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笹やん および腰

朝から、バイト先の笹やんチームは、どんよりと重い空気に
包まれていました。

いや、単に重い空気と言うのではなく・・

好奇心に満ちた、それでいて、やや不安げな重さのある空気と
言いますか・・

何だか、わかりづらい空気です。。。

ホント、何とも言いようのない不思議な空気を感じ、僕は
バイト仲間のヤノさんに、

  なんかあった・・?

声をひそめて尋ねてみました。

すると、ヤノさんは事もなげに、

  ヨコちゃん、出勤していないンだ。。

と答えました。

男子バイトのヨコイさん。彼は、僕より1時間早く出勤して
来るはずですが、今朝はまだ・・

それで笹やんによりますと、

  ヨコイは、ああ見えて無断欠勤どころか、
  遅刻や早退も一度だってしたことがなかった。
  それで、あいつのケータイに何度か電話して
  いるが、全然出ない…。

とのことです。

“ああ見えて”とは、どう見えているのか知りませんが、
笹やんの言う通り、ヨコイさんは仕事への姿勢は真面目です。

さらに、若手バイトのリーダー格であるスダさんによりますと、

  昨日の夜、オレ、帰り際に
  駐車場でヨコちゃんの車の
  助手席に、ヤミ子が座ってるの
  見たっス!

とのことです。。。


ってコトで…

独身で26歳のヨコイさんと、40代の女子バイトであるヤミ子の
不倫は、まだ続いていたってワケです。

ちなみに、ヤミ子ではなく、本当はユミ子と言うそうですが、
笹やんが彼女のことを、

  若い男を次々に毒牙に掛ける闇の女…、
  あいつはユミ子じゃねー!
  ヤミ子(闇子)だ!

などと言ったことから、今ではヤミ子で通っちゃってます。。。

  そうか…、あいつら…、
  まだ続いているのか。

笹やんが、つぶやくように言うと、

  ほぼほぼ週末は、あの二人、
  どこかへ出掛けているみたいヨ。


  ここまで公然と不倫してるのも
  珍しいね。


  もはや不倫とは言えねー!


  じゃ、なんて言うの?


  不倫は不倫やろ…。


  公然不倫・・?


  オープン不倫か?

周りにいた男女のバイトたちが、次から次へと口を開き出します。

  そんなコトより…


  どーすンの?
  笹やん…。


  もう1回、電話してみる?


  もしかして…


  なに?
  ナニなに・・?


  もしかしてだけどさぁ…。


  ナニ?


  車で事故っちゃったとか?


  いや、ヤミ子の旦那に
  バレたんじゃね?


  バレて、ヨコちゃん、
  監禁されてるとか・・?


  それでボコボコに殴られて、
  今頃、気ィ失ってるとか・・?


  顔中、血だらけになって、
  ヨコちゃん、壁にもたれ掛って
  いるンじゃね?


  それとも、どっかのラブホで
  死んでるかもヨ…。


  殺すなや!
  勝手に!

みんな、ホント勝手なことばかり・・

と、ここで笹やん、おもむろに、

  ゼット…、わりぃけど、
  ちょっとヨコちゃんの様子を
  見に行ってきてくれ。。

と、笹やんチームの中で、唯一の若手女子バイト・アサイさんに
言いました。

そう言われて、アサイさんは、

  ゼットじゃねーわっ!

大声を響かせました。。。

笹やんは、大学で柔道部に入っているアサイさんの大きくて
ガッシリとした体格から、どういうワケか、マジンガーZを
連想したらしく、彼女を“ゼット”と呼ぶのでした。。。

アサイさんは、とても明朗な性格で、思ったことをストレートに
口にするタイプです。

笹やんに対して、陽気にタメ口を使って会話しています。。。

  なんでアタシが、ヨコイさんの様子を
  見に行かなアカンの!
  どこに居るのかわからんのに・・!


  ヨコイのアパートの地図を書いてやるから、
  ちょっと行ってきてくれ。


  知るかっ!
  っつーか、そんなコトをバイトに
  やらすなって!

などと言い合っているうち、時刻は11時になり・・

未だ連絡が取れないので、さすがにセンター長も心配になって
きたらしく、作業場までやって来て・・

  おい、笹○…
  マジで何かあったかも知れんから、
  ヨコイの住んでいるアパートへ
  行ってこい!

そう言いますと、

  ええ、実はオレもそう思って、
  このゼットに行くようにと
  言ったんですが…、
  こいつったら、全然、言うこと
  聞かなくて…。

笹やん、妙に澄まし顔で、センター長に言いました。

  ゼットって…、
  おまえ、ナニ考えとるンや!
  何でアサイなんや?
  おまえが行かんとアカンやろ!

早くも怒気を含んだセンター長の声・・

  いやぁ、オレは手が離せないンで…。


  アホか!
  こんな時にナニ言っとるンや!
  あいつ、アパートで一人暮らしだから、
  何かあるとヤバいやろ!
  呑気なコト言っとらずに、様子を見に
  行ってやれ!


  ええ~~っ!
  オレが行くんスかぁ~。。。


  当然やろ!
  おまえ、ヨコイの管理責任者やろ!?


  いやイヤいや…、それだったらセンター長こそ、
  ここの責任者じゃないですか!
  ここは総責任者として、センター長、
  行って来てくださいよ!


  いやイヤいや…、まずは管理責任者として、
  おまえが行ってこい!
  それで何かあったら連絡をよこせ!
  そうしたらオレが出て行く…。


  いやイヤいや…、だったら最初から
  センター長、行って来ればイイじゃんねー!


  いやイヤいやイヤ…、だからぁ、
  まずはオメーが行けっての!


  いやイヤいやイヤ…、ここは総責任者が
  行くべきでしょ!


  いやイヤいやイヤ…


  いやイヤいやイヤ…


  いやイヤ…


  いやイヤ…

と、まぁ、このように・・

笹やんもセンター長も、揃っておよび腰なワケで。。

で…

今日一日、ヨコイさんからの連絡を待つことになりました。

・・って、結局、何もしないってコトでしょ・・?

でも、この日、とうとうヨコイさんから、何の連絡もなかったようで。。。
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