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笹やん 大逆襲

これから年末年始に向かって、本格的に忙しくなる
ここ冷凍食品の物流センター。

そんな繁忙期に備えて、ミスや事故のないように、事前に
ここで働く社員やバイトの意識を高めておこう言うわけで、
今日の午後から、例の「ミスゼロ推進運動」コンサル、
イシダさんがやってきました。

イシダさん、今日は目の覚めるような極めてドギツイ
濃厚なピンクのブレザーに黒皮のパンツ姿。

2、3時間掛けたんじゃないかと思われるほどの厚化粧に
コレまた濃厚な香水の匂い。。。


これを迎え撃つ、我らが笹やん。

早くも笹やん、キリッと険しい目つきでイシダさんを遠くから
睨んでいます。

笹やんは、イシダさんのことを、陰で“ニオイ”と呼んでます。

僕も、もう何度か彼女を見てきましたが、

  この人って、もう50近い歳だろうと
  思うんだけど…、
  どんな私生活送ってるんだろ…?

どうでもいいコトですけど、そんなことを思うようになって
きました。


さぁ、イシダさんがセンター長を横に従え、笹やんの方へ
近づいてきます!

彼女の顔からは何も読み取れません。
無表情で一歩一歩、確実に笹やんの方に向かってきます。

その横で、うつむき気味に歩いてくるセンター長、
彼もまた無表情…、って言うかほとんど何も考えていない
顔つきとも受け取れます。。。

一方の笹やん…、

愛用のフォークリフトに乗ったまま、身動きひとつせず、
その姿勢は固まったまま、彼方から来るイシダさんと
センター長を見つめています。

そして、その顔つきは…、

笑っています!
ニヤ~~~っとした薄ら笑い。。。

不敵な笑みとも取れますが、ヤバいな…、何だろ?…的な
薄ら笑いと見ました!


そして…!

対面する笹やんとイシダさん、それにセンター長。

まずイシダさんが口を開きました。

  先月の棚卸で冷凍ヒラメが3ケース不足、
  冷凍サーモンが2ケース不足と、
  同じゾーンの冷凍庫に置かれている
  商品の在庫が不足しています。
  ほかにも、ここの商品の在庫が
  狂っているみたいですけど、
  これ、どう言うことですか?

台帳を笹やんに示しながら尋ねました。

どう言うことって聞かれてもなぁ…、みたいな顔で戸惑って
いる笹やんへ、今度はセンター長が言いました。

  あそこは外見が同じような
  ケースばかり並んでいるし、
  しかも高額商品が多いから、
  棚卸の時は2グループで
  重点的にしっかり在庫を確認しろと
  毎回言っとるにも拘わらず、
  オマエ、どーせまたイイ加減に
  棚卸したんだろ!?
  今からもう一度在庫を確認して来い!

すると笹やん、ちょっとムキになったような感じで、

  いや、棚卸はちゃんとやりましたよ!
  毎回ちゃんとやってます!
  けど、あそこは出荷先が多い
  商品ばかりだし、出し入れも多くて、
  その分、破損とかも多いし、
  破損記録を書けとバイトに指導してるんですが、
  書かないヤツもいるし、
  とにかくいろんなヤツが出庫しているし、
  10月からアイテムが増えて来るし、
  納まりきらないし、
  ヘンな場所に置いとくヤツいるし、
  どこにどの商品があるかすぐ分からんようになるし…、

何とかカントカだし…、を連発し、よく分からない言訳を
する笹やんを制して、

  だから毎日、きちんと整理整頓する
  ように言っとるだろ!
  オマエの管理担当ゾーンだぞ!
  そーゆー事情のゾーンだからこそ
  毎日注意しておけと言っとるにも
  拘わらず、バイト任せにしとるから、
  こうなるんだ!

と、センター長が言いました。
これに対して笹やん、かなりムキになって、

  バイト任せにはしてません!
  その日その日、何人かのバイトに
  整理整頓させて、何か変わったコト
  ないかどうか、ちゃんとチェック
  させてます!

そう言いますと、センター長も少し声を荒げて言ってきました。

  だから、そーゆーのがバイト任せと
  言っとるんだ!
  オレがオマエに何回も、あそこは
  自分の目でチェックするように
  注意しろと言っとるにも拘わらず…、
  オマエ、何聞いとるんだ、もうっ!
  昨日も言ったろ?
  アイテム増えてきたから、
  整理整頓をこまめにやっとけって…、
  オレがそう言ったにも拘わらず、
  オマエ、全然、動いてないから…

センター長の、・・・・にも拘わらず攻撃を立て続けに受け、
窮する笹やん。。。

そこへ、

  ちょっと待って!
  そのゾーンって、そんなに
  ゴチャゴチャしてるところなの?
  だったら、まず本格的に
  整理整頓しなけりゃ
  始まらないんじゃないの?
  どんなところなのか、ちょっと見せて。

と、イシダさんが割り込んできました。

するとセンター長、興奮気味にしゃべっていたのを抑え、
笹やんに向かって、

  ちょっとイシダさん連れて、見てもらえ…。
  ついでに整理する方法を指導してもらえ…。
  バイト二人ぐらい連れて整理の仕方
  覚えさせろ。

と、言いました。

はい…、ボソッと返事をして笹やん、僕とヤノさんと言う
バイトの人に目をやり、一緒に来るように言いました。


その問題のゾーンというのは、魚介類の冷凍品ばかり
収納してあるゾーンで、常にマイナス30~40℃の超極寒ゾーン!

冷凍地獄です!!

そこには冷凍マグロを保管してある別室もあり、そこは
マイナス60℃に保たれているとか。。。

僕も、そこで冷凍のヒラメやら真鯛やらを出庫することが
あるので、よく知っているんですが、3分も居れば、
身体の節々がズキズキしてくるような寒さです!

はっきり言って、そんなところで悠長に整理整頓なんて
してたら命に関わってきます!

偶然、笹やんも僕もヤノさんも、先ほどまでそのゾーンで
商品を出庫していたので、防寒コートを羽織っていましたが、
何も知らないイシダさんは、超濃厚ピンクの無防備、ド派手な
ブレザー姿。。。


ま…、大して時間は掛からないだろうと思ったのか、笹やんは
そのままイシダさんを伴って、冷凍地獄ゾーンへ。。。

僕らも後に続いていきました。


  わぁ~!
  ホントにゴチャゴチャした
  感じね~…、
  これは、収納棚をもう少し
  細分化するとか、何かしないと
  ダメね…。

そのゾーン内で、イシダさんが一通りぐるりと見回りながら
言いました。

この商品は何?などと笹やんに尋ね、それに答える笹やん。

もうそろそろ、5分は経ったんじゃないかと思います。

防寒コートを羽織っている僕らでも身体がガチガチに
固まりつつある中、既にイシダさん、本人が気づかぬまま、
足、腰、肩がガクガク震えています。。。

しかも、目が充血してきて、もの凄い形相に。。。

  オニババ…。

そんな単語が、僕の頭の中に浮かんできました。

  コレ、まず…、
  どの商品が1週間あたりに
  どれだけ出庫されるかを
  確認して、その数量に応じて、
  収納棚のスペースを商品別に分けて
  整理した方がイイんじゃない?

顎をカタカタ言わせながらイシダさんが、笹やんに説明しています。

  いやぁ、そう言いますが、
  その時々で出庫量もバラつきがある
  商品が結構あるんで…、
  アイテムも月々増えたり減ったりだし…。

そんなことを言いながら笹やん、崩れかけている商品を
手で直しています。

  それは仕方ないでしょ。
  とにかく商品別に収納スペースを
  作らないと管理しづらいでしょ?

  いやぁ、そう上手く行かないですよ、
  実際は…。

  ちょっと、そんな気持ちじゃダメでしょ。
  あなた管理する立場なんだから…。

  管理する立場だからこそ分かるんです。
  こーゆーのは無理だってコト。

  じゃ、どーゆーのがイイのか
  考えてみてください!

  今すぐ、どうこうって
  わけには…。

  でも、このゾーン内で納めなくちゃ
  仕方がないんでしょ?
  だったら整理整頓から始めなくちゃ…。

  いやぁ、それは分かってるんですが、
  でもなぁ…。

  とにかく、できることから始めましょ。
  ね、そろそろ出ない?

  しかしなぁ、年末に近づくと、
  アイテムもさらに増えるから、
  今、整理整頓って言われたってなぁ…。

  増えるアイテムがどれくらいなのか、
  それは事前にわかるでしょ?
  それはそれで、うまく対応して
  いくしかないでしょ。
  ああ…寒っ!
  もう出よ!

  事前ったって、前日の時もあるんですよっ!
  急なんですから、ったく!
  そんなんじゃ、こっちは対応できないって!

  まあまあ…、
  それは取引先や社内で確認して
  もらうとか…、もうダメ!
  出よ出よ!

  社内で確認してもらうったって…、
  誰がやるんですか?!

  知らないわよ、そんなの!
  それ、センター長と相談して!

  センター長だって困ると
  思うんだけどなぁ…、
  そんなこと言われたら。。。

この辺りになると僕らも分かってきました。。。

そう!

笹やんは、わざと話を長引かせているんです。

イシダさんをこの冷凍地獄に少しでも長く居させるために。。。

イシダさん、背中を丸め、肩をすぼめ、足をモゾモゾさせ、
目を真っ赤に充血させ、顎をカッタカタいわせ、

  あたしからもセンター長に言っておくから…、
  その先の話はここ出てからにしましょ。

と言っているにも拘わらず…、

  もっとほかにイイ方法
  ないンすかぁ?

執拗にネバる笹やん。

彼だって、この寒さは相当堪えているはずです。。。


  ああ─────ッ!
  も────ダメ!!
  寒いっ!!

ついに耐え切れなくなり、イシダさん、勢いよく飛び出して
いきました!

そしてトイレへまっしぐら!

寒さのせいで、オシッコしたくなって、ずっと
耐えてたんでしょうか…?


これまで何度か、イシダさんから攻撃…、と言うか口撃されて
きた笹やん。

今回、ちょっとした逆襲を果たしたって感じです。

ウン!今回は笹やんの勝ちだな!
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