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だって…ひろ子は寂しかったの

その女の名前は、ひろ子と言います。

39歳。独身。

現在は無職。


ひろ子は、今朝も遅くまでベッドの中にいた。
別に誰からも咎められることはないし、早く起きても、
やらなければいけないことは何もなかった。

もう、どれくらいこんな生活をしているだろう…、

親しく語り合う相手もいない、
胸をときめかせ、夢中になれる事もない、
誰かを喜ばせてあげたい、
そして、誰かから優しくしてもらいたい、
互いに、ありがとう…と心から言い合える、
そんな、ぬくもりに溢れた付き合いも…、

今のひろ子には、何一つ、ない。

あるのは怠惰に流れていく時間だけ…。

まどろっこしくて、湿った感じのする時間の中に
一人、ひろ子は閉じこもっているのだった。


  今から死にます


真新しい便箋に、そう書くと、ひろ子は
ちょっとだけ胸が高鳴るような気がした。

でも、それはすぐ消え去り、また元通りの
どんより湿った感じ…。

ひろ子は、自分で書いた文字を見つめる。

決して上手とは言えない字だけど、まぁ、丁寧に
書いたのだから…と、その1枚の便箋を指先で
つまみ、電話機の前に立った。

これをFAXで送信しようと言うのだ。

宛先は、県警本部。


1回目…。

FAX送信終了。

2回目も…、

問題なく終了。

もう一度…と、同じ宛先へ3回目の送信を試みようと
ボタンをプッシュしていると、

バタン!!

乱暴な音がした。

玄関のドアが開けられたみたいだ。

続いて、ドカドカと大きな足音が…。
一人だけじゃない。

ふたり…? それとも…。


  オメェ―か?
  このアマ!!

制服姿の警察官を従えた、私服の警察官が怒鳴った。


  あ…

ひろ子は、何が何だかわからず、茫然として小さく叫んだ。

私服の警察官は、40半ばくらいで、ずんぐりとした体格。
髭が濃くて、眉毛がとても太い。

その彼が、便箋に書かれいている文字を読み取り、
ひろ子の右腕をがっしりと掴んで、こう言った。

  コレ、また県警本部へFAXしたんか?
  何でこんなコトするの?

問われ、ひろ子はうつむいて、

  だって…

としか答えなかった。

  こんなコトしてどうすんの?
  ええっ!?
  どーゆーつもりなのッ!?

そう言って、私服の警察官は、掴んだひろ子の
右腕を激しくゆすった。

  だって…


  これまでに何回やったと思っとる!?
  300回やぞ!300回ッ!
  なあ、わかっとるんかぃ!?


  だって…


  だって、だって…ばかり言いやがって、
  ダッテ星人か、オマエは?
  あぁん?


  だって…


  ・・・・・・・・。


ちょっと脚色し過ぎですが、このお話、実際に香川県で
あった事件をもとにしています。

事件は、39歳の女性が香川県警に対して、自殺をほのめかす
虚偽の電話やFAXを繰り返し、通算で300回にのぼった
とのこと。

県警は業務妨害の容疑で、この女性を逮捕しました。

女性は「業務を妨害するつもりはなかった」と一部を否認する
発言をしており、

  妨害するつもりなかったやとぉ…?
  しとるやないか!しとるやないか!
  思いっきり妨害しとるやないかッ!!
  300回も!! コラァーッ!!!

と、警察官に怒鳴られたかどうか。。。
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