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しのだうどん

今、うどん屋と言えば、セルフ式のチェーン店を真っ先に
思い浮かべるか、大きな構えで麺類も提供する和風レスト
ランの名前をあげる人がほとんどかも知れません。

駅からほど近い場所や商店街の片隅、または、住宅地の中に
ひっそりと構える個人経営の小さなうどん屋・・

昭和40年代とか50年代から店を始め、ずーっと変わらない
外観、内装・・

看板の文字は一部、ハゲて読みづらかったり、暖簾は埃っぽく
色褪せたままで・・

店の中へ入れば、年季の入ったテーブルに椅子。

壁なんかうっすら茶色っぽくなって、そこに貼られている、
やはり茶色っぽく変色した紙にお品書きが・・

天ぷら、月見、とろろ・・

ここは今も昔も変わらぬメニューが見られますが・・

しのだ・・

え…?

し・の・だ…って?

そうなんです!

仕事仲間のUさんが、先日、奈良へ出張に行き、そこで出会った
昭和チックなうどん屋・・

ふらっと入って、貼紙に書かれたメニューの中に見つけたのが、

  しのだうどん 430円

もうここでUさんは、これを注文する気になっていたそうですが、
一応、店主に確かめてみることに・・

  あの~、しのだうどんって
  何ですか?

すると、70代と思われる店主が、愛想よく笑いながら、

  きつねのことですわ。
  伝説のきつねが、今の大阪の
  和泉市にある信田の森に住んで
  いたと言い伝えられてて…、
  そンで「しのだ」と言うんですわ。
  
そう教えてくれたそうです。

  今は大阪でも「しのだ」なんて
  メニューに書いてあるうどん屋、
  少なくなったやろなぁ~。

そう言って、店主は穏やかに笑いました。

しのだうどんと言うメニューが減り、きつねうどんに変わって
行ったと言うことは、それだけ個人経営のうどん屋が・・

昔は、町を歩いていれば、1軒、2軒はあった小さなうどん屋が
減って行ったと言うことです。

Uさんは、しのだうどんを注文しました。

細めの麺、ほんのり甘みのある油あげ・・

この味もまた、創業当初から変わらぬ味だろうと思いました。

Uさんは、もう1杯、しのだをお代わりしました。

  そんなに気に入って
  もらえましたか?

店主に尋ねられ、Uさんは、こう答えたそうです。

  きつねじゃなく、しのだうどんだから
  おいしいです!

この機会を逃したら、もう、しのだうどんが食べられないと
思ったのでした。

その時です。

ボ~~ン

これまた年季の入った柱時計が1時を告げました。

さらに、柱時計から下の位置に、置台があり、そこには
ダイヤル式の黒電話が置いてあるじゃないですか!

  オレ、昭和40年代にタイムスリップした!
  伝説のきつねが、オレを昭和に引き込んだんや!

めっちゃエエ話やんか!

Uさんの話に、何だか妙に感動しちゃいました!

僕も、そのうどん屋へ行って、しのだうどんを食べてみたい
と思いました。
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