________________________________________________________________________

笹やん 胸騒ぎ

今朝、バイト先の冷凍食品センターへ行ってみると、笹やんの
姿が見えず、周りのバイトたちに聞いても、誰も知らないとの
ことでした。

センター長が、何度か笹やんへ電話したそうですが…

  あの野郎!
  ゼンゼン出んなー!

イライラした口調でボヤいていたそうで。。。

いつもなら笹やんは、毎朝6時には出勤することになっています。
それが8時を過ぎても姿を見せない…

電話も通じない…

  笹やん…
  何かあったンちゃうか?


  ここへ来る途中、事故ったとか?


  いや、笹やん独り身だから、
  ひょっとして布団の中で
  死んでるンとちゃうか?


  心筋梗塞とか、脳溢血とか?

と、まぁ…、若手バイトたちは言いたい放題。。。

しかし、その可能性もなくはないワケで、僕らはセンター長の
指示に従い、作業しながらも妙な胸騒ぎがしていました。

普段は笹やんに対して、毒舌を吐きまくっている中年女子たちも

  やっぱり、男の独り暮らしだからさぁ、
  食べ物とか、あまり気を遣ってないん
  じゃないの?


  そうやねぇ…、
  自分で作って食べるような
  タイプやなさそうやしねぇ…。


  実はウチの近所で、半月ほど
  前のことやったけど、独り暮らしの
  男の人、脳梗塞か何かで亡くなって
  たんやわぁ…
  その人、まだ50ちょっとヨ!
  亡くなって三日後に発見されたんやけど、
  かわいそうやわぁ…

って、笹やんを心配しているというより、死んだと決めつけてる
ような…。

それから30分後…

作業場に、再びセンター長がやってきました。それも何だか
険しい表情で現れたものですから、思わず僕らは息をのみました。

  まさか、笹やん…!


  いったい何があったんや!?

そんな思いを抱きながら、僕らバイトはセンター長を凝視しました。

センター長は、重々しく口を開き、こう言いました。

  今朝から何度電話してみても
  笹○と連絡が取れん…
  そこで、ハヤカワ…

ここでセンター長は、バイトのハヤカワさんを、ジッと見ました。

見つめられたハヤカワさんは、恥ずかしそうな顔つきになり、
モジモジし始めました。。。

  おまえ、笹○の住んでるところ
  知ってるよな?
  ここから自転車で20分ぐらいだから、
  ちょっと行って様子見て来い。

センター長は、さらに続けます。

  今のところ、笹○と連絡は取れないが、
  警察や病院からも連絡がないので、
  笹○の身に何かあったわけではないと
  思うが…。

そうなのです。

今、ここにいる者たちは、ほぼ全員、笹やんが事故ったか、
急病になったと思っているのでした。。。

  え…?
  僕が、ひとりで…、ですか?

4、5秒ほど間があって、ハヤカワさんがセンター長に尋ねました。

  ・・・・・・・・・

センター長は、しばし無言で、しげしげとハヤカワさんを
見つめると、

  ひとり行けば充分やろ?
  こんなコトで何人も行かんでもエエやろ?
  みんな作業がある。
  おまえだけで見て来いや。

平然とした口調で言いました。

が…

こんなコト…って、どんなコト?

笹やんの生死にかかわるコトかも知れないのに…?

それでも作業優先ってコト?

バイトたちの胸に、そんな疑惑がどんよりと流れていくのでした。。。

  あの…、
  笹○さんのところへ行って…
  僕…、どうすればいいですか?

ハヤカワさんは、またセンター長に尋ねました。

  ・・・・・・・・・

センター長は、しばし無言で、しげしげとハヤカワさんを
見つめると、

  インターフォンを鳴らすなり、
  玄関のドアを叩くなり、とにかく
  部屋の中にいるかどうか確かめろ!
  返事がないようなら、マンションだか
  アパートだか知らんが、管理人にワケを話して
  鍵を開けてもらえ!

ややイラついたような口調で言いました。

  どんなワケ…、話せばいいですか?

おどおどした様子でハヤカワさんが尋ねます。

  ・・・・・・・・・

もう一度、センター長は、しばし無言で、しげしげとハヤカワさんを
見つめると、

  それくらい自分で考えろよ、おまえ!
  笹○の勤務先の者ですが、出勤して来ず、
  連絡が取れないので、心配になって様子を
  見に来ましたとか、それくらい言えるやろ!

完全にイラついた口調で言いました。

  でも、あの…
  管理人って、そこにちゃんと
  いるんですかねぇ?

と、ハヤカワさんが尋ねると、

  知るかっ!
  もう、早よ行けよ!

イライラするセンター長。。。

  とにかく行けって!
  あいつのところに着いたら
  オレに電話しろ!
  オレのケータイ番号知っとるやろ?


  ・・・はい、知ってます。


  よし、ほんなら行ってこい!


  ・・・はい

と、返事しながらも、もじもじしているハヤカワさん。。。

  行けって!
  行けっつーの!
  なぁ?
  早よ行けっ!

そんなハヤカワさんに怒声を浴びせるセンター長。

このハヤカワさんと言う人は、つぶらな目で大人しげな
憎めない人なんですが、やることがノロいので、みんなを
イライラさせてしまうのです。

しかし、今のハヤカワさんは別に悪いコトしたわけじゃなし、
何でセンター長に怒鳴られているんでしょう?

そうこうしているうち…

  ども、どーもスイマセン…

そう言いながら、作業場に向かって、小走りに走り寄ってくる男…

笹やんです!

  笹やん!

彼の姿を確認し、何人かが思わず彼の愛称を口にしたのでした。

  何や、おまえ…
  今まで何しとったんや?
  電話しても出えへんし!

センター長のイライラは、笹やんに向けられました。

  ども、ども…
  その…
  スミマセーン
  遅刻しちゃって…

センター長に、ペコペコと頭を下げる笹やん。

  電話ぐらい出ろよっ!
  何があったかと心配するやろ!


  スンマセン、
  ども…、スンマセーン

春眠暁を覚えず…って言いますし、笹やんは寝坊して3時間程、
遅刻しただけのことでしたが…

そんな笹やんの姿を見て、安心したのか、日頃、笹やんと
口喧嘩することが多い中年女子バイトのひとりが、笹やんの
両肩を軽く抱くようにしている姿が、めっちゃ画になって
ました☆

そして…

何もしていないのに、センター長から散々怒声を浴びた
ハヤカワさんって…、何だったんでしょう?
にほんブログ村 オヤジ日記ブログへ
にほんブログ村




nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

トラックバックの受付は締め切りました