ハイ、今月分の給料☆

これは、大阪府岸和田市に住むある男のお話です。

その男は、決して高い給料ではありませんでしたが、
何とか夫婦二人が人並みに暮らして行けるだけの稼ぎを
得ていました。

ところが3年前の3月、勤めていた会社が倒産して
しまったのです。

妻を心配させたくなかったので、そのことを話さず、
以来、男は何食わぬ様子を見せ、月曜日から金曜日まで
普段通り、朝8時に家を出ていきました。

家を出たものの行く当てもなく、男は公園をブラブラして
みたり、図書館で時間をつぶしたりしていましたが、
いつまでもこんなことをしていられるものでもありません。

　　何とかして収入を得なくては…

妻のことを思うと、男は、やはり毎月もらっていただけの
お金を稼がねばならないという使命感のようなものに
捉われるようになりました。

そこで男は、ハローワークに出掛けていったり、求人誌に
目を通したりしたのですが、どうも自分に合いそうな仕事
が見つかりません。

そして、土曜日の晩のことです。

家でぼんやりとテレビを観ていましたら、7時になって
空き巣などの犯罪を扱った特別番組が始まりました。

番組内では警察官のOBが、防犯について指導する場面も
あり、それを観ているうちに男は、何やら得体の知れない
渦のようなものが頭の中をうごめいていくのを感じました。

月曜日になりました。

いつも通り、8時に家を出た男は、池田市の住宅街へ向かい
ました。

やがて一軒の民家に目をつけて…

男は空き巣を働きました。

次の日も、また次の日も…

月曜から金曜まで、8時に家を出て…

大阪府内だけではなく、兵庫県の西宮市、宝塚市にも
出掛けて行きました。

そして、毎月決まった日に、

　　ハイ、今月分の給料

そう言って、妻に手渡していました。

振込ではなくなったからと説明すると、あっさりと妻は
納得したようです。

そんなことを、およそ3年間、男は続けていたのです。

普通に就職先を探して、そこに勤めればよかったものを、
男は空き巣という行為に、それによって毎月、給料と
偽って妻に手渡す行為に、何とも言えないやり甲斐を
感じるようになっていたのかも知れません。

自分のことを何の疑いもなく、給料だと言えば素直に
受け取ってくれる妻に心底やすらぎを感じていたのかも
知れません。

　　妻に毎月、給料を手渡してやる
　　ことが仕事だ！

そんなやり甲斐を覚えたのでしょうか。

昨年の3月に、男は逮捕されました。

事実を知った妻は、どんな様子を見せたのでしょうか。

男が空き巣で得た合計金額は、約1900万円だったそうです。

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タグ：空き巣 やり甲斐 給料