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笹やん 救急隊

今日の午前11時頃、バイト先の冷凍食品センターで
大変なコトが起きまして…、

僕は、その場に居合わせていたわけではありませんので、
詳しくは知りませんが…、

センター内で商品の仕分けをしている最中に、ムラオさんと
いうバイトの人が、突然、倒れて気を失ったそうです!

冷凍食品センターですから庫内は当然、低温です。

そんな所に寝かしておいては大変なことになる!と言うわけで
近くにいたバイトの人たちは、ムラオさんを抱きかかえるように
外へ出ていきました。

救急車を呼ぼうと、バイトの一人が事務所へ向おうとすると、
笹やんが、

  オレが車で乗せて行く!
  おまえも一緒に来てくれ!

そう言って、駐車場から車を出し、事務所前まで車を寄せ付けて
ムラオさんを後部席に寝かせ、近くの総合病院まで乗せて行った
そうです。

その総合病院は、ここのセンターから幹線道路を挟んで、すぐの
場所にあり、わざわざ救急車を呼ぶより、ここから車に乗せて
行った方がはるかに早いと判断したのでしょう。

幸い、ムラオさんは別状なく、その日の夜、病院を出て一人で
自宅へ戻ったとのことですが…。

ムラオさんは僕と同じぐらいの歳だそうで、聞けば、以前、
ここでドライバーの仕事をしていたのですが、元々、てんかん…
って言うんですか?

突然、ひきつけを起こしてしまうことがあるようで、毎日、
薬を飲んでいるそうですが、ある日、トラックを運転して
信号待ちで停車していた時に、ひきつけを起こしたことが
あったとのことです。

運よく、事故は起こりませんでしたが、走行中だったら大参事に
つながります!

これはアカン!ということで会社としては、ドライバーとして
雇うことは出来ないと判断し、ムラオさんと話し合った結果、
本人の意思で、センター内の作業をすることにしたそうです。

  ちょうど去年の今ぐらいだったなぁ…、
  あいつ、いきなり倒れて…、
  オレが病院まで乗せて行ったんだよ…

休憩中、笹やんがタバコを吸いながら、そう言いました。

笹やんによれば、ムラオさんが作業中に倒れたのは今回で3度目
になるそうで、1度目の時には救急車を呼んだのですが、

  後で聞いたら目の前の病院へ
  運ばれたって言うんで、2回目は、
  オレが乗せて行ってやった方が
  早く手当てしてもらえると思って、
  オレの車に乗せて行ったんだ。

と言うことらしいです。

で…、

そこから話が少し変わってきまして…、

今はもう辞めてしまったそうですが、社員でヤマシタと言う人が
いて、ある日の朝、既にセンターで作業をしていた笹やんの
携帯電話が鳴ったので出てみるとヤマシタさんで、

  あ…、笹○さんですか…、
  ヤマシタです…、
  もし、もし…、
  あの…、
  ヤマシタですけど…、
  ・・・・・・・・・・・・・・
  あの…、実は…、
  急に、急に…、
  ・・・・・・・・・・・・・・
  腹が痛み出して…、それが…、
  ・・・・・・・・・・・・・・
  すごく痛く…、

そんな感じで、いかにも苦しそうに途切れ途切れに言ってきた
そうですが、笹やんとしては、その時、忙しくて、ちょっと
イラッとしながら、

  なんや!?
  早よ言え!
  聞こえにくいゾ!
  って言うか、おまえ…
  今、どっから掛けとるンや?

そう大声で返すと、携帯から、

  ・・・・・・・・・・・・・・
  あ、あの・・・・・・・・・・・・・・

と言う弱々しい声が聞こえてきたのですが、先ほどから
どうもおかしい…と笹やんは思ったそうです。

  だってよぉ!
  ヤマシタの声だけじゃなく、
  何だか、ピーポー、ピーポーって
  救急車のサイレンの音が被って
  聞こえてくるんだよなぁ…

笹やんがそう言って、タバコを吸い殻入れに捨てました。

で、その時、笹やんはそのまま携帯を耳にあてていると、

  ああ、もしもし、こちらは
  ××署救急隊の者です。
  ええー、ヤマシタさん…ですね。
  実は激しい腹痛に襲われたと言うことで
  通報を受けまして…、
  ええー、で、今、救急車両で
  □□病院まで搬送中です。
  ・・・・・・・あっ、ちょっと待っててください。
  ちょっと変わりますね。

な~んて、いきなり別の男の声が聞こえてきて、その後、

  ・・・・・・・・・笹○さん…、
  す、っすみま…、すみませんが、
  今日、今日の…、
  ・・・・・・・・・・・・・・
  今日の会議…、
  出られないって…、
  センター長…、
  ・・・・・・・・・・・・・・
  センター長に、言っておいて…、
  もらえませんか?

ピーポー、ピーポーと聞こえる中、再び弱々しいヤマシタさんの
声が笹やんの耳元に入って来たそうです。

わざわざ救急車の中で、そんなコト電話しなくてもいいのに!

と笹やんは思ったそうで。。。

  でもなぁ、何だかホントに
  死にそうな声で、言われるとなぁ…。
  バックでピーポー、ピーポー聞こえるし…。
  まるでヤマシタの遺言聞いてるような
  気分になっちゃってさぁ…、
  センター長にそのこと伝えたら、
  センター長、目をテンにしてたなぁ

ベンチに腰掛け、足を組み換えしながら笹やんは、そう言って
笑っていました。

で…、一応、センター長と二人でヤマシタさんを見舞いに行き、
そこで聞いたところでは…、

●その朝、ヤマシタさんは、目を覚ましたら急に激しい
 腹痛に苦しめられた…

●布団の上で、のた打ち回りながら激痛と闘うヤマシタさん…

●ただ事ではないと思い、床を這いずりながら電話機へ
 近づいていくヤマシタさん…

●やっとの思いで119番にダイヤルし、今の自分の状況を
 救急隊に説明し、住所を告げるヤマシタさん…

●電話で話しているうちに、ますます腹に激痛を覚え、
 苦痛で身がよじれ、顔が歪むヤマシタさん…

●実際にどれほどの時間が経っただろうか…、救急車の
 サイレンの音が聞こえ、救急隊員が部屋に駆け込んできて
 くれた時間が、とても長く感じたヤマシタさん…

●自ら救急車を呼び、そこに乗り込み、横になるヤマシタさんは、
 今日、会議があることを思い出した…

●今日の会議には出れないことを伝えようと、身を横たえ
 ながらも携帯電話を取り出すヤマシタさん…

●その様子を見て、不審に思う救急隊員に向かい、ヤマシタさんは
 弱々しく「今から言う番号に電話掛けてもらえませんか」と
 頼んだ…

●「そんな急用なんですか!?」と救急隊員は咎めるように
 言ったが、何とかヤマシタさんの意思を汲んでくれた…

●救急隊員がヤマシタさんの携帯を持ち、それをヤマシタさんの
 耳元にあてがってくれている…

●必死の思いで笹やんに話すヤマシタさん…

●しかし、そんなヤマシタさんの様子を見かねて、救急隊員は
 携帯を取り上げ、笹やんに事情を伝える…

そうしている間、救急車は病院へと向かい、無事、ヤマシタさんは
診察を受けることが出来た…、というわけです。

壮絶!

壮絶なシーンじゃないですか!

どんな会議だか知りませんが、救急車の中で、激痛に耐えながら、
必死で欠席することを伝えようとするヤマシタさんの姿…!

  そんなコト、病院で診てもらって、
  落ち着いてからでもよかったのに!

と、笹やんは言いましたが、ヤマシタさんと言う人は神経質な人
らしくて、一刻も早く欠席することを笹やんに伝えたかったみたい
です。

  ま…、そんなヤツもいたよ…。

そう言って、ベンチから腰をあげて庫内へ戻ろうとする笹やん。

アレ…?

ムラオさんのことは…?

ねえ…、ムラオさんは放っておいていいの?
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