________________________________________________________________________

笹やん 雪だるま

  先月中、3ケースの誤差があったのに、
  何で先月末の棚卸で誤差が
  なくなっとるンや?

誰に話しかけているわけでもなく、そんなことをつぶやきつつ、
首をひねるセンター長。

実地数量では間違いなく3ケース不足だった商品。

不足になってしまった原因は不明のまま。。

それが先月末の棚卸では、ピッタリ帳簿と合っている!

センター長は、改めて収納ラックへ行って、在庫を確認してきた
みたいです。

  やっぱ、不足しとる…。
  3ケース足りんがや…。

他にも先月末の棚卸で、いきなり帳尻が合っている商品が5品ある
そうで。。。

  単純に数え間違いでもなさそうやし…、
  おかしいナァ~。。

まるで独り言のように言いながら、庫内の作業場と収納ラックの
間を行ったり来たりしているセンター長。

僕らは、その様子をチラ見しながら、仕分け作業をしているのでした。

もちろん笹やんも、チラチラとセンター長の顔を窺いつつ、フォーク
リフトを操っていました。

こうして午前中の作業が終わり、昼休みを済ませ、再び庫内へ戻ると、
しばらくして、またセンター長がやって来ました。

今度は、はっきりとこちらの方に向かって来るのがわかります。

しかも、しっかりと笹やんを見据えて、しっかりした足取りで
向って来ているのです。

その様子をチラチラ窺いながらも、笹やんはリフトに乗って、
商品を搬入しています。

ピピィー ピッ ピッ・・

リフトから発する電子音と共に、軽妙に商品を搬入し続ける笹やん。

  おいっ!笹○!

ピピィー ピッ ピッ・・


  おいっ!笹○!

ピピィー ピッ ピッ・・

センター長が大声で2回、笹やんを呼びました。

が…

聞こえないのか、笹やんはフォークリフトの操作を止めません。


  おいっ!笹○!
  エエ加減にしろ!

ピッ・・

・・・・聞こえないわけがないのです。。

センター長は、笹やんの真横にいて、そこで笹やんの顔をまともに
見上げつつ、超大声で叫んでいるわけですから…。

リフトの手を止め、わざとらしく澄ました目つきでセンター長を
見る笹やん。

  やあ、どうしたンすか?
  センター長。

これまた澄まして、わざとらしいセリフを吐く笹やん。

  何が「どうしたンすか?」や!
  どうしたもこうしたもねーわっ!!

これから始まるであろう笹やんとセンター長の「新喜劇」に、僕ら
バイトは胸躍らせるのでした。。。

センター長の話では…

これまで在庫誤差が続いており、誤差原因が不明のままであった
6種類の商品が、先月末の棚卸で、なぜか帳尻が合っている。

中には10ケース以上の誤差があったのに、いきなり誤差がなくなって
いる。

おかしいと思い、午前中に改めて在庫を確認し、帳簿と照合させて
みると、やはり誤差が生じたままだった。。。

それで、それらの商品を調べてみると、

  その6種類の商品、ぜーんぶ、
  オメーの担当の商品じゃねーか!

どうやら笹やんは、帳簿を改ざんしたようで。。。

これは要するに、誤差が生じると「在庫誤差報告書」なる書類を
作成させられることになり、その中でも誤差原因については、
詳細に報告しなくてはならず、その問題点と対策までも明確に
追究されるみたいで…

  オメー、それが面倒で、勝手に
  帳簿改ざんしたンかいっ!?
  コラッ!!

聞けば毎月、笹やん担当の商品は、必ず数品は誤差が生じており、
必ず報告書を書かされているとのこと。

詳しく誤差原因を調べ上げて書け! と言われても、笹やんは、
ほぼ稚拙な内容か、空白のまま提出しているそうで。。。

  オレも今までおかしい、おかしいと
  思ってはいたけどよぉ~。。
  おまえってサァ、ほぼほぼ毎月、
  改ざんしとるやろ?
  なぁ?

見るとセンター長の目は、涙をにじませているようで・・

その涙は、怒りとか、哀しみとか、そんなモンじゃなくて、

  オメー、なんちゅうコトして
  くれるんや!
  これが本社にバレてみろ!
  オレ、もう…
  もうアカン…。

って言う感じの涙でしょうね…。

どうやら笹やんは、誤差がある商品を2、3ヵ月は放置したままに
しておいたり、それでそのあと帳尻を合わせてしまったり、
かと思えば、再び2、3ヵ月後に誤差を出したり…

もう何年もの間、何種類もの商品に対し、そんなふうに改ざん
してきたみたいです。。。

  けど…、
  オメー、帳尻合わせのために、
  現物商品そのものの数量も
  変わっとるがや…。
  これはどーゆーコトなんや?

センター長は、目をテンにして笹やんに尋ねました。

すると笹やん、なおも澄まし込んだまま、

  納品先への納品数を
  調整するんですよ。

と言いました。

  は・・?

目をテンにしたままセンター長は、少しの間、ポカンと口を
開いたままでしたが、

  調整って、オメー、、
  まさか、伝票とは違った数量を
  納めさせているんじゃねーだろうな?

そう言うと、

  納品先もいろいろで、ロクに検品せずに
  受け取る店舗も少なくない。
  検品すらしないで、そのままカゴ車に
  積んだ状態のまま受け取る店舗だって
  あるくらいですよ。

サラリとした口調で答える笹やん。

  アホかっ!
  アカンやろ!
  得意先にバレたら大問題やぞ!
  なぁ?
  オメー、わかっとるンか?
  おい! なぁ?
  帳簿を改ざんすることも、
  数量を誤魔化して納品することも、
  犯罪なんやゾ!
  大犯罪なんやゾ!

もはやセンター長の目には、誰が見ても明らかなほど、ビビリの
涙でにじみ切っています!

しかし…と、センター長は言うのです。

今さら納品先に言うわけにもいかず、また、本社に知らせることも
できず、それよりも、いつ、どれだけ、どの商品に誤差が発生して
いたのか・・

全くわからない状態になっているわけで・・

って、これぞまさに笹やんの狙い!

  おいおい、オメー、どう思っとるのか
  知らんけどよぉ…
  こう言うのって、初めのうちは
  大したことないと思っていても
  雪だるまのように、どんどん大きく
  なってまうンやぞ!
  誤差金額やら未納金額やら、ホントに
  雪だるま式に増えていってまうやろ!
  どーする気なんや!

そんなセンター長の不安を余所に、笹やんは、こう答えました。

  どれだけ大きな雪だるまも
  春になって暖かくなれば
  溶けてなくなる。
  それと同じで時が経てば、
  こんなモン消えてなくなりますよ。


  ンなわけねーだろっ!!

この雪だるま、やがて、このセンターを押し潰してしまうかも
知れません。。。

でも、こんなコトをやってのけるのは、笹やんだからこそ!

笹やんがやると、罪のないチョットしたイタズラに思えるから
何とも不思議です・・!
にほんブログ村 オヤジ日記ブログへ
にほんブログ村




nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感