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笹やん 肝試し

今日はバイト先の冷凍食品センターに、「ミスゼロ推進活動」と
言っているカイゼン活動のコンサル・イシダさんが視察に
来る日です。

イシダさんは、40半ばの、超ド派手な服装で現れる女性で、
香水の匂いをプンプン撒き散らしているので、ここのセンターの
社員である笹やんは、陰で彼女のことを“ニオイ”と呼んでます。

で…、

10時半ごろ、ちょっと休憩しようと言うことになり、事務所の
前の自販機近くで、笹やんが、どこで誰から仕入れてきたのか、
こんなコトを言いました。

  ニオイって、バツイチなんだってな!

それを聞いて、僕らバイトは、ふ~ん…、と言うように頷きました。

何となくそんな雰囲気があり、わかるような気がしたからです。

  高校生の女の子がいるらしい…、
  その下に、男の子が一人いるとか…

再び僕らは、ふ~ん…、と頷き合いました。

ま…、それぐらいの歳の子供が一人や二人いても不思議じゃ
ないよな…、って感じで互いに目を見合わせます。

  で、ニオイの元ダンナは商社マンらしくて
  結構な額の養育費を受け取ってるらしい!

って、なんでそんなコト、笹やんが知ってるの?!

僕らは、この辺りで笹やんの言うことに疑問を感じ出し、バイトの
一人が、

  笹○さん…、
  どこでそんなコト
  聞いたんスか?

と、ストレートに尋ねました。これに笹やんが、

  コサカ(センター長)が言ってた。
  先週、本社で打ち合わせがあって、
  その後、ニオイを含めて、コンサルの
  ヤツらと呑みに行ったそうで、
  そのときに、そんな話を聞いたそうだ。

と答えると、またしても僕らは、ふ~ん…、と頷き合うのでした。

  ニオイのヤツ、男に飢えているンだ!
  これはコサカもそう言ってた!
  どーも、そんな感じが前々からしてたが…、
  そーゆーことだったんだ!

笹やんは、タバコの煙を吐き出しつつ、そう言いましたが…。

だから何なの?どーするの?って感じで、僕らは、笹やんの
次の言葉を待ちました。

すると笹やん、妙な笑い方をして、

  コサカから冗談で、
  「オマエ、イシダさん、口説いてみろよ」
  なんて言われちゃったヨ

と言い、さらに、

  そーか、そーか…、
  ニオイのヤツ…、
  よしっ!
  今日、オレが一丁、
  声掛けてやるかっ!!

と、まんざらでもなさそうにハキハキした声で言い出しました。

マジかっ!?

僕らバイトは、そう思い、しばらく呆気にとられていると、

  あの分厚い化粧の下に隠された素顔を
  オレがこの目で確かめてやる!

そう言って笹やんは、宙を睨み据えました…。

40半ば、バツイチのイシダさん…、

60になるバツイチ…の噂もある笹やん…、

まぁ…、不釣合いではありませんが…。


  ソレって…、肝試しっスね!

ボソリと、バイトの一人が笹やんに向かって、そう言いました。

途端に僕らは吹き出しました。

肝試し…、確かに。。。


そして、午後2時ごろ…

カイゼン活動の成果をチェックするため、センター長を従え、
イシダさんがセンター内に姿を現しました。

何だか、これまでより髪の毛が赤っぽいと言うか、さらに
ドギツい感じがします。

大胆な花柄のシャツの上に、防寒服を羽織り、相変わらず
むせ返りそうな香水の匂い!

笹やんは、いつもと違い、さっきからイシダさんに好奇の
目線を送っているようです。

口元も緩み、ニタニタ笑ってます…。

  笹○さーん!
  先月、商品破損を減らすため、
  リフトマンに講習会をおこなうって
  言ってたけど、どうなりましたかーっ?

イシダさんに言われ、笹やんは一歩、彼女に近づき、

  え?
  それ、その…、その…、
  ハハハッ…
  そのぉ~

ニタニタ笑いながら、そんなコトを言ってます。

イシダさんは、表情を変えることなく、あくまでも冷静さを
強調するように、

  どうなりましたか?
  講習会、やったんですか?
  まだやってませんか?

と落ち着いた口調で聞き返してきました。

  それ…、それ、その…、
  リフトマンに…

言い掛ける笹やんに対して、ピシャリとした言い方で、

  やってないんですね!
  今月も破損が多いみたいですが、
  これでイイんですか?
  このままでイイんですか?

イシダさんは笹やんを睨むように見ています。

ところが、笹やんはニタニタしたまま。。。

  あの、あの…、
  ハハッ…、ハハハハッ

だらしなく笑い出す笹やんに、さすがに気味悪いとでも思ったのか、
イシダさんは、少し引き気味になって、

  ナニがおかしいんですか?

と、それでも落ち着いた口調で言い、さらに大きな声で、

  やりもしないコトを言うのは
  止めてください!
  できることだけを発表して
  ください!

と、笹やんを見据えて言い放ちました!

それでも、ニタニタしたままの笹やん。。。

今、笹やんの頭の中では、厚化粧を落としたイシダさんの顔が、
あーでもない、こーでもない…と思い浮かべているところなの
でしょうね…、たぶん。。。

そのうち、イシダさんはクルッと向きを変え、別の方へと
歩いて行ってしまいました。

いぶかしそうな目で笹やんを見ていたセンター長、慌てて
イシダさんの後をついて行きます。。。

  ハハハ…、
  やっぱり、男に飢えてるナ、
  あの目は…、
  マジで、どーやって口説くかなぁ…

まだ笹やんは、そんなコトを言ってます。

ホントに笹やん、肝試しをやる気なんですかねぇ…?  
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