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笹やん 名台詞

バイト先の冷凍食品の物流センターで、今日、
『ミスゼロ推進運動』なるものの説明がありました。

午後1時、センター長が、40代半ばと思われる女性を連れて、
事務所前に社員4人とバイト10人ほどを集め、説明を
はじめました。

どうやら、集められたのは僕を含め、平日以外に出勤する
バイトのようで、既に、他の曜日にも同じ説明会が
おこなわれたそうです。

また、集まった社員も、前回の説明会に出席できなかった
人たちのようで、笹やんも加わっていました。


まず、センター長が、

 ●商品を入庫、出庫する際の数量間違いをなくすこと。

 ●商品の取り扱いに気を配り、破損をなくすこと。

など、作業上のミスをゼロにすることを目的として、
今後、センターで働く者全員で活動に取り組んでいく。

そのため、今年4月からコンサルに協力してもらい、
このセンターの作業状況を確認し、改善点を指摘して
もらった。

まず今日は、簡単にコンサルの方から、これからの
活動について説明してもらうから、よく聞くこと。


だいたい、以上のような内容の説明があり、続いて、
40代半ばの女性が、一歩前に出て会釈してから、

  ×××コンサルタントのイシダです。

と自己紹介から始まったのですが、この女性…、

パッと見た感じ、コンサルって言うより、
どこかのスナックのチーママみたいな派手めの
服装だし、髪も赤茶に染めてるし、爪は何だか
キラキラしたマニュキュア塗ってるし…、

それに何よりも、香水なのか、化粧なのか、
とにかくすごく匂う!

一歩前に出た瞬間に、空気が揺れたせいか、
匂いが、ぷ~~~んと僕の鼻を刺激しました。

日頃、汗や埃の匂いに慣れきっている僕には、
この手の匂いに違和感を感じます。


ま、それはそうと、イシダさんは笹やんの顔を
見て、

  DからFのロケーションの商品在庫の
  精度が悪いみたいです。
  早急に正しい在庫を把握してください。

と言うと、笹やん…、

キッとイシダさんを睨んだような気がしました。

でもイシダさん、気にする様子もなく説明を続けて
いきます。

しばらく説明すると、また笹やんを見て、

  あなたの管轄の出庫作業が
  一番、時間が掛かっている
  みたいですから、ちゃんと
  作業者を管理してください。

と言うと、

  その時間は入庫もあって、
  イチイチ作業者のことなんか
  見てられないじゃんねぇ~。

笹やんが言い返しました。

  でも、あなたはこのセンターの
  社員でしょ?
  社員が自分の管轄する作業者を
  管理することがルールのはずです。

と、イシダさんが畳みかけるように言えば、

  いや…、ルールはルールだけど、
  人間、ひとつのことしか
  できないじゃんねぇ~。

笹やんの反撃。

  ほかの社員の方も同じ立場に
  いながら、努力されてるんですから、
  やってもらわないと…。

イシダさん、ちょっと攻撃的な口調になってきた
感じです。

笹やん、無言…。

  入庫の時間帯であっても、
  ずっと入庫に負われてる
  わけじゃないでしょ?
  それに入庫担当の作業者も
  何人かいるわけだし…。
  あなた一人っきりで入庫の作業を
  しているのなら別だけど、
  そうじゃないでしょ?

と、イシダさんの猛撃。

一方の笹やん、無言…。

  現場作業は極力、バイト作業者に指示して
  やってもらってください。
  社員の方は、管理者であるという
  自覚を持ってほしいんです。
  一緒になって作業するのではなく、
  作業現場の中で目配りができるように
  なってほしいと言っているんです。  
  それをあなたにも、やっていただきます。

イシダさん、とどめを刺したかのように思えました。

しばしの沈黙。。。

やがて…、

笹やんが、スゥ─────っと鼻から大きく息を吸い込む
気配がしました。

そして、周囲の目を醒ますような大声で、


  過労死してまうやろっっ!!


と笹やんが吠えたのでした。

再び、しばしの沈黙。。。


  ・・・・・・すれば…。

沈黙を破ったのは、イシダさんのこの一言でした。

周りは何のことかわからないと言った表情。

  ま、今のは冗談ですけど…、
  決して無理なことは言ってませんから
  少しずつでいいですから、管理者の
  業務をして行くようにお願いします。

イシダさんは、笹やんに笑いかけながら、でも目は険悪な
感じで、そう言いました。

それから、10分ほど説明は続いて、解散になりました。


僕らは作業のため、センター内へ入っていきました。

バイト同士で確認してみると、やっぱり、さっきの説明は
みんな、ほとんど聞いていなかったみたいでした。

そのうち、隣の作業場で、ひとりのバイトが商品を
抱えて歩いていると、別のバイトが、早くしろと
せかしていました。

すると、商品を抱えていた方のバイトが、

  過労死してまうやろっっ!!

と大きな声で言っているのが聞こえました。


その後も、別のバイトが同じように、

  過労死してまうやろっっ!!

と叫んでいるのを聞きました。


みんな、説明会の内容は聞いていなくても、
笹やんの、あの名台詞だけは頭にしみ込んだようです。


追記

笹やんは、あれからイシダさんのこと、
“ニオイ”と呼んでました。

あの匂いが気になったのは、僕だけじゃ
なかったんです。
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