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引き込まれるラーメン屋

お店に身体が引き込まれる…ってコト、ありませんか?

午後1時40分頃でした。

遅い昼食を食べようと、僕は仕事現場の近くを一人歩いて
いましたら、小さな小さなラーメン屋があったのです。

土曜日の昼過ぎです。店内はカウンター席だけのようですが、
誰も腰掛けてはおりません。

カウンター越しで、店主と思われる僕とよく似た歳の男の人が、
まさに呆然とした「客待ち顔」でこちらを見ているのです。

そして、目が合っちゃいました。。。

そこからです。僕の身体は、実に自然に、そのラーメン屋に
引き込まれていったのでした。

  ラーメン、ください…

客待ち顔の店主に、僕は椅子に腰掛けながら注文しました。

  はい…

あまり力のこもらない声で店主は返事をしてくれました。

ramen500_1609.jpg
5分待ったか待たぬか…、出てきたラーメンがコレです。

1杯500円。

僕は出来るだけ静かに割箸を割って、どうしてこの店に
引き込まれてしまったかを考えてみました。

おそらく、この店主の客待ち顔に引かれたんじゃないで
しょうか?

  ああ、入ってあげねば…

そんな悲哀と憐憫の思いが、僕の胸に灯ったからでしょうか?

土曜の昼下がり…

もの淋しげな店内…

誰一人いないカウンター…

カウンター越しから呆然と外を眺めている店主…

これらが、僕の心の中で一つの名画になったと言っても
イイでしょう。

何だか、言い表しようのない感慨を胸に、500円のラーメンを
僕は、出来るだけ静かに食べました。

この場の雰囲気を大切にしたくて、あまり大きな音を立てるのは
控えようと思ったのです。

とてもシンプルで、基本がしっかりしている旨いラーメンでした。

代金を払おうと、僕は財布を開きますと…

  !…◆#√▲…!!

お札が一枚も入っていないのでした!

びっくりしました!

慌てて小銭の入っているチャックを開けてみますと…

合せて612円の硬貨が入っていました。

  ヤバかったナ…

少し安堵して、僕はお勘定を済ませ「ごちそうさま」と静かに
言って、店を出ました。

そうか。612円しか持ってなかったか…。

結果的に、このラーメン屋に引き込まれてヨカッタんだ。。。
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