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笹やん 在庫誤差

センター長が、笹やんに向かって大声で言いました。

  めっちゃ在庫誤差が
  発生しとるゾ!
  どーなっとるンだ!?

どうやら冷凍カニクリームコロッケが、52ケースも不足して
いるとのことで、

  なんで52ケースも少ないんや!?
  何があったんや!?

センター長は、笹やんに追及しますが、

  何があったも何も…、
  なんで52ケースも在庫が
  狂ってるんですか?

逆に笹やんが、センター長に質問しています。。。

  オレに聞くなっ!
  オマエの担当商品やろ!
  いつから誤差が出たんや?

カリカリしながらセンター長が怒鳴ります。

  いつからですか?

と、また質問している笹やん。。。

  オレに聞くなっつーの!
  オマエ…、
  在庫誤差が見つかった時点で
  原因を確かめろって前々から
  言っとるにも拘わらず…っつーか、
  オマエ、日頃から在庫表をチェックして
  いないから、こういうことになるんやゾ!
  なぁ?
  毎日、在庫表をチェックしろと
  言っとるにも拘わらず、全く
  チェックしとらんだろ?
  なぁ?
  だからこういうコトになるんや!
  何だオマエ!
  こんな在庫誤差は初めてだわ!
  どーなっとるンだ!?
  なぁ?

センター長から責めつけられ、ひたすら首をひねる笹やん。。。

  先月末の在庫数を確認して、今月の
  入出荷推移を再確認してみろ!
  いつ、どれだけ誤差が発生したか…、
  ちゃんと把握しとけッ!
  今すぐやれッ!

そう言い捨てて、センター長は事務所へ戻っていきました。

呆然と庫内の仕分現場にたたずむ笹やん。。。

やがて…、

  ちゃんと把握しとけ…って
  言われてもなぁ…。

ポツリとつぶやき、辺りをキョロキョロ見渡しはじめました。

そして…、

  おう!
  タカハシー!

と、ここの冷凍食品センターの中で、最も生真面目な社員で
あるタカハシさんを見つけ、手招きして呼び寄せました。

タカハシさんに、先ほどセンター長から言われたことを説明し、
どうすればいいのか…、それをタカハシさんから聞こうという
わけです。

タカハシさんは見るからに大人しげな、20代後半の若手社員で、
真面目に仕事をこなし、センター長から最も気に入られています。

彼は、大人しげな顔つきに似合わず、とても眉毛が太く、
1本につながっているように見えます。

笹やんから相談を受け、今、その太い眉毛が八の字になり、
タカハシさんは、心から困ったと言った表情になっています。

笹やんは、何か困ったことが起こると、たいていタカハシさんに
相談し、彼に処理を頼む…って言うか、丸投げすることが
多いのです。

そんなわけですから、タカハシさんとしては、笹やんに
呼び止められた時点で、困惑した様子を露骨に表しました。

普段、大人しいタカハシさんも、

  ごっ…、ごじゅうにケース…?
  52ケースも誤差があるんですか!?

大きく驚いたようです。

で…、笹やんから、どのようにして先月末の在庫数を確認し、
今月の入出荷推移を確認すればよいのかを聞かれ、

  それはパソコンで見ることができます。
  在庫管理の画面を開いて、商品コードを
  入力して、そこから先月末の在庫も、
  今月の日別入出庫数も確認できます。

ややオドオドした口調でタカハシさんが答えると、

  わりぃけど、手伝って
  くれない?
  オレ、そんな画面、
  見たコトないし…

笹やんが言いました。

するとタカハシさんは、さらに眉毛を八の字にしつつ、

  えっ!?
  そんな画面見たコトない…って
  基本、毎日見ることになってるでしょ?

驚きと呆れの入り混じった口調で笹やんに言いました。

まぁまぁ…と言うように、笹やんはタカハシさんの肩を
2、3回、軽く叩き、いっしょに事務所へ行こうと促しました。

はぁ…と溜息をつくように肩を落とし、タカハシさんは
笹やんに導かれるまま、事務所へ向かっていきました。


それから1時間ほど…

笹やんとタカハシさんは事務所にこもっていたようです。

庫内に戻ってきた笹やん…、

B4版の用紙を数枚手にして、何やら難しそうな顔つきで
首をひねり続けています。

そして、僕らバイトに向かって、

  例のカニクリームコロッケは納品先が
  100軒以上あって、火曜日以外、毎日
  出庫されてるけど、誰か、数量を
  間違えて出庫したり、仕分した記憶ない?

と聞いてきました。

しかし…、

今、そんなこと聞かれてもなぁ…って感じで、みんなは
首をひねるばかり。。。

笹やんによれば、このカニクリームコロッケは、一度に
52ケースも誤差が生じたのではなく、今月に入り、何回かに
分けて、誤差が発生し、累積して52ケースになったようで。。。

こうなるともう…、

追及しようがないんじゃないの?

って言うか、何でこうなるまで放っておくの?

って言うか、何で毎日、在庫をチェックしないの?

僕らバイトは、腹の中で、そんな思いを共有させていました。

さすがに笹やん窮した様子でした。
その笹やんの前を、タカハシさんが通っていきました。

  タカハシぃ~…

甘えるような声で、笹やんが呼び掛けました。

すると、急に歩調を早め、タカハシさんは笹やんの前から
遠ざかろうとしたようですが…、

  なぁ、タカハシぃ~、
  わりぃけど、コレ、
  どうすればイイか
  考えてくれない?

そう言って、タカハシさんの目の前に、B4版の用紙…、
カニクリームコロッケの在庫推移を記した用紙をピラピラと
見せつけました。

無茶振り…、まさしく無茶振りです…。

タカハシさんの1本につながっているような太い眉毛が
たちまち八の字になり、再び困惑の表情を見せました。

  う~~ん…
  難しいと思いますよぉ…。

そう言っていると、センター長がやってきて、

  おい、笹○!
  タカハシを使うな!
  どうするつもりなんや!?
  なぁ?
  52ケースの在庫誤差…、
  金額にしたら結構な額だゾ!
  オマエ、これ…、
  どうやって修正するつもりなんや?

と、笹やんに言いました。

タカハシさんは、ホッとした表情に変わり、そそくさと
その場を去っていきます。

それを物惜しげな顔で見送る笹やん。。。

  なぁ?
  どうするンや?

センター長から追及を受け、笹やんは呆然とした口調で
言いました。

  どこの誰が、こんな…、
  出庫間違いか、それとも仕分時に
  問題があるのか?
  何でここまで誤差ができたのか?

すると、センター長が唾を飛ばして、

  それを聞きたいのはこっちの方や!
  どこの誰が…って、元の原因は
  オマエやぞ!
  オマエの在庫管理の怠慢が原因やろ!

と怒鳴ります。

何を思ったか笹やん、ふぅ…と溜息をつき、

  塵も積もれば山…ですなぁ

そう言って、センター長に笑い掛けました。

塵も積もれば…、つまり、1ケース、2ケースの誤差も
積もり積もれば、52ケースにまで上ってしまったと言う
ことでしょう。

それを聞いて、センター長、一旦は顔を紅潮させたようですが、
すぐに呆れ顔になって、

  アホか…、
  そんな山、作らんでもエエわ…。
  52ケース分の金額は、オマエの
  給料から引いておくからな

と言うと、その場を去っていきました。

  え゛え゛ーっ!?

絞り出すような声を出し、笹やんはケータイを取出し、
何やら計算しようとしたようです。

  52ケース分って…
  あれ?
  カニクリームコロッケって
  1ケースいくらだっけ?

ようやく焦りの色を見せ出した笹やんでした…。
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