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笹やん 舌好調

今日、バイト先で笹やんがパフォーマンスを
見せてくれました!

確か、午前9時頃だったと思います。

センター長が、50代の男性2名を連れて、庫内を
視察していました。

50代の男性は二人とも、なかなか品格のありそうな
感じで、センター長に何かを尋ねたり、説明を受けて
頷いたりしていました。

たぶん、この冷凍食品会社の重役さんか、取引先の
偉い人だろうなぁ…と、僕は思いました。


やがて、僕らが作業しているところへ近づいてきて、
作業の様子をジッと見ていました。

でも、特に何かを尋ねられたり、指摘されたりする
わけでもなく、10分もしないうちに去っていきました。

その間、笹やんも、センター長や二人の重役風が
気になっていた様子で、チラチラと彼らの顔色を
窺いつつ、フォークリフトを操っていました。


それから30分ほど過ぎた頃、再びセンター長が一人で
現れて、笹やんと僕ら、バイト3人にセンターの
入荷受付口まで来るように言いました。

行くと、そこには重役風の二人が立っていました。

笹やんと僕らバイトは、二人に向かって、無言で
会釈をして、彼らの前に立ちました。

センター長は、重役風の二人の横に並び、笹やんに
向って、こう言いました。

  笹○さん…、
  ミスゼロ推進運動の最近の成果について
  簡単に説明してください。

「ミスゼロ推進運動」とは、ここのセンターの様々な
作業上のミスをなくすための改善運動のことです。

センター長に言われ、笹やん、ちょっと当惑した
ようでしたが、キリッと表情を硬くして答えました。

  ハイッ!
  今月、ワタシの担当しているところでは
  出庫ミスが4件発生しています。
  でも、前の月は10件発生しており、
  これに比べると、今月は、ええ~…、
  まぁ、今日が26日でありますので、
  ええ~…、その、ほぼ今月も終わりに
  近く…、それなんで、出庫ミスは半分以下に
  留まっており、改善されていると思われます!


ふむふむ…、と言った感じで、重役風の二人は
頷きながら、笹やんの言うことを聞いていました。

センター長も、ま、いいだろ…。って感じで頷いて
いました。

すると、重役風の一人が、やわらかい笑みを作って
笹やんに尋ねました。

  ミスゼロ推進運動の目的…、
  わかっていますか?

この問いに対して笹やんは、

  ハイッ!
  センターの作業ミスをゼロにするため、
  作業手順や内容を改善していくことで
  アリマス!!

と、力強く答えました。

でも…、

アリマス!!って、何だか。。。

僕は、ちょっと可笑しくて、噴き出しそうになるのを
堪えてうつむきました。


  そうですね。
  で、アナタは作業ミスをゼロにするため、
  主にどういった点に注意して活動して
  いるのですか?

重役風に言われて、笹やん、ちょっと考え込みながら、

  まぁ、ええ~…、
  最終的には人の手による作業ですから…、
  まぁ、間違えやすい商品は注意するように、
  その都度、作業者に指示しています。

と答えると、

  ほかには?

と、重役風。

これに対して笹やん、ちょっとイラッとした表情で、

  口で注意するほかには、まぁ…、
  注意喚起のポスターを貼り付けたり…、
  ですねぇ。。。

と答えました。

うんうん…と頷き、さらに重役風が、

  アナタは、いつまでにミスを
  ゼロにするのですか?
  そういった計画は立ててますか?

と尋ねました。

これに対して笹やん、そろそろウンザリしてきた様子で、
それが顔に表れています。

  計画…?
  いいえ、特に立ててませんです。

そう答えると、重役風は、さらにやわらかく
わざとらしい笑みを浮かべ、

  じゃあ、計画を立ててみてください。

と言いました。

そこで笹やん、もうこれ以上、こんな会話してたら
自分が追い込まれるだけだと判断したのでしょう!

  そーゆー計画を立てるのは
  上の人間がやる仕事じゃないですか?
  ワタシら、現場を見ながら作業して
  いるんで、そんな余裕はないんですよ!

キッパリとした口調でそう言いました。

  なるほど…。
  この場合、上の人間と言うのは、
  誰のことですか?

あくまでも重役風は、やんわりとした口調で尋ねます。

この問いに、笹やんはチラッとセンター長を見て、

  そうですねぇ~…、それは~、
  やっぱりぃ…、
  やっぱり、ここのセンターで
  働いている以上、どーしても
  現場作業のウエイトが多くて、
  こーゆー場合、やっぱり、このぉ…、
  「ミスゼロ運動」のコンサルの人が
  立ててくれたらイイんじゃないかと…、
  そう思うんでアリマス。

と、何とか外部へ振ったものの、重役風が

  いや、でもね。
  この運動は自分たちでやって
  行かなきゃ意味がないんじゃないの?
  コンサルの方は、オブザーバーだからね。

やんわりと笹やんの意見を否定すると、笹やん、
あからさまにムッとした口調で、

  だいだい、こっちは
  そんなミスゼロ運動なんか
  やりたいと思ってるわけじゃ
  ないじゃんねぇ!
  

そう言うと、ここで明らかに周りの空気が変わってきました!

  じゃあ、このままミスが
  減らなくても構わないって
  コトなの?

重役風は、ちょっと怪訝な表情を浮かべて笹やんに
尋ねました。

センター長は緊張の面持ちで重役風と笹やんを見比べています。

  いやぁ、ミスは減らしたいですよ!
  減らしたいですけど、それをゼロに
  するためにアレコレ理屈っぽい話を
  聞かされて、アレをやれだとか、
  コレをやれとか言われたくないじゃんねぇ!
  こっちだって現場でやることは
  多いんだから、正直そんなのに構って
  られないじゃんねぇ!

アリマスの次は「じゃんねぇ」かよ…と思いながら、
僕らバイトは、この後の展開に期待しながら、
やりとりを眺めていました。

さらに笹やんの主張は続きます。

  現場のことも知らないくせに、
  ミスをなくすためアレやれ
  コレやれって言われても…。
  で、うまく行かないとやり方が
  間違っているとか、どうしたら
  うまく行くか、もう一度考えて
  みろとか、結局、マル投げじゃんねぇ!

この辺でセンター長の顔がみるみる変わってきました。
目がウルウルして涙目になり、

  も、もう…ダメだぁ~!

って感じです。

そんなことも構わず、笹やんは続けて言い放ちます。

  自分でやってみりゃイイんですよ!
  口で言うほど物事は簡単にできるわけ
  ないんだから!
  頭で思ってることと現実は一緒に
  ならないっつーのに、そこんトコが
  まるでわかってないじゃんねぇ!
  だいだいミスがゼロになるわけが
  ないんですから!
  だって人がやることですよぉ!
  ゼロになるわけないじゃんねぇ!  


二人の重役風も、これ以上、何も言うことはない!
と言った感じで、無言のまま笹やんを見つめて
聞いているだけです。


  コンサルの仕事のために、ワタシらは
  ミスゼロ運動とか言って、ワケのわからない
  ことばかりやらさせて、それで余分な仕事が
  増えているんですから!
  それが原因でミスにつながるってコトも
  あるんですよ!

と、笹やん、コンサルに対する日頃の恨みを言い、
仕舞いにはミスの原因をコンサルになすりつけるような
言い方。。。


さ、笹やん…、舌好調って感じなんだけど、
さすがにそこまで言っちゃマズいんじゃないの~?
偉い人たちや、センター長の前でさぁ…。

そう思って、ちょっとハラハラしながらセンター長を見ると、
センター長はガックリ肩を落とし、うつむいたまま。。。


  ま、せっかく始めたんだから、
  もっと大きな成果が得られるよう、
  この活動は進めていってください。

重っ苦しい空気の中、そう静かに言って
重役風は去っていきました。

そして、その後をセンター長は、重々しい足取りで
ついて行きました。

とりあえず、その場はお開きとなり、再び僕らは作業に
戻りましたが、30分ほど経ってから、センター長が

  笹○───っ!

笹やんを呼びながら、僕らの作業場へ向かってきました。

笹やん、何食わぬ顔でセンター長の方へトコトコと
歩いていきます。

  笹○! オメー!
  副社長と専務に向かって、
  あんなコト言うなよっ!

センター長が大声で言いました。

そうです。

先ほどの重役風は、この冷凍食品会社の副社長と専務だったようで、
日曜日ではありますが、わざわざ「ミスゼロ推進運動」の
活動状況や成果を確認するためにやって来たのでした。

どうやら笹やんは、彼ら二人が、自分が勤める会社の
副社長と専務であったことを知らなかったみたいです。

  オメー、あの二人を誰だと
  思っとったんだ!?

センター長に言われ、笹やん、やや狼狽気味に、

  えっ!?
  いや、あの…、
  コンサルの上司の人かと…。

とか言って、頭を掻いていました。


  オレが二人に気を遣って
  ペコペコしながら説明したりしてたのに、
  なんで、そーゆー空気が読めんのだ!
  オメーは!
  なりふり構わず言いたいコト
  言いやがって!


  こ、こほぉ…、
  こ…、こほわっ!

センター長に卍固めを掛けられ悶絶する笹やん…。

その後、しばらく肩をさすっていた笹やん。

60を迎えようとする年齢には、センター長の怒りの卍固めが
骨身にしみたようです。。。
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