怪傑スダ ～風雲のゴタゴタ～
午後3時、バイト先の冷凍食品センター･･
僕たちスダチーム男子バイトは、事務所の脇にある
自販機で飲み物を買って休憩していました。
すると･･
少し離れた場所から、何やら数人で言い争っている
ような声が聞こえてきました。
どうやらドライバーたちが言い合っているみたいで…
その中の1人は、間違いなくオカバヤシさん…
通称・バカバヤシの声です｡｡｡
わりぃ～けどさぁ！
わりぃ～けど、M店の配達…
アカン！アカン！
わりぃ～けどぉ～！
アカンっつーの！
わりぃ～けど、M店の配達
どっちか引き受けてもらえん？
アカンっつーのに、オメーは…
わりぃ～けどさぁ！
･･････････
･･････････
わりぃ～けど、頼むわ！
･･････････
･･････････
なぁ、わりぃ～けどぉ～！
オレもムリ！
オレだって弁当屋だけで3店も
あるんやぞ！
それでも、わりぃ～けど、頼む！
アカンっつーの！
なぁ、わりぃ～けどぉ～！
オレはムリやぞ！
見ろ、コレ･･
和レスも午前中配達なんや！
ムリに決まっとるやろ！
わりぃ～けどさぁ…
オレもさぁ…
和レス、1店あるんやわ～…
な、頼む！
知るかっ！
ムリやっつーの！
先ほどから10回くらい「わりぃ～けど」ばかり繰り返して
言っているのがバカバヤシで…
ほかに2人のドライバーがいるみたいです。。
なぁ、ホント…
わりぃ～けど、頼む！
エエ加減にせいっ！
割り振られた所は自分で配達しろ！
大変なのはオメーだけじゃねーんだ！
だって、わりぃ～けど…
話の内容からして、バカバヤシが明日の配達コースに
不服でもあるのか、配達店舗の一部を別のドライバー
に押し付けようとしているらしいです。。。
僕たちは休憩を済ませ、庫内に戻り、明日の早朝出発便
のために、テナント惣菜店のうち数店舗分の商品仕分けを
始めました。
このテナント惣菜店は、複数の大手スーパーに店舗が
あり、100店を超えます。
ドライバーの配達コースにより、時間指定、または、
午前中納品などの制約がある納品先と組み合わさって
いる場合、その配達便は早朝出発になることがあり、
それに合わせて、仕分けを優先しておくのです。
そんなところへバカバヤシと、先ほど言い合っていた
ドライバー2人が、積込みバースにやってきました。
なぁ、頼むわ…
弁当屋がムリなら、和レスでも
エエから引き受けてもらえん？
まだ言っとるンか!?
ムリやっつーの！
ここで、もう1人のドライバーが、
弁当屋は朝の6時には仕込係の
パートかバイトが出勤してくる。
ここを5時ちょっと前に出発すりゃ
間に合うやろ。
そう言うと、バカバヤシは眉を“八の字”にして、
なぁ、そう言わんと…
と、手を合わせる素振りをすれば、
オレらだって弁当屋の配達が
ある日は、前日に積込みを
済ませて、朝5時前には出る！
そうや、そうや！
甘ったれたコト言っとらんと、
それくらいやってみろ！
2人のドライバーからキツイ口調で言われ、今度は
眉を“逆八の字”するバカバヤシ｡｡｡
チッ！
何でこんなコース組んだんや、
キヤマのババァ…
と、配送課のキヤマ課長に当たる始末｡｡｡
毎日、ドライバーたちが配達する店舗、配送コースは
キヤマ課長が独断と偏見で決めています。。
気に食わないドライバー、辞めさせたいドライバーに
対しては、思いっきりキツいコースを組むらしいです。。
それで文句を言ってくるドライバーには、罵詈雑言を
湯水の如く浴びせ、仕舞いには、
イヤなら辞めてもらっても
エエよ…
と、冷た～く言い放つのです…。
鬼のキヤマ…
泣く子も黙る鬼キヤマ…と、今やドライバーたちから
恐れられているのです。。
ところが、キヤマ課長は、珍しく昨日、今日と連休で･･
ですから、明日の配送コースを組んだのはアサノ主任と
言う配送課の課員らしいです。
アサノ主任は、言わばキヤマ課長のカバン持ち、腰巾着
みたいな存在と言われていますが、僕は詳しいことは
知りません｡｡｡
アサノかぁー！
こんなワケわからんコース
組みやがって！
コースを組んだのがアサノ主任だと知ったバカバヤシ…
急に激怒した様子です…。
他の2人のドライバーは、
もうアホのオカバヤシの相手には
なってられねーわ…
って感じで、スダさんに向かって、
スダさんよぉ、どんな具合や？
そろそろ積み込めるかい？
と尋ねれば、
あと20分ほどで用意できるから、
もう少し待っててください
スダさんはハキハキとした口調で答え、仕分け票を
めくりながら確認していきます。
さて、バカバヤシですが、一旦、積込みバースから
姿を消したものの、10分ほどで、今度はアサノ主任を
連れて現れました。
おいっ！
何でこんなコース組んだんや!?
バカバヤシは真っ赤な顔をして、アサノ主任に怒鳴り
つけるのでした。
アサノ主任は小柄で色白、おとなしげな顔つきで･･
見方によっては、常にボーーーーっとしてるようにも
見えます｡｡｡
これだけ怒鳴られても、ホケ～っとした表情で、アサノ
主任は、ゆっくりした口調で答えました。
元はキヤマ課長が作ったコースを
そのまま使っただけで･･
ウソつけーーっ！
オカバヤシさんのコースも
課長が用意しておいてくれた
もので･･
何で、それをそのまま使うのっ!?
課長から「この通りやれ」と
言われたんで･･
ウソつけーーっ！
バカバヤシは激昂し、今にもアサノ主任の胸ぐらを
掴まんばかりの勢いで…
この言い合いに、例の2人のドライバーたちが、
オカさん、別にムリなコースじゃない･･
それくらいオレたちも配送しとる！
間に入るように言いました。
ちなみに、明日のバカバヤシと2人のドライバーである
Aさん、Bさんの配達先は･･
バカバヤシ
●弁当販売店 2店舗
●和風レストラン 1店舗
●スーパー××× 2店舗
Aさん
●弁当販売店 3店舗
●テナント惣菜店 3店舗
Bさん
●弁当販売店 1店舗
●和風レストラン 2店舗
●テナント惣菜店 3店舗
弁当店と和レスは午前中に納品することになっています。
こうして見ると、Aさん、Bさんの方が配達軒数が多い
ですし、3人とも午前中の納品店舗は3軒ずつ･･
特にバカバヤシだけが過酷なコースと言うわけでもない
みたいです。
そのことをAさん、Bさんに指摘され、アサノ主任まで、
全然、ハードなコースじゃないっスよ…
と、ボソッとした感じで言うもんだから、バカバヤシは
カンカンに激昂｡｡｡
オレが言いたいのはぁーーっ！
オレが言いたいのは、軒数じゃ
なくて移動距離のことなのっ！
と、大声を張り上げるバカバヤシに、敢えて澄まし顔で
Aさんが、
先に弁当のM店に行って、それから
弁当H店に行けば、和レスのW店は
30分で行けるやろ･･
5時に出発すりゃ、余裕で午前配達
できるやろ･･
と言えば、アサノ主任も、バカバヤシのコース票を
指差しながら、
ちゃんと配達の順番も、ここに書いて
あるから、ちゃんと見てくださいよ。。
薄ら笑いを浮かべてバカバヤシを見ています｡｡｡
ゴゴゴゴゴゴゴォォォォーーーーーーッ！
そんな爆音を立てているような感じで、バカバヤシの
怒りは頂点に達したらしいです。。
オレが言いたいのはぁーーっ！
どうしてこのコースをオレに
振ったのかってコト！
キヤマ課長の指示なんで･･
オレが言いたいのはぁーーっ･･
早出したくないだけなんでしょ…？
薄ら笑いを浮かべたまま、アサノ主任に核心を突かれ、
オレが言いたいのはぁーーっ！
納品時間に間に合うとか、
間に合わんとか…
そう言うことじゃなく…
それより…
ゴゴゴォォォォーーーーーッ！
ガガガガガァァァーーーーーッ！
バカバヤシは猛烈に興奮しまっくているらしく、最後の
方は何を言っているのか上手く聞き取れませんでした…。
結局、早朝出発したくないと言う自分勝手な理由で、
周りをゴタゴタさせるだけ…
そんな空気を一掃するかのように、
積込み商品の用意が出来ましたよ！
二人ともお待たせしましたね。
一応、こちらで検品していますが、
今日は特にアイテムが多いので
注意して積み込んでください。
Aさん、Bさんに颯爽と声を掛ける怪傑スダ！
そのハキハキとした爽やかな口調に、AさんとBさんは、
ホイ来た！
さぁ、チャチャっと積むか！
そう言いながら、カゴ車の商品を確認し始めるのです。
アサノ主任は、軽くスダさんに会釈して、事務所へと
戻っていきます。
そして、一人たたずむバカバヤシ…
ポカンと口を開けて、虚空を見つめ、まるで抜け殻の
ような…
一人で勝手に喚き散らし、周囲をゴタゴタに巻き込む
バカバヤシ｡｡｡
しかし、怪傑スダの機転によって、見事、蹴散らさ
れたのでした！
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僕たちスダチーム男子バイトは、事務所の脇にある
自販機で飲み物を買って休憩していました。
すると･･
少し離れた場所から、何やら数人で言い争っている
ような声が聞こえてきました。
どうやらドライバーたちが言い合っているみたいで…
その中の1人は、間違いなくオカバヤシさん…
通称・バカバヤシの声です｡｡｡
わりぃ～けどさぁ！
わりぃ～けど、M店の配達…
アカン！アカン！
わりぃ～けどぉ～！
アカンっつーの！
わりぃ～けど、M店の配達
どっちか引き受けてもらえん？
アカンっつーのに、オメーは…
わりぃ～けどさぁ！
･･････････
･･････････
わりぃ～けど、頼むわ！
･･････････
･･････････
なぁ、わりぃ～けどぉ～！
オレもムリ！
オレだって弁当屋だけで3店も
あるんやぞ！
それでも、わりぃ～けど、頼む！
アカンっつーの！
なぁ、わりぃ～けどぉ～！
オレはムリやぞ！
見ろ、コレ･･
和レスも午前中配達なんや！
ムリに決まっとるやろ！
わりぃ～けどさぁ…
オレもさぁ…
和レス、1店あるんやわ～…
な、頼む！
知るかっ！
ムリやっつーの！
先ほどから10回くらい「わりぃ～けど」ばかり繰り返して
言っているのがバカバヤシで…
ほかに2人のドライバーがいるみたいです。。
なぁ、ホント…
わりぃ～けど、頼む！
エエ加減にせいっ！
割り振られた所は自分で配達しろ！
大変なのはオメーだけじゃねーんだ！
だって、わりぃ～けど…
話の内容からして、バカバヤシが明日の配達コースに
不服でもあるのか、配達店舗の一部を別のドライバー
に押し付けようとしているらしいです。。。
僕たちは休憩を済ませ、庫内に戻り、明日の早朝出発便
のために、テナント惣菜店のうち数店舗分の商品仕分けを
始めました。
このテナント惣菜店は、複数の大手スーパーに店舗が
あり、100店を超えます。
ドライバーの配達コースにより、時間指定、または、
午前中納品などの制約がある納品先と組み合わさって
いる場合、その配達便は早朝出発になることがあり、
それに合わせて、仕分けを優先しておくのです。
そんなところへバカバヤシと、先ほど言い合っていた
ドライバー2人が、積込みバースにやってきました。
なぁ、頼むわ…
弁当屋がムリなら、和レスでも
エエから引き受けてもらえん？
まだ言っとるンか!?
ムリやっつーの！
ここで、もう1人のドライバーが、
弁当屋は朝の6時には仕込係の
パートかバイトが出勤してくる。
ここを5時ちょっと前に出発すりゃ
間に合うやろ。
そう言うと、バカバヤシは眉を“八の字”にして、
なぁ、そう言わんと…
と、手を合わせる素振りをすれば、
オレらだって弁当屋の配達が
ある日は、前日に積込みを
済ませて、朝5時前には出る！
そうや、そうや！
甘ったれたコト言っとらんと、
それくらいやってみろ！
2人のドライバーからキツイ口調で言われ、今度は
眉を“逆八の字”するバカバヤシ｡｡｡
チッ！
何でこんなコース組んだんや、
キヤマのババァ…
と、配送課のキヤマ課長に当たる始末｡｡｡
毎日、ドライバーたちが配達する店舗、配送コースは
キヤマ課長が独断と偏見で決めています。。
気に食わないドライバー、辞めさせたいドライバーに
対しては、思いっきりキツいコースを組むらしいです。。
それで文句を言ってくるドライバーには、罵詈雑言を
湯水の如く浴びせ、仕舞いには、
イヤなら辞めてもらっても
エエよ…
と、冷た～く言い放つのです…。
鬼のキヤマ…
泣く子も黙る鬼キヤマ…と、今やドライバーたちから
恐れられているのです。。
ところが、キヤマ課長は、珍しく昨日、今日と連休で･･
ですから、明日の配送コースを組んだのはアサノ主任と
言う配送課の課員らしいです。
アサノ主任は、言わばキヤマ課長のカバン持ち、腰巾着
みたいな存在と言われていますが、僕は詳しいことは
知りません｡｡｡
アサノかぁー！
こんなワケわからんコース
組みやがって！
コースを組んだのがアサノ主任だと知ったバカバヤシ…
急に激怒した様子です…。
他の2人のドライバーは、
もうアホのオカバヤシの相手には
なってられねーわ…
って感じで、スダさんに向かって、
スダさんよぉ、どんな具合や？
そろそろ積み込めるかい？
と尋ねれば、
あと20分ほどで用意できるから、
もう少し待っててください
スダさんはハキハキとした口調で答え、仕分け票を
めくりながら確認していきます。
さて、バカバヤシですが、一旦、積込みバースから
姿を消したものの、10分ほどで、今度はアサノ主任を
連れて現れました。
おいっ！
何でこんなコース組んだんや!?
バカバヤシは真っ赤な顔をして、アサノ主任に怒鳴り
つけるのでした。
アサノ主任は小柄で色白、おとなしげな顔つきで･･
見方によっては、常にボーーーーっとしてるようにも
見えます｡｡｡
これだけ怒鳴られても、ホケ～っとした表情で、アサノ
主任は、ゆっくりした口調で答えました。
元はキヤマ課長が作ったコースを
そのまま使っただけで･･
ウソつけーーっ！
オカバヤシさんのコースも
課長が用意しておいてくれた
もので･･
何で、それをそのまま使うのっ!?
課長から「この通りやれ」と
言われたんで･･
ウソつけーーっ！
バカバヤシは激昂し、今にもアサノ主任の胸ぐらを
掴まんばかりの勢いで…
この言い合いに、例の2人のドライバーたちが、
オカさん、別にムリなコースじゃない･･
それくらいオレたちも配送しとる！
間に入るように言いました。
ちなみに、明日のバカバヤシと2人のドライバーである
Aさん、Bさんの配達先は･･
バカバヤシ
●弁当販売店 2店舗
●和風レストラン 1店舗
●スーパー××× 2店舗
Aさん
●弁当販売店 3店舗
●テナント惣菜店 3店舗
Bさん
●弁当販売店 1店舗
●和風レストラン 2店舗
●テナント惣菜店 3店舗
弁当店と和レスは午前中に納品することになっています。
こうして見ると、Aさん、Bさんの方が配達軒数が多い
ですし、3人とも午前中の納品店舗は3軒ずつ･･
特にバカバヤシだけが過酷なコースと言うわけでもない
みたいです。
そのことをAさん、Bさんに指摘され、アサノ主任まで、
全然、ハードなコースじゃないっスよ…
と、ボソッとした感じで言うもんだから、バカバヤシは
カンカンに激昂｡｡｡
オレが言いたいのはぁーーっ！
オレが言いたいのは、軒数じゃ
なくて移動距離のことなのっ！
と、大声を張り上げるバカバヤシに、敢えて澄まし顔で
Aさんが、
先に弁当のM店に行って、それから
弁当H店に行けば、和レスのW店は
30分で行けるやろ･･
5時に出発すりゃ、余裕で午前配達
できるやろ･･
と言えば、アサノ主任も、バカバヤシのコース票を
指差しながら、
ちゃんと配達の順番も、ここに書いて
あるから、ちゃんと見てくださいよ。。
薄ら笑いを浮かべてバカバヤシを見ています｡｡｡
ゴゴゴゴゴゴゴォォォォーーーーーーッ！
そんな爆音を立てているような感じで、バカバヤシの
怒りは頂点に達したらしいです。。
オレが言いたいのはぁーーっ！
どうしてこのコースをオレに
振ったのかってコト！
キヤマ課長の指示なんで･･
オレが言いたいのはぁーーっ･･
早出したくないだけなんでしょ…？
薄ら笑いを浮かべたまま、アサノ主任に核心を突かれ、
オレが言いたいのはぁーーっ！
納品時間に間に合うとか、
間に合わんとか…
そう言うことじゃなく…
それより…
ゴゴゴォォォォーーーーーッ！
ガガガガガァァァーーーーーッ！
バカバヤシは猛烈に興奮しまっくているらしく、最後の
方は何を言っているのか上手く聞き取れませんでした…。
結局、早朝出発したくないと言う自分勝手な理由で、
周りをゴタゴタさせるだけ…
そんな空気を一掃するかのように、
積込み商品の用意が出来ましたよ！
二人ともお待たせしましたね。
一応、こちらで検品していますが、
今日は特にアイテムが多いので
注意して積み込んでください。
Aさん、Bさんに颯爽と声を掛ける怪傑スダ！
そのハキハキとした爽やかな口調に、AさんとBさんは、
ホイ来た！
さぁ、チャチャっと積むか！
そう言いながら、カゴ車の商品を確認し始めるのです。
アサノ主任は、軽くスダさんに会釈して、事務所へと
戻っていきます。
そして、一人たたずむバカバヤシ…
ポカンと口を開けて、虚空を見つめ、まるで抜け殻の
ような…
一人で勝手に喚き散らし、周囲をゴタゴタに巻き込む
バカバヤシ｡｡｡
しかし、怪傑スダの機転によって、見事、蹴散らさ
れたのでした！
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