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笹やん 綱渡り

バイト先の冷凍食品センターで、17日の水曜日からスタート
した新規得意先への商品出庫、仕分け作業。

僕は今日が初めての作業になり、馴染みのない商品ばかりで、
アタフタしてました。。。

このエリアに、まだ4店舗だけですが、高級志向のビアホール
だそうで…

聞いたところですと、ビールの鮮度とか品質やらにこだわって
温度や泡のキメにまで神経を使って客に提供するとか…

で…、おつまみも枝豆とかフライドポテトなどの庶民レベルな
アイテムも一応、用意しているそうですが…

黒毛和牛のローストビーフやら三元豚のアイスバイン、さらに
豊後赤鶏のローストレッグ等々。。。

中でもクセモノは…

骨付きラム肉のロースト…

ロブスターの蒸し焼き…

特に、この骨付きラム肉とロブスター(丸特)の2品は、あまり
注文が入らず、不定期で大量受注することがあり、欠品になる
恐れがあるとのことです。

尚…

このビアホールへ納品するに当たり、もしも欠品が発生した場合、
その商品の売上額に相当する金額をペナルティーとして請求
されてしまうとの取り決めがあるそうで…

さっそく初日から、骨付きラム肉を欠品させ、ペナルティーの
対象になっちゃったらしいです。。。

  この得意先ってさぁ、そもそも
  笹やんが担当すること自体、
  ムリがあるんじゃね?

作業しながら、若手バイトたちが、ささやき合っています。

  何で他の社員さんに
  任せられなかったの?


  さあ…?
  笹やんチームはバイトの頭数が
  ダントツに多いからじゃね?


  それだけで決めンなよ!
  おかげでハチャメチャだろ!


  オレに言ったって知るか!
  笹やんに言ってこい!


  でもさぁ、笹やん
  よく引き受けたよなぁ…。


  いつものコトだよ。
  適当に引き受けて、後で
  文句言うパターンじゃね?


  だよね~

この若手バイトたちの会話に、僕は、うん、うん!と腹の中で
納得しているのでした…。

ま…、幸いなことに、このビアホールへの納品は毎日ではなく、
月・木・土曜日の週3日納品なので、既存の得意先への仕分け
作業に大きく影響するわけじゃない…って思われてるようで…

それにしてもなぁ~

月・木・土曜日の納品ってコトは、出庫や仕分けなどの作業が
それぞれの前日になるわけで、僕が出勤する日曜日にも、こう
して面倒な作業が増えてしまったのです。。。

  おーい!
  笹や~ん!

少し離れた仕分け作業場から、熟年女子バイトが笹やんを
呼んでいます。

笹やんは、フォークリフトを操って商品出庫に大忙しです。

  おーい!
  笹や~ん!

再び大声で笹やんを呼ぶ熟年女子バイト。

  何や?
  今、忙しいから呼ぶな!

ちょっとイラついた感のある声を出す笹やん。

  用があるで呼んどるンだろ!
  追加の鶏肉、早よ持って来んかっ!
  仕分けが終わってまうゾ!

男顔負けの威勢の良さで、社員である笹やんを怒鳴りつける
熟年女子バイト…、まさに逆転現象です。。。

  もうちょっと待っとれ!
  今、それどこじゃねーんだ!


  何が「それどこ」や!
  さっきまでタバコ吸いに
  出て行ってたくせに!


  うるせーな!
  エエやろ、少しぐらい!
  すぐに出してくるから待っとれ!


  早よしろ!早よ!


  うるせーな!

みんな、まだ慣れない商品の出庫、仕分けでイライラ、
ピリピリしているみたいです。

で…

みんな、バタバタしながらも、何とか納品する商品を全て
仕分け終えてホッと一息。。。

こうして商品を見ると、決してアイテム数が多いわけじゃ
ありませんが…

このセンターでは不定貫商品と呼んでいますが、例えば
1キロ入りとか、300グラム入りなど、一定の規格ではなく
黒毛和牛モモ2.7キロ、3.1キロ、3.5キロ…と言った感じで
同じ商品でも重量がバラバラなので、出庫指示票と仕分票と
照合させるのが手間であったり、仕分け作業上のミスを誘発
したり…

そんな面倒な商品が多いみたいです。

このほかにも冷凍調理ソースの種類が、やたら細かくて、
しかも聞き慣れない名前ばかりで、これもバタバタさせる
原因のひとつです。。。

例えばですね~…

ペシャメルやらジェノバやら…

ポマローラだのヴェルデェだの…

ベアルネーズだかヴァンフランだか、はたまたブルブランとか…

  知るかっ、バカ!
  日本語で言え!日本語で!!
  エラそうにっ!!

って感じになってきます。。。

  どんだけ種類が多いんや!
  っつーか、ホンマにこれだけ必要なん?


  嫌がらせとしか思えんぞっ!

他のバイトたちも半ばキレかかってボヤいてます。。。

午後3時半…

僕らは、笹やんを囲んで、缶コーヒーを飲みながら休憩中。

  笹やんさん、このままじゃ
  マズいっスよ!
  みんな、カリカリしてますよ!

若手バイトのスダさんが、勢いよく笹やんに言いました。

笹やんチームはバイト数が、他チームより圧倒的に多いとは言え、
その分、得意先軒数も多く、物量も多いわけで…

その上に、こうした高級志向だか何だか知らんですが、面倒な
商品を出庫、仕分けさせる得意先が加わると…

  ねえ、笹やんさん!
  コレって綱渡りですよ!

と、スダさんが言います。

  ただでさえオレたちの作業、
  ボリューム多いのに、こんな
  分かりにくくて、不安定な
  商品ばっかのビアホールなんて、
  止めた方がイイですって!
  結局、欠品させてペナルティ取られ
  ちゃうわけでしょ?
  コレって、マジ、綱渡りですって!
  危ないところにいて、不安定で、
  ヘタすれば落っこちちゃう!
  こんなのやってられないッスよ!

スダさんとしては、間違えやすい商品や欠品しやすい商品が多く、
不安定な状態で作業していかなければならない状態のことを
「綱渡り」と表現したわけです。

これを聞いて、笹やんは鼻の穴からタバコの煙を吐きながら、

  まあなぁ…
  しかしなぁ…
  初めはオレが担当する予定じゃ
  なかったんだよなぁ…

静かな口調で言ったのです。

  へ?
  そうなんスか?
  じゃあ、誰が担当の予定だったんスか?

スダさんが尋ねると、笹やんは煙たそうな目つきでタバコを
加えたまま、

  当初はタカハシの予定だったんだよなぁ…

と言いました。

うん、うん…

ここで僕は腹の中で頷いたのでした。

タカハシさんは、とても大人しくて真面目な性格の若手社員で、
彼だったら、こんな面倒な商品でも上手くやって行けるだろうと
思いました。

  けどなぁ…
  アイツ、今、リフトの専任だろ?
  だからコサカのヤツが、オレに
  振ってきやがったわけヨ…。

笹やんがそう言いました。

つまり、タカハシさんは現在、商品の入出庫業務専門のリフト
マンとして勤務しており、とても得意先への仕分け業務には
手が回らないと言うわけです。

それでコサカ…ってのは、センター長のことですが、笹やんに
担当させてしまったようで。。。

やはり、これは笹やんチームのバイト人数の多さだけに着目
した選任でしょうね。

笹やん以外の社員ですと、ぶっちゃけ余裕がない!

少し話が反れますけど…

以前、センター長が言っていたことを思い出しました。

それは…

  ここの社員の中で、唯一
  まともなのはタカハシだけだ!

ってコトです。。。

センター長自身、タカハシさんには一目置いてますし、最も
信頼していることは事実です。

そんなタカハシさんに任せたくても、任せることが出来ない!

それで仕方なく、ほぼ信頼されていない笹やんに…

そう考えると、センター長もまた「綱渡り」しながら日々、
このセンターを取り仕切っているわけで…

うん、うん…、僕は腹の中で頷きつつ、笑いを堪えるのでした…。
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