笹やん 一人旅
バイト先の最年少社員であるオーシバさん。
彼は、根は真面目ですが、どうもミスが多いようで…
この年末年始も、バタバタで忙しかったこともあり、その分、
いろいろミスを仕出かしたみたいで、その度にセンター長から
コテンパンに叱られ、すっかり落ち込んでしまって…
そんなオーシバさん、追い打ちを掛けるように、今日も…
おいっ！オーシバ！
作業場に、センター長の大声が響きました。
おまえ、スーパー××の特売分の
冷凍中華まん、早よ出さんかっ！
積込みに間に合わんやろっ!!
これに対し、オーシバさん、澄まし顔で、
出してありますよ。
落ち着いた声で答えました。
どこに出とるンや！？
なおも大声で言うセンター長。
そこです。
オーシバさんは、そう言って、積込みバースの方を指差すのでした。
･･････････････････････
･････････････････
･･･････････!!
しばらく無言のまま、そちらの方を凝視するセンター長。
やがて･･、
2ケースしか出とらんがや！
何で2ケースなんや？
なぁ？ おいっ！
噴火寸前…って感じの声で、センター長がオーシバさんに尋ねます。
2ケースとバラで17個…、
これで65個ですよね。
まだ澄まして言うオーシバさんに、
アホか！
何が65個ですよね…だっ！
特売やっつーのに、65個なワケねーやろ！
13店舗あるンやぞ！
なぁ？
わかるか？
スーパー××は13店舗あるンやぞ！
13店舗で65個って…、おまえ…、
1店に5個やぞ…。
なぁ？
わかるか？
1店に5個って、そんなモン、定番でも
もっと多く納品するわッ!!
大噴火したセンター長！
65個やなくて、65ケースに
決まっとるやろ！
早よ、出して来いっ！
センター長の火山灰を、まともに食らったオーシバさん。。。
一気にあたふたして、商品の出庫に駆け回ります。
そんな様子を、すぐ隣の作業場からフォークリフトに乗りながら
見聞きしていた笹やん、
あいつ、おもしれぇコト
やっとるなぁ～。。。
ニタ～っと笑いながら、つぶやくように言いました。
20分ほど経ち･･
何とか、スーパー××特売分の冷凍中華まん、65ケースを出庫して
積込みに間に合わせたものの･･
センター長のお叱りは、まだまだ続きます。。。
どんだけ慌ただしい時でも伝票の
数量単位は、再三、確かめるクセを
つけろと言っとるにもかかわらずっ！
ついこの前、おまえ、年末のえび天そばは、
バラとケースを間違えて、1店に100個
納めりゃエエものを、100ケースも注文が
来たと言って、一人で大騒ぎしやがって！
伝票の数量単位を確かめる以前に、
1店で100ケースも納品できるわけねーだろ！
どこへ100ケースも入れるンやて！
ぷるぷるっ…
やがてオーシバさんは、例の片頭痛なのか、2、3度、頭を左右に
振りました。
しかも、目を潤ませているみたいで･･
それを見たセンター長。さすがにこれ以上、叱るのは控えたようで、
事務所へ戻って行ったようです。
で…
笹やんは、相変わらず、ニタニタ笑いながら、そんな様子を見て
いたのでした。。。
午後3時…
笹やんと僕らバイトは、休憩のため、作業場から離れることに･･
その時、近くにいたオーシバさんに、笹やんが声を掛けました。
おぅ！ヘンズツー。
ここらでひと息入れろや。
笹やんの後について、もたもたと庫外の自販機へと歩いていく
オーシバさん。
僕らは、それぞれ缶コーヒーなどを買い、自販機の前で休憩。
ジュル、ジュル･･
うつむきがちに、缶コーヒーを音を立てて飲むオーシバさん。
飲みながら、ポツリポツリと、隣のベンチに腰掛けてタバコを
吸っている笹やんと何か話しているみたいです。
そのうち、笹やんが大きな声で、
おまえ、そんなの気に
することないぞ！
オーシバさんに言いました。
そこへ、若手バイトのスダさんも加わり、
そうだよ、オーシバさん。
そんなんでイチイチ落ち込んでたら、
笹やんなんか、年中落ち込んでなきゃ
いけない！
そう言って、笑いを取りました。
なんや、スダ！
おまえ、オレに向かって。。
笹やんも笑いながら、スダさんを睨んで言いました。
この空気に、少しは気が軽くなったようで、オーシバさんが
いきなり、こんなコトを言い出しました。
1週間くらい、休みたい…。
休んで、旅をしたい…。
･･････････ 周りは、しばらくシ～ンとしました。
は･･？
なんや、ソレ？
笹やんが、目をテンにしながら言いました。
一人旅をしたい…。
まるで独り言を言っているような感じのオーシバさん。。。
自分探しの旅をしたい…。
それを聞いて、
は･･？
なんや、ソレ？
もう一度、笹やんは、同じことを言いました。
そして、新しいタバコに火を点け、深く吸って、ゆったりと煙を
吐きながら、
一人旅をして自分なんか
探せるワケないやろ。
だいたい自分を探す必要なんか
どこにある？
いつだって、どこだって
今の自分が、自分でしかないンだ。。
オーシバさんを真っすぐに見て、そう言ったのです。
･･････････････････････
･････････････････
オーシバさんだけでなく、その場にいた僕ら全員、その言葉に感銘を
受けつつ聞き入ったのでした。
やがて、何か言おうと口を開くオーシバさんに向かって、
どうしても自分を探したいのなら、
旅に出なくても、もっと自分を
見つけられる方法がある！
と言いました。
･･････････････････････
･････････････････
オーシバさんだけでなく、その場にいた僕ら全員、次の言葉に
期待しつつ、黙って待っていたのです。
が･･
サウナに入れ！
10分だ！
10分耐えたら、そこでさらに
1分、また1分…
そこで必ず自分が見つかる！
見えてくる！
って、ホントかねぇ!?
そう思ったのは、僕だけじゃなく、たぶん、その場にいた全員。。。
でも、まぁ･･
いつだって、どこだって
今の自分が、自分でしかないンだ。。
って言葉、何だか哲学的っつーか…、禅的っつーのかナ？
「笹やん名言集」に加えておきたいと思います。。。
にほんブログ村
彼は、根は真面目ですが、どうもミスが多いようで…
この年末年始も、バタバタで忙しかったこともあり、その分、
いろいろミスを仕出かしたみたいで、その度にセンター長から
コテンパンに叱られ、すっかり落ち込んでしまって…
そんなオーシバさん、追い打ちを掛けるように、今日も…
おいっ！オーシバ！
作業場に、センター長の大声が響きました。
おまえ、スーパー××の特売分の
冷凍中華まん、早よ出さんかっ！
積込みに間に合わんやろっ!!
これに対し、オーシバさん、澄まし顔で、
出してありますよ。
落ち着いた声で答えました。
どこに出とるンや！？
なおも大声で言うセンター長。
そこです。
オーシバさんは、そう言って、積込みバースの方を指差すのでした。
･･････････････････････
･････････････････
･･･････････!!
しばらく無言のまま、そちらの方を凝視するセンター長。
やがて･･、
2ケースしか出とらんがや！
何で2ケースなんや？
なぁ？ おいっ！
噴火寸前…って感じの声で、センター長がオーシバさんに尋ねます。
2ケースとバラで17個…、
これで65個ですよね。
まだ澄まして言うオーシバさんに、
アホか！
何が65個ですよね…だっ！
特売やっつーのに、65個なワケねーやろ！
13店舗あるンやぞ！
なぁ？
わかるか？
スーパー××は13店舗あるンやぞ！
13店舗で65個って…、おまえ…、
1店に5個やぞ…。
なぁ？
わかるか？
1店に5個って、そんなモン、定番でも
もっと多く納品するわッ!!
大噴火したセンター長！
65個やなくて、65ケースに
決まっとるやろ！
早よ、出して来いっ！
センター長の火山灰を、まともに食らったオーシバさん。。。
一気にあたふたして、商品の出庫に駆け回ります。
そんな様子を、すぐ隣の作業場からフォークリフトに乗りながら
見聞きしていた笹やん、
あいつ、おもしれぇコト
やっとるなぁ～。。。
ニタ～っと笑いながら、つぶやくように言いました。
20分ほど経ち･･
何とか、スーパー××特売分の冷凍中華まん、65ケースを出庫して
積込みに間に合わせたものの･･
センター長のお叱りは、まだまだ続きます。。。
どんだけ慌ただしい時でも伝票の
数量単位は、再三、確かめるクセを
つけろと言っとるにもかかわらずっ！
ついこの前、おまえ、年末のえび天そばは、
バラとケースを間違えて、1店に100個
納めりゃエエものを、100ケースも注文が
来たと言って、一人で大騒ぎしやがって！
伝票の数量単位を確かめる以前に、
1店で100ケースも納品できるわけねーだろ！
どこへ100ケースも入れるンやて！
ぷるぷるっ…
やがてオーシバさんは、例の片頭痛なのか、2、3度、頭を左右に
振りました。
しかも、目を潤ませているみたいで･･
それを見たセンター長。さすがにこれ以上、叱るのは控えたようで、
事務所へ戻って行ったようです。
で…
笹やんは、相変わらず、ニタニタ笑いながら、そんな様子を見て
いたのでした。。。
午後3時…
笹やんと僕らバイトは、休憩のため、作業場から離れることに･･
その時、近くにいたオーシバさんに、笹やんが声を掛けました。
おぅ！ヘンズツー。
ここらでひと息入れろや。
笹やんの後について、もたもたと庫外の自販機へと歩いていく
オーシバさん。
僕らは、それぞれ缶コーヒーなどを買い、自販機の前で休憩。
ジュル、ジュル･･
うつむきがちに、缶コーヒーを音を立てて飲むオーシバさん。
飲みながら、ポツリポツリと、隣のベンチに腰掛けてタバコを
吸っている笹やんと何か話しているみたいです。
そのうち、笹やんが大きな声で、
おまえ、そんなの気に
することないぞ！
オーシバさんに言いました。
そこへ、若手バイトのスダさんも加わり、
そうだよ、オーシバさん。
そんなんでイチイチ落ち込んでたら、
笹やんなんか、年中落ち込んでなきゃ
いけない！
そう言って、笑いを取りました。
なんや、スダ！
おまえ、オレに向かって。。
笹やんも笑いながら、スダさんを睨んで言いました。
この空気に、少しは気が軽くなったようで、オーシバさんが
いきなり、こんなコトを言い出しました。
1週間くらい、休みたい…。
休んで、旅をしたい…。
･･････････ 周りは、しばらくシ～ンとしました。
は･･？
なんや、ソレ？
笹やんが、目をテンにしながら言いました。
一人旅をしたい…。
まるで独り言を言っているような感じのオーシバさん。。。
自分探しの旅をしたい…。
それを聞いて、
は･･？
なんや、ソレ？
もう一度、笹やんは、同じことを言いました。
そして、新しいタバコに火を点け、深く吸って、ゆったりと煙を
吐きながら、
一人旅をして自分なんか
探せるワケないやろ。
だいたい自分を探す必要なんか
どこにある？
いつだって、どこだって
今の自分が、自分でしかないンだ。。
オーシバさんを真っすぐに見て、そう言ったのです。
･･････････････････････
･････････････････
オーシバさんだけでなく、その場にいた僕ら全員、その言葉に感銘を
受けつつ聞き入ったのでした。
やがて、何か言おうと口を開くオーシバさんに向かって、
どうしても自分を探したいのなら、
旅に出なくても、もっと自分を
見つけられる方法がある！
と言いました。
･･････････････････････
･････････････････
オーシバさんだけでなく、その場にいた僕ら全員、次の言葉に
期待しつつ、黙って待っていたのです。
が･･
サウナに入れ！
10分だ！
10分耐えたら、そこでさらに
1分、また1分…
そこで必ず自分が見つかる！
見えてくる！
って、ホントかねぇ!?
そう思ったのは、僕だけじゃなく、たぶん、その場にいた全員。。。
でも、まぁ･･
いつだって、どこだって
今の自分が、自分でしかないンだ。。
って言葉、何だか哲学的っつーか…、禅的っつーのかナ？
「笹やん名言集」に加えておきたいと思います。。。
にほんブログ村
