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しっぽく蕎麦を食べました

昼に入ったそば屋さんでメニューを眺めていたら、

  しっぽく

と書かれていました。

たぬき、きつね、天ぷらなど馴染みのあるメニューの中に
いきなり、

  しっぽく

と出てきたので、一瞬、えっ?と思いましたが、落語の
「時そば」を思い浮かべました。

屋台のそば屋で、客が代金を払っている途中で、

  今、何時だい?

と尋ね、これに店主が、

  九つです

と答え、それに合わせて客が、十、十一、十二…とお勘定を
一文ごまかす場面があります。

その客が注文したのが、確かしっぽく蕎麦だったはずです。

その客は、出てきたしっぽく蕎麦を食べながら、

  いいダシだね!

とか、

  ちくわ麩じゃなく、
  ちくわも本物を使ってるね!

などと言って店主をおだてます。

僕は、しっぽく蕎麦とは何なのか知りませんが、少なくとも
ちくわが具に入っていることは間違いないようで、今、ここで
「しっぽく」と書かれたメニューを見つけ、それを食べてみようと
思いました。

soba_sippoku1312.jpg

これが、このそば屋さんのしっぽく蕎麦です。

具は、カマボコ、しいたけ、のり、玉子焼き、それに刻みねぎと
ゆずの皮が入っていました。

落語「時そば」では、ちくわ、またはちくわ麩が入っているらしいの
ですが、ここはちくわの代わりにカマボコを使っているようです。

全体的に、それほど豪華ではないけど、いろんな種類の具を入れた
蕎麦という感じです。

つゆを吸ってみると、これは「時そば」同様に、いいダシが効いて
いて、ゆずの香りも悪くありません。

蕎麦はそこそこコシがあって、のど越しの良いなめらかな食感です。

具の中では、カマボコが意外と旨くて、安いモノじゃなく、上等の
カマボコを使ってるという感じで、ここは「時そば」のちくわと
同様に褒めてあげてもイイと思いました。

こうして初めてしっぽく蕎麦を食べましたが、値段は700円と、
まぁ安い方ではありませんでした。

「時そば」のしっぽくは「二八そば」で、二×八=十六の十六文と
なっていましたが、700円が当時の十六文だとすれば、一文は44円
ぐらいになると言うことでしょうか?
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NO NAME

『時そば』に出てくる「花巻」と「しっぽく」は当時の貨幣価値からすれば
“おかしな”演出なのですよ
(現在演じられている落語自体が大部分が明治から昭和にかけて、改変され続けて形ができあがっているので、江戸期そのままではありませんし、時代考証は無視されているものです)

現代の『時そば』の演出は、大坂で演じられていた『時うどん』を明治期に東京に移植したとされます(江戸期に原型となる小咄は存在していた)

で、元は単に16文のかけうどんを一杯食べていたのですが、東京に移植されてからなぜか「しっぽく」と「花巻」というセリフが加えられます
江戸後期ではかけそばが16文で、しっぽくや花巻のように具が乗った種物はそれ以上の値段です
(かけそば・うどんが16文で、天ぷら・花巻・しっぽくがそれぞれ24文の記録があります)
まあ、安価な屋台のそばですから、竹輪が乗っただけのそばを「しっぽく」、質の悪い海苔を浮かべただけで「花巻」と大げさに表現したのかもしれません

「しっぽく(卓袱)」は長崎生まれの食事方法で、大きなお膳にたくさんの食事を乗せて接客するという、西洋や中国風のもてなし方です
当時の日本は一人ひとりに小さなお膳が配される方式ですから、異国情緒あったのでしょう
そこからたくさんの具材をのせたうどんやそばを「しっぽく」とも言うようになります
ですから本来の「しっぽくそば(うどん)」は具だくさんですが、落語のあるしっぽくは別物ですね

なお、ちくわとかまぼこも機械化されるまでは、練り物でも棒につけて焼くちくわに比べ、板に盛って蒸すかまぼこは手間が掛かるため、ちくわよりも高価でした
つまり高級食材であるかまぼこではなく、ちくわなのもこういう理由です

ちなみに1文の価値は時代にもよりますがおおむね20~50円だそうです


by NO NAME (2014-06-03 13:09) 

あべしん

コメントありがとうございます。

そうですよね!
かけそば16文なら、具入りはそれより高くなる
はずですね。

なるほど落語も時代考証という点を加えて
聞いていると合点のいかない部分も出て
来るもんですね。

とても参考になりました。
by あべしん (2014-06-08 14:52) 

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