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笹やん 大激戦

バイト先の冷凍食品センターで、名目上おこなわれている
カイゼン活動。。。

4月から、新体制と言うことで、ここのセンターの社員である
笹やんとイトーさんが実質的なカイゼン推進リーダーに
任命されていたはずですが…、

イトーさんの方は、それらしく活動しているようですが、
笹やんは、全くそれらしい活動をしていないようで…、

  笹○さん、笹○さん!
  今日、2時からコンサルのイシダさんが
  活動成果の確認に来ることになって
  ますよね。
  センター長が用があって、その時間に
  本社へ行かなければいけないそうで、
  笹○さんと僕で、イシダさんの相手しなくちゃ
  いけなくなっちゃったんですけど、大丈夫ですか?

商品を仕分けしている笹やんのところへイトーさんが
やってきて、そう言いました。

すると、笹やん、とぼけたような顔をして、

  大丈夫って…?
  何が大丈夫なの?

と言いました。

  いや、だからぁ…、
  イシダさんへ、何を、どう報告
  するか…とか、
  どんな活動をして、どんな成果が
  あがったか…とか、
  そういうことを僕らが話さなくちゃ
  いけないんですよ。

焦り顔で言うイトーさんへ、トボケ顔で笹やんが答えます。

  どんな活動って…?
  なんもしとらんやろ?
  成果なんかあがるわけないやろ…、
  なんもしとらんのに。


  いやいや…、それじゃマズいでしょ!
  何もしてませんでしたなんてイシダさんに
  言えます?


  それじゃ、何か適当に活動報告して、
  まだ2ヵ月ほどしか経ってないんで、
  成果はあがってません…とか言っとけよ。


  言っとけよ…って、
  笹○さん、ソレ…
  イシダさんに話すの僕の役目に
  しちゃってません?


  そうだよ…、
  オマエしかおらんやろ。
  コサカが居ないんだったら…。

コサカ…、つまりセンター長が、本来ならば、イシダさんに
報告するのですが、外出するそうで、イトーさんと笹やんが
イシダさんの相手をしなければならないわけですが…、

  コサカのヤロー…、
  本当に用事があって本社へ
  行くのかな?
  “ニオイ”に会うのがイヤな
  だけじゃないのか?

笹やんが意味ありげな笑いを浮かべ、そう言いました。

“ニオイ”とはイシダさんのことです。
笹やんは、イシダさんのむせ返るような強烈な香水の
匂いを嫌って、彼女のことをそう呼んでいるのです。

  ま…、イシダさんの相手をしたがる
  人なんていませんからね…。
  センター長、妙にニコニコしながら、
  本社へ行かなきゃいけない…って
  言ってましたよ。


  ちくしょー!
  コサカめ、逃げやがって!
  しょーがねーな。
  じゃ、イトー…、
  オマエ、何か適当に、ニオイに
  しゃべること考えとけ。
  後ろからオレ、フォローしてやるから。


  ええーっ!?
  何をしゃべればイイんですか?


  だから、それを考えろって!
  何でもイイんだよ。
  何でも!

イトーさん…、めっちゃ動揺しているようで、左右の目を
素晴らしい高速で泳がせています。

何度見ても、イトーさんの泳ぎ目には、惚れ惚れさせら
れます。。。

やがてイトーさんは、トボトボと事務所へ向かって歩いて
いきました。

一方、笹やんは、全く気にする様子もなく、

  おーい!
  時間が押してきたから、
  急いで仕分けろ!

と、大声をあげて、僕らバイトに指示しました。


午後2時…

カイゼン活動に関するコンサルのイシダさんが来ました。

  えっ!?
  コサカさん、居ないの?
  聞いてなかったよ。
  ちょっと、大丈夫?

イトーさんから、センター長不在の連絡を受け、イシダさんは
やや目を吊り上げて、そんなことを言っていました。

どうやら、センター長が居るものと思い込んでいたようで、
それが今、ここに来て、不在と伝えられたことに機嫌を
悪くしたようです。

明らかに、その場の空気がピーンと張りつめました。

とても冷たくて、重い空気…。

早くもイトーさんは、その空気に飲まれ、超高速で目を
泳がせています。。。

その様子を、やや離れた位置で見ている笹やん。
ニタ~っと笑っているだけ。。。

そのうち、イトーさんがイシダさんを連れて、庫内を巡回し、
適当な報告をしているようでした。

20分ほど経ってから…、

再び作業現場に、イトーさんとイシダさんが現われました。

イシダさんは、笹やんに向って、

  今、巡回しながらイトーさんにも
  言ったんですけど、これと言った活動が
  できていないみたいですね。
  本当はセンター長のコサカさんに
  ハッキリ言いたいことなんだけど、
  真剣に活動しないと成果はあがりませんよ!
  本当に成果をあげようと言う気持ちがなければ
  真剣な活動はできませんよ!

言葉尻にトゲのような、突き刺すような何かを感じさせる
イシダさんの言い方でした。

僕は、作業をしながら聞いていて、

  そうか…、センター長は、こうして
  イシダさんにチクチクと言われることを
  予想してて、それで外出したんだ…。

と思い、センター長のちょっとしたズル賢さに感心しました。。。


  何のための、誰のためのカイゼン活動だか
  わかってる?
  いきなり大きな成果を出せとは言いません!
  コツコツと一つずつ活動をやり続けてください!
  それがいつか大きな成果になります。
  やり続けることが大事なんです!
  何もしなければ何の成果も出ませんよ!
  それでいいんですか!?

イシダさんの吹き矢のような口調を全身に受け、イトーさんは
目玉が飛び出してしまうんじゃないかと思うほど、キョロキョロ
目を泳がせ続けています。

イシダさんは、完全にイトーさんだけをターゲットにして
説教しているようで、笹やんの方には目もくれません。

それがイトーさんには重圧で、立っていられないほどの
苦痛を感じていることでしょう。

一方の笹やんは、まさしく対岸の火事見物と言うように、
イシダさんとイトーさんをニタニタしながら見ているだけ。。。

  つい最近から始めたわけじゃないんだから!
  何を優先してやらなければいけないかぐらい
  わかるでしょ!?
  やるべきことを優先順位をつけて、
  やり続けてください!
  リーダー役のあなたが率先してやらなければ
  誰が動くの!?
  ちゃんと真剣に取り組んでくれなきゃ
  いつまで経っても変わらないでしょ!

ここでイトーさんは、本当に足をよろめかせたようで、
身体がフラッと揺れたようです。。。

  第一、目標とする成果を明確にして
  おかないことが問題なの!
  まず目標をあげて、そのために何をやるか、
  どうするかを決めて、活動計画を作るの!
  そんなこと、もう前から何回も言ってるでしょ!?
  どうして出来ないの?
  別に凝った計画書を作れとか、出来もしない
  目標をあげろって言ってるわけじゃないんですよ!
  自分たちの身の丈に合った計画、目標でいいんです!
  それで活動を続け、そうしてレベルを上げていくんです!
  何もしなけりゃ何も始まらないでしょ!?
  そう思わない?

ここらで口から泡でも吹いて卒倒するんじゃないかと思う
ほど、ズタズタに攻撃されているイトーさん。。。

僕らは、傍から見ていて、イトーさんが気の毒でなりま
せんでした。

イシダさんにしてみれば、センター長不在の連絡を事前に
受けていなかったことへの腹イセもあり、イトーさんを
格好の餌食としているようで、彼女の攻撃はさらに
続くのです。。。

  時間がないとか、手が回らないと
  言うのはサイッテーの言い訳!
  カイゼンのために時間が割けなかったり、
  手を回せられないんじゃ話にならないでしょ!?
  さっきも言ったけど、何のための、
  誰のためのカイゼン活動か…、
  それを考えれば、時間も作れるし、
  手も回せるはずです!
  旗を振る人が旗を持たずに、ぼんやりしてる
  だけじゃ誰も動かないでしょ!


ついに、イトーさんの目から、涙がこぼれました。

作業現場内で、多数のバイトがいる前で、イシダさんから
猛攻撃を受け、ズタズタにされ、口惜しいのか、それとも
誰も助けてくれないと言う絶望からなのか、大の大人の
イトーさんの目から、一筋の涙がこぼれました。

そんな様子を見ても、僕らバイトは、イトーさんを
助けることなく、黙々と作業を続けるのでした。。。

うつむいて涙を流すイトーさんを見て、さすがに
これ以上の攻撃は不要と思ったのか、イシダさんは、
しばらく黙って立っていました。

が…、

  笹○さん!
  あなた、さっきから何も言わないけど、
  あなただって同じでしょ!
  あなた、自分がリーダーの立場にあるってこと、
  わかってます?

今度は、笹やんを攻撃し始めたのです。

先制攻撃を受けた笹やん、スーッと息を吸い込んで、

  イトーは、アンタのせいで
  ノイローゼになった!

と言いました。

  は…?

いきなり笹やんから、想定外の言葉を受けたイシダさんは、
目をパチパチさせて、キョトンとしていました。

  去年辞めたヤマウチ…、
  あれもアンタのせいだ。
  ヤマウチは無理やり活動を押し付けられ、
  それがイヤで出勤しなくなった。

さらに、笹やんは、

  このイトーも、そのうち出勤しなく
  なるかも知れんと、オレは心配しとる。
  もし、そうなったら、アンタのせいだ。

まっすぐにイシダさんを見て、そう言いました。

イシダさんは、ポカンとした表情で聞いているだけ。。。

  バイトのマルヤマもそうだ。
  アンタから作業記録の不備を
  言われて、それを気にして辞めた。
  アンタのせいだ。

この辺りで、ピーンと張りつめていた場内の空気が一気に
緩んできました。

イトーさんも落ち着いてきたらしく、目の泳ぎも弱まり、
不思議そうな顔をして、笹やんを見つめています。

  ヤマウチも、マルヤマも言っていた。
  アンタの押し付けで、やりたくもないコトを
  やらされるのがイヤでたまらないと…。
  そのうちイトーまで辞めたら、どうしてくれる?
  アンタ、うちの人間、何人辞めさせるつもりだ?

笹やんから言われ続けていたイシダさんが反撃に出ました。

  わたしが原因というのは筋違いでしょ?
  それに押し付けたつもりはありません!
  やるべきこととして通達しただけです!
  第一、わたしが押し付けるなんて
  おかしいでしょ?
  やるって決めたのは、あなたたちでしょ?

すると笹やんが、

  押し付けられたから、みんな
  渋々やっているだけだ。
  このイトーだって、やりたくないと
  言っている。
  誰も、こんなコトやりたいと思うヤツは
  一人もおらん!

きっぱりと言いました。

なお、ここでイトーさん、笹やんから暴露され、再び目を
泳がせました。

さらに笹やんは言いました。

  コサカもそうだ!
  今日、本当に用事があるのかどうか
  知らんが、本社へ行くと言って
  出掛けたそうだ。
  でも、本音はアンタの顔を見たくないからだ!

これが決定打になったようです。

イシダさんの表情が、見る見るキツくなり、

  話にならないわっ!
  もう今日は帰ります!
  コサカセンター長には改めて
  連絡させてもらいますから!

そう言い捨てて、庫内から出ていきました。

この笹やんの想定外の攻撃に、イシダさんは対処しきれなかった
ようです。

笹やんVSイシダさんの激戦の一幕。。。

しかし…、

イシダさんから連絡を受けてセンター長は、明日、明後日の
うちにでも、笹やんに猛攻撃を仕掛けることになるでしょう。

僕としましては、その場面も見たいのですが…。
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