________________________________________________________________________

笹やん 五里霧中

バイト先の冷凍食品センターの得意先である「××デリカ」は、
このエリアの複数のスーパーとテナント契約しており、そこで
お惣菜やお弁当などを販売しています。

そんなお惣菜などの材料を、このセンターから納品しています。

店舗数は現在、120店舗ほど。

納品アイテムは総計200品以上と言われていますが、ほとんど
納品されない商品も少なくありませんし、何よりも季節ごとに
商品の切り替えが激しいので、正直、センターで作業する者に
とって、混乱のタネになっています。

で…

3月は季節の変わり目でもあり、××デリカの商品切り替えの
季節というわけで…

  ミニロースかつ1Kgは昨日の出荷で
  終了だから、返品庫へ移して
  おいてくれ!


  今度の木曜日で最終出荷になる商品が
  6品あるんで、在庫調整しておけよ!


  焼きおにぎり2種類も終了だから、
  これも返品庫へ…


  もういっぱいで入らんぞっ!

そんな会話が今朝から続いています。

返品庫は、決してスペース的に余裕があるわけではなく、
また、××デリカのためだけのスペースではないので、
常にいっぱいです。

  おい、カワサキ!
  早よ返品庫へ持ってけ!

笹やんが、リフトマンのカワサキさんに大きな声で
指示しますが、

  だから、いっぱいで
  入らんっつーの!

と反論します。。。

  だいたい笹やんがメチャクチャな
  発注するもんだから、こんなふうに
  在庫過剰になるんやて!
  もう少しで終了だって言ってるのに…
  ちょっとは考えてヨ!

と、バイトのカワサキさんに、上から口調で言われたせいか
闘争心を剥き出しにして、

  ミニロースは売れ筋なんやぞ!
  一気に出荷されて欠品起しそうに
  なることも何回もあったやろ!
  それに備えただけのことや!
  こっちだって考えとるんや!
  ツベこべ言わんと、早よ持ってけ!

大声で言い返す笹やん。。。

  いやいや、笹○さん…
  って言うか、ミニロースは昨日の夕方に
  2パレットも返品庫に納めてるンですよ。
  しかも、その2パレットのミニロース…
  賞味期限切れ間近で…

笹やんの後ろから、社員のタカハシさんが静かな口調で
話し掛けてきました。

そんなタカハシさんの言葉を聞いて、カワサキさんは
水を得た魚のように勢いに乗って、

  でしょ? でしょ?
  その2パレットは、ず~っと出荷されずに
  格納庫で眠ってたわけでしょ!?
  ってコトは、笹やんの在庫管理が
  不徹底ってことでしょ?
  先入れ先出ししないで奥に突っ込んだまま
  放っておいて、それを昨日になって
  返品庫に入れるってどうよ?
  しかも、今、この時点で、まだ在庫が
  過剰にあるってどうよ?

一気にまくし立てます。

笹やんとしては、かなり痛いところを突かれたらしく、
苦々しい顔になって、

  オレの管理とかじゃなくて、お前ら
  リフトマンが気をつけてくれないと…
  何しろアイテムがめっちゃ多いんで、
  こっちも手が回らないじゃんねぇ!

何とか責任を転嫁しようという作戦…。

  何言ってるの!?
  何ヵ月も前に、オレ、言ったよね?
  タカハシさんだって、何度か言ってるよね?
  日付の古いのが2パレットあるって…
  それに一度、奥から出して別のラックに
  移してやったのに、笹やん、あの時、
  別の商品入れるから、元に戻せって言ったでしょ?
  忘れてるの?
  頼むよ、笹やん!

カワサキさんにまくし立てられ、この作戦はあっさり
失敗に終わる笹やん…。

  ・・・・・・・・・
   ・・・・・・・・・

相当、痛いところを突かれたようで、笹やんは苦い顔つきの
まま無言でカワサキさんとタカハシさんを交互に見ています。

  それに、ちょっとヤバいのは
  その2パレットのミニロース、
  外箱がかなりヤワくなってて…

タカハシさんが、そう言うと、後を引き継ぐようにカワサキさんが
言いました。

  でしょ? でしょ?
  ず~っと放っておいたままで、
  しかも、そのパレットの上に
  段積みしたりするから外箱、
  かなりヤバいことになってるヨ!
  ねえ、笹やん!
  どうするの?
  あんなに沢山、返品できないよ!
  営業部から××デリカの本部へ
  交渉してもらって半値処分するとか…
  とにかく今の在庫量、ハンパないからね!
  どうするの?


  ・・・・・・・・・
   ・・・・・・・・・

笹やん、無言のまま…。

過剰在庫を抱え、しかも先入れ先出ししていないことが
営業部にもバレて、叱られてしまうと懸念しているのかも
知れません。。。

  どうするの?
  ねえ、笹やん!

完全に勝ちを意識したカワサキさんは、容赦なく笹やんに
詰め寄ってきます。

  ・・・・・・・・・
   ・・・・・・・・・

無言の笹やんは、すがるような目つきでタカハシさんを
見つめます。

タカハシさんは、リフトマンたちを管理する立場です。
笹やんと違って、大人しく冷静な性格のタカハシさんは
リフトマンたちからの信頼も厚く、仕事やバイトたちに
対しても適切に対応しているようで…

ですから、いくら笹やんから見つめられても、何とも
仕様がないわけで…

ちょっと困った表情でタカハシさんは、笹やんの目線を
避けるようにして、自分の足元を見ているようです。

それでも笹やんは、タカハシさんを見つめ続けています。。。

  タカハシぃ~、
  何とかしてくれよぉ…

笹やんの目が、そう言っています。。。

僕らバイトは作業しながら、そんな様子をチラ見しては
ニヤニヤ笑っているのでした。。。

  とにかく、今のままじゃ返品庫に
  他の商品が納まらなくなっちゃうよ!
  ××デリカの商品がほとんどだけど、
  少しは処理方法考えてよ!
  ミニロースだって日付が古いと言っても
  まだ賞味期限まで1ヵ月くらいはあるからサ!
  事情を説明して処分してもらおうよ!
  ねえ、笹やん!

カワサキさんは、やや柔軟な口調になって笹やんを説得
します。

しかし…

どれだけ説得されても、笹やんとしては、自分の怠慢を
露呈することになるので…

動くに動けない…って状態なのです。。。

  この場では決定できないから、
  とりあえずセンター長へ報告して、
  処理方法を決めてもらいましょう。

タカハシさんが、場を仕切るように言いました。

それを聞いて、カワサキさんは何度も頷いてみせました。

そして、笹やんは…

  ・・・・・・・・・
   ・・・・・・・・・

相変わらず無言で突っ立ったまま、タカハシさんを見つめ
ています。

  は…?
  センター長へ言っちゃうわけ?

たぶん、笹やんの頭の中には、そんな言葉が浮かんでいる
ことでしょう。。。

タカハシさんとカワサキさんは、作業場から去っていき、
事務所へと向かって行きました。

その後ろ姿を、

  ・・・・・・・・・
   ・・・・・・・・・

やはり無言で見送る笹やん。。。

ま…、いつものコトと言えば、それまでですが…。

自分でやったことを、その場その時、適切に処理すれば
よいものを、それをしないで放っておくから…

どうすればよいかがわからなくなてしまう。。。

こういうのを五里霧中って言うんでしたっけ?

この後、センター長から雷が落されるわけですが、あいにく
そのシーンを見ることが出来ませんでした。。。
にほんブログ村 オヤジ日記ブログへ
にほんブログ村




タグ:笹やん
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

トラックバックの受付は締め切りました