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笹やん かくれんぼ

バイト先の冷凍食品センターです。

昼からの仕分け作業が終わり、休憩しようと言う頃に
なって、センター長が笹やんを呼び止めました。

  おい、笹○
  今からバイト2人ほど使って
  冷凍庫の中華麺の整理整頓して
  来いや!

さあ、休憩に行くぞ!と言う気になっていた笹やんは、

  は?

目をテンにしてセンター長を見ながら、とぼけ切った
態度です。

  は?じゃねーわ!
  中華麺のロットが混在しとるやろ!
  オメーのせいで、庫内がグチャグチャに
  なってまったやろ!

笹やんの顔面にツバを飛ばす勢いで怒鳴るセンター長。。。

聞けば、冷凍中華麺の賞味期限日付が、

  2018.03.05
  2018.03.26

以上、2種類あり、これらが別々に収納されておらず、混在
してしまっているとのこと。。。

そして、その原因と言うのが、笹やんが日付を無視して
適当に入庫してしまったようで、それでゴチャゴチャに
なっていると言うことらしいです。

  中華麺なんか、今の在庫すべて
  来月中に消化してしまうから、
  別に問題ないでしょ?

口を尖らせていう笹やんに対し、またもツバを飛ばす勢いで、

  そーゆー問題じゃねーわ!
  先入れ先出しは基本中の基本やぞ!
  なぁ?
  5日付を先に出庫してから26日の
  ロットを出庫するのが基本やろ!
  賞味期限内に消化すれば済むと言う
  話じゃねーだろ!

猛烈に怒鳴るセンター長。。。

  とにかくバイト2人くらい連れて
  整理して来い!
  オメーとバイト2人でやれば
  1時間も掛からんやろ!

そう言われた笹やん、チラッと、僕と隣にいたバイト仲間の
ヤノさんを見たのです。

ヤノさんと僕は…

  あ!
  笹やん、オレらを連れて行こうと
  思ってるナ…。

同時に悟ったのです。

で…

ヤノさんと僕は、反射的に笹やんから遠ざかろうと、そそくさ、
そそくさ…と、カゴ車置場の方へ行くのでした。。。

おぉ~い…

やや遠くから聞こえる笹やんの声を背に受けて、僕らは
カゴ車置場へ入り込みました。

別段、笹やんを手伝って庫内の商品整理をすることが、
それほど嫌と言うわけじゃないのですが、何となく、ただ
何となく、笹やんをちょっと手こずらせてみたくて…

僕らは、いたずら心で笹やんの視界から外れようとして
いるのでした。。。

  そもそも笹やんは、何で
  オレらを頼るんだ?
  こういうコトは学生バイト
  使って、チャチャッと
  片付ければイイんだよな

ヤノさんが、折りたたまれて整然と並べられているカゴ車の
間に身を隠しながら言いました。

笹やんとしては、ブツブツ文句言いながらチンタラ動く
学生バイトたちより、僕らの方が扱いやすいのでしょう。

  お~い!
  おまえら出て来~い!

笹やんの声が聞こえてきます。

  おい!
  何で逃げるんや!

少しずつ声が近づいてきます。。。

僕らは、ソ~っとカゴ車置場から離れ、通路を小走りで
通りました。

そうすると外へ出るドアがあり、それを開けると目の前は
駐輪場になります。

しばらくの静寂…

もうそろそろ3時になろうとしています。この時間は配送車の
行き来もなく、日曜日と言うこともあるのか、本当に外は
静かでした。

  あっ!
  見つけたっ☆

笹やんです!

少し離れた積み降ろしホームに立ち、笹やんが嬉々とした
表情をして、こっちを指差しているのでした。

ヤノさんと僕は、思わずプッと笑って走り出しました。

駐輪場から構内を走り、事務所前の通路へ向かって行きました。

笹やんは、一旦、センター内に入っていったようで、たぶん、
事務所近くで待ち構えようと思っているのでしょう。

僕らはウラをかいて、途中のドアからセンター内に入り、
階段を上がって2階の休憩室に入りました。

どうせ休憩するつもりだったので、僕らは給茶機から
緑茶を紙コップに注ぎ入れ、それを飲むことにしました。

室内には、別のチームのバイトたちが何人か休憩しています。

再び静寂なひと時を過ごしましたが、

  笹やん、そろそろ来そうだな…

ヤノさんが飲み終えた紙コップをゴミ箱に捨てて、そう
言いました。

いつしか僕らは、隠れている所をオニに見つけられるまでの
ワクワク、ドキドキ感を楽しんでいるのでした。

かくれんぼ…です。

僕らは休憩室を出て、階段を下りようとした時、ちょうど
笹やんと鉢合わせになりました。

  あっ!
  やっぱり2階だったか!
  休憩室にいるだろうなぁ…って
  思ってたところだ!

笹やんは、僕らを見つけたことがメッチャ嬉しいらしく、
眼をキラキラさせています。

そうなのです。

笹やんもまた、童心に帰って、かくれんぼを楽しんで
いるようでした。

僕がまだ小学校に入る前だったと思います。あの頃、
かくれんぼをして遊んだことが何度もありました。

もうイイかい?

ま~だダヨ♪

現代の子どもたちは、かくれんぼ…するでしょうか?

もしかして、僕らの世代が、かくれんぼで遊んだことのある
最後の世代かも…って気になってきました。。。

さて…

かれコレ30分は過ぎたでしょう。

笹やんと僕らは、不思議な懐かしさと充実感を味わいつつ、
作業場へ向いました。

すると…

  オメー!
  今までどこで何やっとたンや!!

センター長が、笹やんを見るなり、辺り一面に響き渡るほどの
大声で怒鳴りました。

  ヤバッ!

  ヤベぇ~!

ヤノさんと僕は、この時こそマジで笹やんの視界から外れようと、
かくれんぼをしたくなりました…。
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