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笹やん 憩い部屋

バイト先の冷凍食品センターで行われているカイゼン活動…、

庫内での作業手順、作業工程を見直し、正しい作業でミスをなくそう!

っていう目的で行われるべき活動なんですが…。

僕らバイトはもちろんのこと、社員の人たちも、今、この時点で
カイゼン活動を意識している人、いないと思います。。。

この活動を推進するリーダーは、イトーさんという社員の人で、
彼がリーダーになって、既に半年以上過ぎたと思いますが、
作業手順や工程について、別にコレといった変化もなく…って
言うか、カイゼンと称して、これまで、部分的に手順を変更したり、
工程を追加したことがあったようですが、すぐに元のままに
戻っちゃって、結果的には変わってないです。

イトーさんは、それでも社員やバイトに時々、カイゼンされた
作業手順をおこなうよう指示していますが、社員もバイトも
適当に受け流してしまっているのが現状です。。。

ここら辺で、イトーさんも疲れてきた…、と言うより、やる気が
なくなってきたような気配が感じられます。

今日の午前中も、イトーさんは笹やんの方にやって来て、

  笹○さん!
  積み込みミスを防ぐため、
  積み込み時に、再度、商品を
  検品する工程を追加しましたが、
  みんな、出来てないみたいなんで、
  笹○さんが管理しているバイトさんたちに、
  もう一度、指示しておいてくださいね。

と、目をキョロつかせながら言いました。

そうなんです…。

イトーさんは周りから、“泳ぎ目のイトー”と呼ばれていて、
動揺しやすく、少しでも気持ちが揺れると、キョロキョロと
すごいスピードで目を泳がせるんです。

僕は、そんなイトーさんの目の泳ぎを見るのが好きで、彼の声を
聞いて、すぐに笹やんとのやり取りに注目しました。

笹やんは、一瞬、眉間にシワを寄せて、険しい目つきでイトーさんを
見ましたが、すぐ表情をやわらかくして、

  ハイ、わかりました!
  わかりました。
  ハイハイ…

と軽い返事をして、やり過ごしてしまいました。

以前は、こんなふうに言われると笹やんは、イトーさんに対して
攻撃的な言い方をしており、それで、しばらく言い争いになった
ものですが、ここ最近、笹やんは、こんな調子で軽く返事だけ
して、何も実行しない…、という最もタチの悪いパターンに
なっています。

今日も、こんな返事を受けて、イトーさんは拍子抜けしたようで、
5秒ほど、ボ~~~っと突っ立ったままの状態で、目だけをキョロ
キョロさせてました。

ちぇっ!もう終わり…?

僕は、もうちょっと笹やんとイトーさんの言い争うシーンを
見たかったので、残念に思いました。。。


それから昼過ぎになって…、

僕は、配った商品を入れるためのトレーを取りに外へ出ると、
前方に笹やんとイトーさんがいました。

何だか笹やんは、イトーさんの肩をポンポンと軽く叩きながら、
イトーさんに話しかけている様子でした。

イトーさんは、笹やんに導かれるような足取りで、フラフラと
笹やんについて行っているように見えました。

そんな二人と、僕の向う先が同じ方向なので、そのまま僕は
二人の後ろ姿を見ながら進んでいくと…、

そこは、トレーが積み上げられているエリアで、周囲には
折り畳み式のカゴ車もズラリと並べられていて、そこの
奥の方には床面積4㎡ほどの物置小屋みたいな建物が
あります。

その建物の前で、笹やんがイトーさんに、

  な…?そうだろ?
  どれだけやっても
  そんなに変わりゃしないだろ?
  え…?
  どーだ?
  そんなことに力入れるより、
  ほかにやるコトあるだろ?
  な…? え…?
  どーだ?

そう言って笑いかけています。

  はあ…、まあ…、
  そうですよね~…。
  でも、やらないとセンター長が
  うるさいし、それよりも何よりも、
  コンサルのイシダさんが
  アレコレ言ってくるし…。

イトーさんがヘラヘラしながら、そう答えました。

  だから、おまえ…、
  そんなモン、適当にやってる
  フリでもして済ましときゃイイんだよ。
  大の男がやるコトじゃないだろ?
  な…? え…?
  どーだ?

と、笹やんに言われ、

  はあ…、まあ…、

イトーさんが曖昧な返事をします。

  ま、イイから、入れよ。
  な…? え…?
  アレ!?
  何だ、おまえ…、居たのか?

笹やんが物置小屋のような建物へイトーさんを入れようと
した時、僕の存在に気づいたようで、僕に声を掛けてきました。

僕としても、いつまでも二人の様子を盗み見しているのは
どうかと思い、カゴ車にトレーを積み込む作業を始めたの
ですが、その音で笹やんが僕に気づいたわけです。

  ついでに、おまえも
  中に入って休憩しろよ…

笹やんは、僕にも小さな建物の中に入るように言いました。

この建物は、ここでトレーを整頓して積み上げたり、カゴ車を
並べて整理する係の人が休憩に使う建物らしく、その係の人は、
いつも2、3人いるらしいのですが、日曜日だけは休みで、誰も
中には居ません。

日曜日しかバイトに来ない僕にとって、この建物はいつも
カギが掛けられ、ひっそりとしているだけの存在でしたが、
こうして、笹やんがカギを開けて、中へ入ってみると、
机に椅子、ソファもひとつあり、それに水道も通っていて、
ガスコンロ、電気ポット、電子レンジ、さらに、小さいですが
冷蔵庫まであって、ちゃんとした部屋だと言うことが分かり
ました。

日曜日以外は、ここの中で、数人が昼ごはんを食べたり、
休憩でお茶でも飲んだり、それに伝票などの整理もして
いるのでしょう。

笹やんは、まるで自分の部屋のように慣れた様子でポットに
水を入れ、スイッチを入れて湯を沸かし始めました。

そして、戸棚から紙コップを取出し、インスタントコーヒー、
砂糖なども机に並べ、3人分のコーヒーを用意しました。

  そうか!
  時々、笹やん、姿が
  見えなくなる時あるけど、
  ひょっとして、ここに
  居るんじゃない?

僕は直感的に、そんなコトを思いました。

  そうなんだ!
  日曜日に限って、ここは
  笹やんの憩いの空間ってわけだ!

そうに違いない!…と思っていると、イトーさんは既に知って
いるのか、特にどうってコトなさそうに、笹やんからコーヒーを
受け取り、ズズッと音を立てて飲んでいました。

  ちぇっ!
  今日はピーナッツしかないのか…

そう言いながら、勝手に引出しから、ピーナッツの入った袋を
出して、ポリポリと食べ始める笹やん…。

そして、イトーさんの方を向いて、

  な…?
  あんな“カイゼンごっこ”なんて
  適当にやってりゃイイんだよ…
  な…? え…?
  おまえの立場は分かるけどサ…
  だって、他の社員でやる気あるヤツなんて
  一人もいないだろ?
  な…? え…?
  どーだ?

そんなことを言い始めました。

どうやら、イトーさんにカイゼン活動への取り組みを弛めるように…、
って言うか、カイゼン活動へのヤル気をなくさせようとしている
ようです。。。

イトーさんも、この頃は確かにヤル気が失せつつあるようで、

  はあ…、まあ…

とか言って、笹やんの言うことを聞いていました。

僕は、ピーナッツを食べつつ、コーヒーを飲み、この笹やんの
憩いの空間で、妙にくつろいでしまいました。

そのあと、午後7時過ぎ…、

タイムレコーダーを押して帰ろうとしていたら、センター長の
声が聞こえました。

  オマエ、ちゃんとしろよッ!
  あんなヤツに蕩かされやがって!

どうやらイトーさんが、センター長に叱られているようです。。。

あんなヤツ…?

蕩かされやがって…?

どうもその、あんなヤツとは笹やんのことで、笹やんに懐柔された
イトーさんを叱っているように思えました。

イトーさんがセンター長に、カイゼン活動について、何か言ったの
だろうと思われますが、その内容が、たぶん、笹やんに吹き込まれた
コトだったのかも知れません。。。

  ・・・・・・・・・・・・

センター長の声だけが聞こえ、イトーさんの声はしません。

たぶん、イトーさんは今、ものスゴイ速さで、目を泳がせて
いることでしょう…。
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