笹やん 鉄仮面
今日はバイト先の冷凍食品センターで、ちょっとした
トラブルがありまして…。
トラブルを引き起こしたのはバイトのナイトウさん。
彼は誰とも会話したことがないと言われるほど無口で、
何時いかなる時も表情を変えたことがないと言われるほど
無表情な人です。
年齢は、見た目、30代前半ぐらいに見えますが、ウワサに
よりますと、まだ20代だそうで…、
老けて見えるようですが実際は若いんじゃないかと周りから
言われています。
とにかく話さない、表情が読み取れない…、そんな人なので
謎に包まれています。
で…、
連休中のせいか出庫量が多く、バタバタ続きのセンター内で
血相変えて、慌ただしくフォークリフトを操る笹やん。
そんな笹やんのフォークリフトの前を、カゴ車を押している
ナイトウさんが横切りました。
オイッ！！
そんな笹やんの怒声が響くのと、ナイトウさんの押すカゴ車が
倒れたのが同時だったんじゃないかと思います。
ガッッシャア───────ン！！！
と言う大音響が周辺に轟き、辺りで作業している者は息を止めて
何があったのかと、そちらの方へ目を向けました。
もちろん、僕の耳にも届きましたので、僕も手にしていた商品を
持ったまま、音が聞こえた方を眺めました。
やがて…、
うわぁ～～
おいおい、ひでぇなぁ…
大丈夫？
ケガしてない？
どーするコレ？
近くにいた人たちが、それぞれ声をあげました。
僕も近くまで行って見てみると、フォークリフトに接触して
倒れたカゴ車の側面がひん曲がってしまっていて、カゴ車に
積んであった商品は、ダンボールケースが破損し、さらには
パッケージまで破れ、中身の冷凍鮭フリッターが床上に散乱
していました。
それもおびただしい量です！
床上に無数にゴロゴロ散乱する鮭フリッター！
ズタズタに破損したダンボール！
ぐにゃりと側面が曲がった状態で倒れているカゴ車！
･･･････････
笹やんは無言のまま、停止したリフトに乗って、この状況を
見つめています。
そして、ナイトウさんも…
無言、無表情のまま、ぼんやりと立っています。
どうやら、笹やんもナイトウさんも、ケガをした様子は
なさそうです。
うわぁ、こりゃ、
大変だよ…
そんなことを言いながら、数名の作業者が鮭フリッターを
拾い始めました。
中には、ポケットに入れている人もいたのは事実です。。。
この鮭フリッター、
旨いんかなぁ…
僕は、そんなことを思いつつ、一緒になって散乱している
鮭フリッターを片づけることにしました。
倒れたカゴ車を起こし、ギィギィ言わせながら庫外へ運び出す人、
散らばったダンボール屑を拾い集める人、鮭フリッターをゴミ袋、
またはポケットの中に入れる人…、
のらりくらりと、作業員たちが片づけ始めていると、笹やんが
我に返ったように、
ナイトーっ！
危ないやろ！
リフトが通るのわからんのか！？
と、ナイトウさんに向かって怒鳴り出しました。
･････････
ナイトウさんは、黒縁メガネの奥から、チラッと笹やんを
見たようですが、無言のまま、ぼんやり立っているだけです。
リフトの通り道をノロノロと
カゴ車押してんじゃねぇ！
なぁ？
聞いとるンか！！
ナイトーっ！
一般道では歩行者優先というルールがあるのですが、ここのセンター
ではリフトの通路はリフト優先で、カゴ車を押していても引いて
いても、カゴ車を扱っていなくても、歩行者はリフトを避けて、
先にリフトを通すと言うのが慣例になっているようです。
バタバタで忙しいのは
わかるけどなぁ、オレだって
バタバタなんだ！
気ィつけろ！
そんな、ちょっとワケわからない言い方をする笹やんに対し、
ナイトウさんは無言を徹したまま。。。
それもピクリと表情ひとつ変えません。。。
まさにポーカーフェイスだ！
僕は改めて、ナイトウさんってスゴイなぁ…と思いました。
そう言えば、これまでナイトウさんと会話どころか、挨拶しても
何も返してもらったことがなく、ナイトウさんの声を聞いたこと
滅多にありません！
どんな声だったっけ…？
喜怒哀楽を面に表わさず…、って言うか、喜怒哀楽そのものが
ないぐらい感情が閉鎖されているようで。。。
一方の笹やんは喜怒哀楽を表わし過ぎで、今も大激怒の面相。。。
めっちゃイラついているのが手に取るようにわかります。
オイッ！
コラッ！
何とか言わんか！
ナイトーっ！
オマエ、悪いと思っとらんのか！？
オマエのせいで、みんなの作業が
止まってしまったやないか！
オマエ、ボ～ッと突っ立ってないで
一緒に片づけんかッ！
･････････
そんなことを言われても、相変わらず突っ立ったままの
ナイトウさん。。。
こうなるとポーカーフェイスとか、無感情とかじゃなくて
何だか全く気力のない人にも思えてきますが…。
周りの人の中には、こんなやり取りを見ていて苦笑を漏らす
人も出てきました。
聞けばナイトウさんは、週4日、ここでバイトをしているそうで、
勤務態度は黙々と作業をする、真面目な人らしいのですが、
とにかくマイペースで、周りと歩調を合わせようとせず、時に
笹やんから、こんなふうに怒声を浴びせられることがあるとの
ことです。
で…、散乱した鮭フリッターを片づけてから、再び、それぞれ
作業に戻り、何とか一段落しまして…、
やれやれ…って感じで、缶コーヒーを飲みながら休憩していたら、
笹やんがやってきて、
まったくナイトウの野郎…
ウンともスンとも言わずに…
あいつは鉄仮面みたいなヤツだな…
と言いながら、タバコに火をつけました。
鉄仮面…？
鉄仮面って何だっけ…？
何で鉄仮面なの…？
無表情って意味で鉄仮面…？
それとも、ナイトウさんのナイトに掛けて鉄仮面…？
何だか、わかったような、わからないような…、そんな
笹やんの一言が妙に気になりながらも、僕は、
ナイトウさんって何者なんだろ…？
と、これまた妙にナイトウさんのことが気になってきた
のでした。。。
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トラブルがありまして…。
トラブルを引き起こしたのはバイトのナイトウさん。
彼は誰とも会話したことがないと言われるほど無口で、
何時いかなる時も表情を変えたことがないと言われるほど
無表情な人です。
年齢は、見た目、30代前半ぐらいに見えますが、ウワサに
よりますと、まだ20代だそうで…、
老けて見えるようですが実際は若いんじゃないかと周りから
言われています。
とにかく話さない、表情が読み取れない…、そんな人なので
謎に包まれています。
で…、
連休中のせいか出庫量が多く、バタバタ続きのセンター内で
血相変えて、慌ただしくフォークリフトを操る笹やん。
そんな笹やんのフォークリフトの前を、カゴ車を押している
ナイトウさんが横切りました。
オイッ！！
そんな笹やんの怒声が響くのと、ナイトウさんの押すカゴ車が
倒れたのが同時だったんじゃないかと思います。
ガッッシャア───────ン！！！
と言う大音響が周辺に轟き、辺りで作業している者は息を止めて
何があったのかと、そちらの方へ目を向けました。
もちろん、僕の耳にも届きましたので、僕も手にしていた商品を
持ったまま、音が聞こえた方を眺めました。
やがて…、
うわぁ～～
おいおい、ひでぇなぁ…
大丈夫？
ケガしてない？
どーするコレ？
近くにいた人たちが、それぞれ声をあげました。
僕も近くまで行って見てみると、フォークリフトに接触して
倒れたカゴ車の側面がひん曲がってしまっていて、カゴ車に
積んであった商品は、ダンボールケースが破損し、さらには
パッケージまで破れ、中身の冷凍鮭フリッターが床上に散乱
していました。
それもおびただしい量です！
床上に無数にゴロゴロ散乱する鮭フリッター！
ズタズタに破損したダンボール！
ぐにゃりと側面が曲がった状態で倒れているカゴ車！
･･･････････
笹やんは無言のまま、停止したリフトに乗って、この状況を
見つめています。
そして、ナイトウさんも…
無言、無表情のまま、ぼんやりと立っています。
どうやら、笹やんもナイトウさんも、ケガをした様子は
なさそうです。
うわぁ、こりゃ、
大変だよ…
そんなことを言いながら、数名の作業者が鮭フリッターを
拾い始めました。
中には、ポケットに入れている人もいたのは事実です。。。
この鮭フリッター、
旨いんかなぁ…
僕は、そんなことを思いつつ、一緒になって散乱している
鮭フリッターを片づけることにしました。
倒れたカゴ車を起こし、ギィギィ言わせながら庫外へ運び出す人、
散らばったダンボール屑を拾い集める人、鮭フリッターをゴミ袋、
またはポケットの中に入れる人…、
のらりくらりと、作業員たちが片づけ始めていると、笹やんが
我に返ったように、
ナイトーっ！
危ないやろ！
リフトが通るのわからんのか！？
と、ナイトウさんに向かって怒鳴り出しました。
･････････
ナイトウさんは、黒縁メガネの奥から、チラッと笹やんを
見たようですが、無言のまま、ぼんやり立っているだけです。
リフトの通り道をノロノロと
カゴ車押してんじゃねぇ！
なぁ？
聞いとるンか！！
ナイトーっ！
一般道では歩行者優先というルールがあるのですが、ここのセンター
ではリフトの通路はリフト優先で、カゴ車を押していても引いて
いても、カゴ車を扱っていなくても、歩行者はリフトを避けて、
先にリフトを通すと言うのが慣例になっているようです。
バタバタで忙しいのは
わかるけどなぁ、オレだって
バタバタなんだ！
気ィつけろ！
そんな、ちょっとワケわからない言い方をする笹やんに対し、
ナイトウさんは無言を徹したまま。。。
それもピクリと表情ひとつ変えません。。。
まさにポーカーフェイスだ！
僕は改めて、ナイトウさんってスゴイなぁ…と思いました。
そう言えば、これまでナイトウさんと会話どころか、挨拶しても
何も返してもらったことがなく、ナイトウさんの声を聞いたこと
滅多にありません！
どんな声だったっけ…？
喜怒哀楽を面に表わさず…、って言うか、喜怒哀楽そのものが
ないぐらい感情が閉鎖されているようで。。。
一方の笹やんは喜怒哀楽を表わし過ぎで、今も大激怒の面相。。。
めっちゃイラついているのが手に取るようにわかります。
オイッ！
コラッ！
何とか言わんか！
ナイトーっ！
オマエ、悪いと思っとらんのか！？
オマエのせいで、みんなの作業が
止まってしまったやないか！
オマエ、ボ～ッと突っ立ってないで
一緒に片づけんかッ！
･････････
そんなことを言われても、相変わらず突っ立ったままの
ナイトウさん。。。
こうなるとポーカーフェイスとか、無感情とかじゃなくて
何だか全く気力のない人にも思えてきますが…。
周りの人の中には、こんなやり取りを見ていて苦笑を漏らす
人も出てきました。
聞けばナイトウさんは、週4日、ここでバイトをしているそうで、
勤務態度は黙々と作業をする、真面目な人らしいのですが、
とにかくマイペースで、周りと歩調を合わせようとせず、時に
笹やんから、こんなふうに怒声を浴びせられることがあるとの
ことです。
で…、散乱した鮭フリッターを片づけてから、再び、それぞれ
作業に戻り、何とか一段落しまして…、
やれやれ…って感じで、缶コーヒーを飲みながら休憩していたら、
笹やんがやってきて、
まったくナイトウの野郎…
ウンともスンとも言わずに…
あいつは鉄仮面みたいなヤツだな…
と言いながら、タバコに火をつけました。
鉄仮面…？
鉄仮面って何だっけ…？
何で鉄仮面なの…？
無表情って意味で鉄仮面…？
それとも、ナイトウさんのナイトに掛けて鉄仮面…？
何だか、わかったような、わからないような…、そんな
笹やんの一言が妙に気になりながらも、僕は、
ナイトウさんって何者なんだろ…？
と、これまた妙にナイトウさんのことが気になってきた
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