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笹やん 哀愁記

女優の片平なぎささんに似ていると言われているバイト先の
パート女子・マエダさん。

年齢は52歳で、明るくてハキハキした感じの女の人です。

そんな彼女に下心…、いや…、恋心を抱く我らが笹やん。

今日も朝から、マエダさんの横に貼り付くようになって
アレコレ話し掛けては笑い、ご満悦なご様子。。。

こんな光景を何度か見ているうちに、僕は、マエダさんって
出来た人だなぁ…と、感じ入りました。

どう見てもマエダさんに対する笹やんの攻勢は、くどい!
しつこい!イヤらしい!

そんな笹やんの攻勢を受けても、マエダさんはイヤな顔を
することはなく、いつもニコニコ笑って受け答えをして
います。

ま…、だから笹やんは調子に乗ってつきまとうわけですが…。

傍目に見ていても、見苦しい光景で、他の女子パートは
あからさまに唇を歪め、冷たい目線を笹やんに送る人も
います。

また、50代の男子社員やバイトの中にもマエダさんファンは
多くて、彼らがマエダさんに近づこうものなら、笹やんが、
まるで番犬が吠え立てるように、他の男子の名前を呼びつけ、
意味不明な説教をしたり、作業を命じたりしてマエダさんから
遠ざけてしまうのです。

そんなわけですから、50代男子たちからも笹やんは冷たい
目線を浴びています。

が…

それらを一切気にしないのが笹やんのスゴさでもあります。。。

多数の男女の目から発せられる冷凍光線を受けても怯むどころか、
まるで意識していないようで、ニコニコしながら鼻の下伸ばして

  マエダさ~ん♪


  あのさぁ、マエダさ~ん☆


  ねえねえ、マエダさ~ん♪

などと言いながら、すり寄っていくのです。


  あれじゃマエダさんも
  仕事にならないんじゃないの?


  だけど笹やんも62か63歳でしょ?
  元気なモンだねぇ…。


  ありゃあ欲情の塊だよ。
  髪の毛から足の爪まで
  欲情が通ってるような…


  それにしても、マエダさん
  可哀そうだよ。
  こっちへ呼んであげようか?

周りの男女がささやき合って、やがて一人の熟年女子バイトが
マエダさんを呼び、

  ごめ~ん。
  こっちの手が足りないから
  手伝ってくれない?

と言いますと、マエダさんは明るく返事をして、こちらへ
やって来ます。

すると面白くないのは笹やん。。。

キッと熟年女子バイト・Kさんを睨むように見て、

  何や?
  マエダさんは仕分け作業をして
  もらうことになっとるやろ!
  出庫はそっちの人数で間に合うやろ!

と、少し声を荒げて言います。

  まだ半分ぐらいしか
  出庫できていないから、
  こっちを優先しないと
  仕分けも充分にできなく
  なるでしょ?

負けずにKさんが声を張ります。

  そんなもん、おまえらの
  手が遅いからや!
  さっさとやらんか!


  よく言うよ!
  笹やんがブラブラしてるから
  出庫が遅れているんでしょ!


  何がブラブラや!


  だって、さっきから何も
  出庫して来てないじゃん!


  そんなコトあるか!


  じゃあ何を出庫してきたの?
  言ってみてよ


  ・・・・・・・・・・・・・

黙り込んで、ただKさんを睨む笹やん。。。

そこでマエダさんが、

  とりあえず出庫を急がないと
  仕分けができないから、
  手伝います

そう言って、Kさんと一緒に商品の格納場所へ向かって
いきました。

やっぱり、マエダさんって出来た人だよなぁ…

そう思ったのは僕だけじゃないでしょう。周りにいる
男女バイト、みんなが感じ入っているはずです。

でも、笹やんは…?

さあ、ここで笹やんが、

  よし!わかった!
  オレも…

と、率先した姿勢を見せて出庫に向かえば、いくらか周りの
目も変わったでしょうけど…

  ったく!
  あいつ、エラそうに!

と、Kさんのことを言うもんですから、周りは、しら~~っと
してしまい…

ちょっと重たい空気の中、僕らは作業を続けました。

そして、仕分け作業も何とか遅れることなく済ませ、午前中の
仕事は終了。

みんな、昼の休憩に入ろうと、外へ出ていきますと…、

  マエダさ~ん♪
  昼メシ、ごちそうするから
  一緒に行かない?

他の女子パート数人と一緒に歩いているマエダさんの後ろから
声をかける笹やん。

マエダさんだけじゃなく、他の女子も一斉に振り返ります。

  ごちそうさん!
  行こ行こ☆
  で?
  笹やん、どこへ連れていって
  くれるの?


  わたし、身体が冷えっちゃって…
  温かいモノがいいわ


  笹やんの行きつけの
  うどん屋さんでもイイよ


  あそこより歩いて行ける
  喫茶店で食べようヨ。

マエダさん以外の女子たちから、あれこれとリクエストを受ける
笹やん。

  おまえらを誘っとるンやないわ!
  オレは、マエダさんと二人で
  ランチを楽しみたいんや!

いくらか冗談めかした口調ではありますが、イヤらしさが全面に
溢れ出し、欲情丸出しの笹やん。。。

もう恥も外聞もなく、雌を求め、発情する獣と化した笹やん。

そこへセンター長が声をかけます。

  笹○!
  ちょっと事務所まで
  来てくれ


  へ…?

ギラついた目が、たちまち点になった笹やん。

なんで、今、この時に呼び出すンだ!?って顔でセンター長に
ついて事務所へ向かって行く笹やんの後姿を見て、なぜだか
ニヤリと笑った熟年女子・Kさんが印象的でした…。

で…

マエダさんたち女子グループだけで、昼の休憩へ出掛け、
僕ら男子グループも近場で昼メシを済ませて、戻ると…

庫内には、妙に消沈した様子の笹やんが、ひとりたたずんで
いるのでした。

僕らバイトが全員戻った時、センター長が庫内にやって来て、
マエダさんを別の部署…

笹やんの管轄ではなく、別社員の担当する納品先の作業を
するよう指示しました。

マエダさんは素直に従い、センター長の後をついて行きます。

そんなマエダさんの背中を呆然とした目線で追う笹やん。

なんだか哀愁が漂っています…。

しかし、その空気を一掃するように、Kさんがプッと吹き出し
ました。

他の女子バイトも笑いを堪えたり、口を手で隠して笑ったり…、

午後の作業の合間にKさんが、

  笹やんの態度はみっともないわっ!
  マエダさんが可哀そうで…
  それで、わたしがセンター長に
  言ったんだわ…
  マエダさんも実は笹やんの態度に
  困っているから、作業部署を
  変えてあげてくださいって。
  このままじゃ、マエダさんだけじゃなく、
  周囲の空気が乱れて作業に差し障りが
  あるってセンター長に言ったら、
  センター長も納得してくれたわ

と話してくれました。

こうして、笹やんの恋(?)は半月ほどで終わったのでした。。。
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