歓喜に満ちた目つきになったイトーさん、再び落胆。。。

もう、目を泳がせる気にもならないようです。
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タグ:笹やん 忍者
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コメント 2

もも子

笹やんさん、できると見た!

by もも子 (2013-02-04 09:01) 

あべしん

もも子さん、こんにちは
毎度ありがとうございます。

まぁ、確かに笹やんは、
「スゴッ!」
と思わせる時もあるんですが…。

やっぱり得体の知れない不思議な
おじさんですよ
by あべしん (2013-02-05 10:08) 

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