笹やん 筋違い

笹やんは、携帯を耳にあて、配送業者と連絡をとっています。

　　あぁ～ん？
　　おぅ、そうか！
　　間違いないか？
　　ふぅん、わかった…
　　はい…。

ここは、バイト先の冷凍食品センター内、商品の出庫場です。

今日の午前9時半頃、得意先であるホテルのレストランから、
同店に納品するはずであったオリジナルカレールーが届いて
いないとの連絡を受けました。

注文数は、冷凍オリジナルカレールー1Kg×5個だったのですが、
1個も届けられていなかったとのことです。

今日の昼に最低、3個は使うので、大至急届けてほしいとの
連絡があり、待機中だった別の配送便に注文通り5個を
積み込んで納品してもらうことができまして…、

まぁ…、得意先に対しては一件落着ですが、問題なのは…、

　　おかしいですよ！
　　オリジナルカレールーは
　　注文通り5個出庫したんですがねぇ…

笹やんが言う通り、昨夜10時過ぎに、そのホテルのレストラン分
として5個出庫された記録が残っています。

納品先のホテルは、ここから近い地方都市にある有名なホテルで、
納品時間が午前8時になっているため、前日の夜に受注商品を
用意しておき、早朝、配送便に積み込んで出発します。

記録を確認しますと、間違いなく昨夜、このホテルのレストラン
から受けた注文票の中にオリジナルカレールー5個が含まれて
おり、他の商品とともに出庫されていることがわかります。

笹やんとセンター長が、その記録用紙を見ながら話し合っています。

　　商品はどれも間違いなく
　　出庫してますね。
　　積み込みはドライバーが
　　やってますから、さっき、
　　電話で確かめたンですが、
　　ちゃんとレストラン納品分の
　　保冷ケースを納品したと答えて
　　いました。


　　あそこのホテルのレストランは
　　ケースの中身まで開いて商品を
　　ひとつずつ確認して検品する
　　わけじゃないそうだぞ…。


　　ええ、それをドライバーのヤツも
　　言ってました。
　　だから、実際は納品されているのに、
　　別の誰かが、どこかへ持ち出して
　　しまい、それで届いてないと勘違い
　　してるかも知れません…。
　　あるいは…、
　　ドライバーのヤツ、嘘ついてるかも…。


　　また、オマエは…、
　　そーゆーこと言うなヨ！


　　でも、アレでしょ？
　　あそこのホテルのレストランが使う
　　カレーですから旨いんでしょ？
　　あのオリジナルカレールー、
　　他のと比べるとかなり高いモンなぁ～


　　オマエ…、そんな…、
　　カレールーは1Kgなんだぞ！
　　なあ？
　　1Kgのカレールーを5個も一度に
　　持って行くか？普通…
　　個人が5Kgも使い切れんだろ！
　　もし、ドライバーが盗むンだったら、
　　カレールー1個と別の何かを盗むだろ、
　　普通は…。


　　そうかも知れません。
　　かも知れませんけど…、


　　とにかくドライバーはやってないって！
　　ここからも間違いなく出庫した、
　　出庫したヤツが保冷ケースに入れた、
　　それをドライバーが積み込んだ、
　　そして納品した…、
　　そしたらカレールーだけなかった…。


　　5個も…、
　　まるまる5個分、丸損ですね…。


　　だな…って、オマエの担当だろ！
　　他人事みたいに言いやがって！
　　だいたいオマエの担当納品先は
　　未納連絡が多過ぎなんやて！
　　どーなっとるンだ！？
　　先月も何回あったと思っとるンだ！？


　　だからぁ、この前も言ったように
　　オレの担当は細かい注文が多い
　　納品先ばかりだから、納品先で
　　勘違いされる確率高いンすよ！
　　検品もロクにしないし…。


　　アホか！
　　細かい注文が多いから、出庫も
　　積み込みも細心の注意を払って
　　作業しろって言ってるにも拘わらず
　　オマエ、バイトたちを放し飼いみたいに
　　してるから…。


　　放し飼いってナンすか！？
　　ハイジのペーターじゃないんスよ！オレ…、


　　プッハハァー！
　　ペーターが可哀そうやわ！
　　そんなこと言ったら！

こんな感じで、次第に話の筋がヘンな方向にズレていきます。。。

で…、

結局、今回も確かな原因はわからず、対策も立たず。未納扱いに
なってしまいました。

　　しかしなぁ～、あのカレールー、
　　かなりデカいし、1Kgだから重量も
　　そこそこあるんで、そう簡単に
　　なくなるモンじゃないんだけどなぁ…

笹やんは、そんなことを言いながら作業をしていると、また
センター長が現われて、

　　おい、笹○！
　　例のホテルのレストランから、
　　オリジナルカレールーの注文って
　　毎回入るンか？

と尋ねました。笹やんは手を止めて、

　　そうっすね～…
　　毎回、注文来てますね。
　　たいてい5個、少ない時は3個ですね

そのホテルのレストランは毎日納品ではなく、火、木、土、日の
週4日です。

笹やんの答えに、センター長がニタッと笑い、こう言いました。

　　そうか、よし。
　　次の火曜日にカレールーの
　　注文が来なかったら、
　　ウチから間違いなく今朝、
　　納品されたってコトだ。


　　なるほど…、今朝のと合わせて
　　向こうには10個のカレールーが
　　納品されたことになりますからね。
　　で？
　　火曜日の注文がなかったら、
　　どーするんで？


　　そンときは、オマエ、
　　レストランへ電話して聞けヨ。


　　何を…、どう聞くんで？


　　毎回、カレールーの注文いただいてるんですが、
　　どうして今回は注文なかったんですか？って
　　聞くンだよ。


　　ええ～～、そんな、
　　イヤだなぁ…、センター長ったら、
　　オレにそんなイヤらしいこと…


　　アホ！
　　オマエの担当やろ！
　　それぐらい未納原因を追究する
　　意味で聞けよ！


　　いやぁ～、でも…
　　何か…、逆ギレされたら
　　どーすンですか？


　　そしたら、
　　「オイオイ、逆ギレかぁ？」って
　　言えよ…。


　　ナンすか？それ！？
　　吉本ギャグじゃないスか！
　　で、アレですか？
　　もし、向こうが、実は前回、
　　届いてないと言ったけど、
　　ちゃんと納品されてて…とか
　　言ったら、
　　「エエ加減にせぇーよ！」って
　　言うんスか？

そう笹やんが言って、アハハと笑えば、センター長も声をあげて
笑っていました。

こうして、二人の会話は、また道筋がズレていくのでした。。。

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タグ：笹やん ホテルのレストラン カレールー