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怪傑スダ ~地獄の臨時便~

お昼、12時頃・・

バイト先の冷凍食品センターに、得意先であるテナント惣菜店から電話が
入ったみたいで・・

そのテナント惣菜店は、S市のショッピングセンター内の店舗、61号店で、
このショッピングセンターの近所の町内会婦人部が、懇親会を開催するに
当たり、メキシカンピラフとグリルチキン、サーモンムース各30食を今日の
4時までに納品して欲しいと言う内容のようで・・

本来でしたら、今日の配送便に積み込んで納品するはずでしたが、61号店の
店長が、うっかりして発注し忘れてしまったみたいで。。。

  どうしよう…
  スダくん…

庫内の作業場にやって来たセンター長が、すがるような目つきでスダさんを
見ながら言いました。

テナント惣菜店はスダさんの担当で、中でも61号店は販売力のある店舗です。

このセンターにとって、優良得意先でもあり、何とかして応えてあげたいと言う
気持はセンター長にもあるのですが・・

ここから50㎞離れた所にあり、順調に行けても1時間半は掛かります。

  とりあえず商品を出庫しましょう。
  センター長は臨時便の手配を
  してもらえますか?

落ち着いた口調でスダさんが言い、僕らに目配せして商品を出庫するように
指示します。

と、その時・・

  臨時便なんて、外部に
  委託せんでもエエわ!

キヤマ課長がやってきて、センター長に言いました。

さらに、

  4時までに納品すればいいのなら、ウチの
  ドライバーが早いヤツで2時には戻ってくるから・・
  61号店ならイセキューの配達先で、アイツも
  2時前には戻ってくるはずだから、アイツに
  行かせたるわ!

女とは思えないぶっきらぼうな口調で言うキヤマ課長・・

このセンターのドライバーたちからは、

  鬼キヤマ!

  泣く子も黙る鬼女!

などと恐れられているのです。。。

でも、頼り甲斐はあります。

センター長もホッとした顔つきになり、事務所へ戻っていきました。

が…

ここで思わぬピンチが…

メキシカンピラフが13食不足しているのです!

  こんな時に限って…!

  何で!?

  いつも100食ぐらい在庫があるのに…

テナント惣菜店のほか、地元のスーパーにも納品されており、たまたま
そこの発注量が多かったらしいです。

再び慌てふためいた顔で作業場にやって来たセンター長・・

  どうしよう…
  スダくん…

それでもスダさんは冷静な口調で、

  ここから一番近いKセンターへ連絡して、
  13食分けてもらおう。
  それぐらいの数なら分けてくれるでしょう。
  今からここを出れば2時には戻って来られる。

そう言い、スダさんの右腕であるヤマシタさんに向かって、

  ヤマシタ、事務所に行って商品移動の
  手配を頼む!

と、指示しました。

Kセンターへは、空いている冷凍ワゴン車でスダさんが行くことに・・

再びホッとした顔つきで、瞳を輝かせるセンター長。。。

そして、2時少し前にはスダさんがKセンターから戻り、ほぼ同時に
何も知らないイセキューも澄ました顔で戻ってきました。

そんなイセキューに、

  おかえり、イセキュー!
  悪いけど、もう一度、61号店まで
  配達に行ってきてくれ!

何のためらいもなく、ハキハキとした口調で言うキヤマ課長。。

  はぁぁーーーーーーーーーーーっ!?
   なんでぇーーーーーーーーーーーっ!?

めちゃくちゃ大きくて、よく通る地声で反応するイセキュー。。。

  61号店の店長が発注を忘れたらしい・・
  そっちに商品は出とるで、早よ積んで
  配達してこい!

淡々と言うキヤマ課長に対し、

  はぁぁーーーーーーーーーーーっ!?
  そんなこと知らんよぉーーーーーーーっ!
  発注し忘れたンなら、向こうから取りに
  来させればイイがねーーーーーーーっ!

早速、興奮したのか、マックスボリュームで吠えるイセキュー。。

  そんなこと得意先に言えるか、アホッ!
  さっさと行ってこい!

まるで奴隷を扱うような口ぶりのキヤマ課長。。

  ムリ、ムリぃーーーーーーーっ!
  ほかに誰かおらんのーーーーーーーっ?

  オメーしかおらんやろ!
  ほかのヤツに行かせて道に迷ったら
  却って面倒やろ!

  もーーーーーーーっ!
  勘弁してぇぇーーーーーーーっ!

  ウダウダ言ってねーで、
  早よ行けっつーの!

  地獄やぁぁーーーーーーーっ!
  マジ、地獄やぁぁーーーーーーーっ!!

イセキューのデカすぎる大声に、さすがのキヤマ課長も顔をしかめて・・

  ほんならもうエエわ!
  もうオメーには頼まん!
  もう明日から会社来るな!

そんなことを、サラリと言ったのです…。

イセキューは、口を歪めて開けたまま、しばらく茫然と固まってました。

一般には、こうした状況をパワハラと言うのですが、ここでは、そんな概念が
存在しないみたいで…

と、ここでスダさんが口を開きました。
 
  イセキュー・・
  61号店の店長には借りがあるだろ?
  発注を忘れた店長自身、心苦しく
  思っているはずだ。
  そこへ快く臨時配達してあげれば、きっと
  感謝してもらえるだろう。
  借りを返すチャンスだと思って行って
  やってくれ!

このスダさんの言葉の意味が、僕にはわからなかったのですが、後で
聞いたところによりますと・・

3日前、イセキューは61号店の配達時に、バックヤードの壁に立て掛けてあった
季節の惣菜画像がプリントされているアクリル製ボードにカゴ車をぶつけて、
割ってしまったそうで…

売場の主任からセンター長に、「弁償して欲しい」との連絡が入りました。

しかし、その後で店長から電話があって、

  あんな所に置いた、こちらにも落ち度があった。
  これからは、お互い気をつけるようにしましょう。

と言ってくださり、弁償は免れたそうです。

本来ならば、惣菜店の備品を破損させたわけですから、相応の償いをする
べきですが、店長の計らいで事なきを得たのでした。

その借りを返すチャンスだと、スダさんは言ったのです。

その言葉で、イセキューは渋々、ワゴン車に乗って61号店へ向かうことに・・

怪傑スダの機転の利いた説得によって、優良得意先の要望に見事応える
ことが出来ました!

そして、イセキューはセンターに戻ってくるなり、再び往復3時間を掛けての
配達をさせられたのでした。。。
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