笹やん 捕物帳

バイト先の冷凍食品センターで、今日、ちょっとした
事件が起こりました。

僕が、朝8時少し前にセンターに入った時には
既に事件が発生しており、センター長とトラックの
運転手が2人、そして、笹やんが商品積込口の近くに
立って、腕組みしながら真剣な表情で話し合って
いました。

他のバイトに聞くと、どうやら今朝、出発する
配送商品で、昨晩、出庫してカゴ車に積んでおいた
冷凍タラバガニが、3ケース無くなったそうです。

無くなったのは冷凍タラバガニのみ。
一緒にカゴ車に積まれていた他の商品は無事です。


　　ってことは、アレですかぁ…？
　　タラバが無くなったのは、出庫後の
　　昨日の夜9時から、今朝、積み込もうとした
　　5時の間ってことになるんで…？

と、笹やんは右手に持った30センチ定規で、自分の
右肩をポンポン叩きながら、センター長に尋ねて
いました。

このセンターは24時間稼働しており、真夜中でも
トラックが出入りするそうで、当然、センター内にも
何名かの人が、深夜から早朝も働いています。


　　けど、アレですよ…、
　　センターの人間が3ケースも持ち抱えて
　　ここから出て行ったら、誰かに見つかるに
　　決まってますよ。
　　コレ、やっぱ、運転手が…。

と言いながら、目の前の運転手の一人を見つめる
笹やん。

その運転手が、検品中に冷凍タラバ3ケースが
ないことに気づき、とりあえず在庫から
再度出庫して、早朝の配達を終え、丁度戻ってきた
ばかりのようでした。

　　おいおい、笹やん。
　　ナニ？その目は！
　　検品して、無いことを確認したのは
　　オレだけじゃないんだぞ！
　　一緒に検品したココのミズノだって
　　無かったこと知ってんだから！

ちょっとムッとしながら運転手の人が言うと、
笹やん、さらに一歩、その運転手に近づいて、
ちょっと下から見上げるようにして、

　　ホントにぃ～～？

ニヤリとしながら言いました。

　　こら！笹やん。
　　おめぇの前歯、下だけじゃなく、
　　上の歯も折ったろかッ！！

もう運転手は真剣に怒る気にもならないと言った
感じで、苦笑しながら、笹やんの肩を小突きながら
言い返していました。

　　ウソだと思うならミズノに
　　聞いてみろ。

さらにそう言って、もう一人の運転手とともに
事務所の方へ歩いて行きました。


･･････それから、

笹やんはミズノさんを探し、事情を確かめているよう
でした。

その時も笹やんは、30センチ定規をミズノさんの
顔の前にチラつかせながら話しており、ハタ目に見てると、
まるで銭形平次が十手を持って聴き込みをしているように
見えなくもありませんでした。

と言いますか、きっと笹やんは銭形平次だか何か、
時代劇の岡っ引きを意識しているみたいです。

神妙な顔つきでミズノさんの話を聞く姿といい、
30センチ定規を振りかざす姿といい、もうこれは
「笹やん捕物帳」って感じです。


　　オレには、あの運転手がタラバ3ケースを
　　トラックに積み込んで、配達の途中、
　　自分ちに置いていったとしか思えねぇんです…。
　　ほかに考えられねぇんで…。

とか言いながらセンター長と話したりしていました。


･･････しかし、

事件は意外な結末に。。。

調べてみると、タラバ3ケースは出庫係のミスで
出し忘れており、はじめからカゴ車に積んでいなかった
ことがわかりました。

この商品の在庫管理は笹やんの担当になっているらしく、
センター長が顔を紅潮させて、

　　オイッ！笹○！！
　　おまえ、在庫の管理、どーなっとるんだぁ？
　　ええっ！？
　　人を疑う前に、ちゃんと商品が出庫されたか
　　どうか、在庫を確認しろよっ！

センター長より、笹やんの方が10歳以上、年上のはず
ですが、この言われよう…。


　　あ、ああ…、あれー？

慌て、狼狽する笹やん。

　　オイッ！笹○！！
　　おまえ、今日から3日以内に、
　　自分の担当商品の在庫一覧表を
　　作って提出しろっ！
　　いいかッ！！

センター長から追い打ちを掛けられ、

　　あ、あぁ、あああ─────っ

30センチ定規の両端を、左右の手で強く握り
悶絶する笹やん。。。　　

以上、笹やん捕物帳、一件落着！

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タグ：笹やん 銭形平次