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笹やん 逆噴射

お昼、12時40分頃…

バイト仲間のヤノさんと僕は、近くのうどん屋で昼食を済ませ、
まだ午後からの作業まで時間があるので、休憩室で休むことに
しました。

昼休み時間の休憩室は、コンビニで弁当などを買ってきたり、
弁当を持参して来る人たちが、談笑しながら食事を摂っていて
にぎやかです。

珍しく笹やんもいました。

若手バイトグループに囲まれ、笹やんは和やかに話をして
いるようです。

この若手バイトグループのリーダーがスダさんで、彼を含め、
5人の男子たちが、笹やんを囲んでいるわけです。

笹やんは、スダさん率いる若手バイトグループのことを
「スダ一門」と呼んでいます。

そのスダ一門の1人に、ヤマシタさんという現在、22歳の
バイトがいます。

詳しいことは知りませんが、彼は大学を中退し、そのまま
バイト生活を続けているそうです。

このヤマシタさんは、周りから“キツネ目のヤマシタ”とも
呼ばれており、目が細くて少し吊り上っているので、そう
呼ばれているみたいです。

彼は、色白で背が高くて細身ですが、いつもニヤニヤ、ヘラヘラ
した感じの締まりのない表情が特徴です。。。

今、笹やんの真向かいにヤマシタさん、その隣にスダさんが
座っていて、笹やんの両隣には学生バイトが座っています。

僕とヤノさんは、給茶機からお茶を注いだ紙コップを持って、
笹やんたちから少し離れた席に腰掛けました。

そこの近くには、同じく笹やんチームの熟年女子バイト数人も
います。

普段、笹やんは、うどん屋かラーメン屋で昼食を摂ることが
多いはずですが、今日はスダ一門に混じって、コンビニで
買って来たらしい弁当を、ほぼ食べ終えていました。

  しかし、ヤマシタ。
  おまえ、そんなに牛乳
  飲んで大丈夫か?

笹やんが、向い側のヤマシタさんに言いました。

そうなのです。

僕も何度か見ていますが、スダ一門は、全員そろってコンビニで
昼食を買い、この休憩室で食べることにしています。

その中で、ヤマシタさんは、必ず1リットル入りの紙パックの
牛乳とパンなのです。

日によって、パンの種類は異なりますが、飲み物は決まって
1リットル入り紙パック牛乳…

これだけは毎回、欠かさず飲んでいるのです。

  ハア、もうゼンゼン大丈夫ッス。
  ガキの頃から毎日、1リットル
  飲んでますから…

そう答えて、紙パックに口をつけ、ゴクゴクと牛乳を飲む
ヤマシタさん。

  そんなに牛乳飲んでるのに
  何で、おまえ、ヒョロヒョロなの?

不思議そうな目で、笹やんが尋ねると、

  ハア、昔から痩せてて…
  食べても太らない体質で…

ニヤけた顔で答えるヤマシタさん。

細くて少し吊り上り気味の目で、口元がいつもニヤついている
ため、彼は初対面の印象が、あまり良くないみたいで…

以前、ここのバイトの面接時に、センター長から注意されたと
話していたことがありました。

  どんだけ注意されても、生まれつき
  こういう顔なんで…って説明したら、
  何とか、わかってもらえたっス‥

とか言ってましたが、確かに、彼に初めて会った人からすれば、

  このヤロ、ヘラヘラしやがって!
  バカにしてんのか!?

って思われる可能性は大です。。。

しかし、彼は大人しくて、仕事も正確にこなすので、笹やんから
まあまあ重宝がられています。

いつもスダさんのそばにいるので、周りからは、

  トラの威を借るキツネ

をもじって…

  狂犬の威を借るキツネ目

などとからかわれているようで…


  しかし、オレだったら、そんなに
  牛乳飲んだら、絶対に腹を下すけどなぁ…

なおも笹やんは、ヤマシタさんの牛乳の飲みっぷりに感心しながら、
そんなことを言っていました。

その直後…

紙パックを持ち上げ、勢いよく牛乳を飲んでいたヤマシタさん。

勢いが余ったのか…

  ブフゥ──────────ッ!!

凄まじい勢いで、口から牛乳を噴きだしました!

おそらく気管支にでも入って、それで噴き出してしまったのでしょう…。

  わっ!

    わっ!

     わっ!  わっ!

       わっ!

   わっ!     わっ!

あちらこちらで、驚きの声が上がりました。。。

で…

真正面に座っていた笹やん…

顔中、牛乳で白い斑点だらけ…

  ぷっ!

    ぷぷっ!

  ぷっ!  ぷははっ!

その様子を見て、今度はあちらこちらで、笑いの噴き出し声が…

もちろん僕も、笑いを抑えきれず、噴き出してしまいました。

  う… は あぁぁ~~~っ…

唖然としていた笹やんが、ようやく呻き出しました。。。

ヤマシタさんは、固まったまま…

固まっていても、口元はニヤけたまま…

吊り上り気味のキツネ目は、緊張している様子ですが、口元は
ニヤニヤした感じ。。。

そして、彼は鼻から牛乳を垂らしているのでした。。。

そんなヤマシタさんの顔を見て、横から、スダさんが…

  たらり~~ん♪
     鼻から牛乳~♪

と、軽妙に歌い出しました。。。

これを合図に、僕ら周りで見ていたバイトたちは、遠慮なく爆笑!

と、ここで笹やん、白い斑点だらけの顔を引きつらせながら、

  てめ───っ!
  ヤマシタ──────────ッ!!

そう一喝してから、

  ボケーっとしとらんと、
  早よ、タオルもって来んか!

大声で怒鳴りつけました。

ここで我に返ったのか、ヤマシタさんは鼻から牛乳を垂らしたまま、
ヘラヘラ、フラフラしながら席を立ち、出入口の脇のロッカーの
扉を開けて、タオルを取り出して持ってきたようですが…

  バカヤロ────ッ!!
  これ、雑巾じゃねーか!
  タオルを持って来いっつーの!
  ふざけンなっ!

再び笹やんに怒鳴りつけられるヤマシタさん…。

この事件…

「ヤマシタの逆噴射事件」として、後々までの語り草となるの
でした。。。
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