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あるおじさんの熱意と気力

これは昨年の5月、川崎市で起きた事件です。

とても短い記事で、詳細がイマイチつかめないのですが、
ある熟年男性の悲哀のようなものを感じましたので、
ご紹介させていただきます。

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おじさんは52歳になる。

仕事や家庭に対して、今や熱意とか気力と言ったような
ものは失せ、その日その時を流されて生きている。

従順な姿勢も見せないが、抵抗もしない。

そのせいか、おじさんは会社で雑務を押しつけられている。

  こうした手間ばっか食う割に、
  貢献度が低い仕事は、アイツに
  やらせとけ…

と言った感じである。

だから、おじさんは、ほぼ毎日、最終電車に乗って帰宅する。

その日もそうだった。

最終電車の光景は、酔っ払って居眠りしている中年男たちや
大きな声を出してつまらない話をしている若い男たち…

それと何が面白いのかキャアキャアとかん高い声で笑って
いる化粧の派手な女たち…

あとは、疲れ切って抜け殻のようになっている男や女…

実は、おじさんも抜け殻の一人に当たるのだった。

ざっとそんな感じの光景なのだが、ひとつだけ違っていた。

年齢は24、25ぐらいか?

若くて聡明な感じの女性が一人でドア近くに立っている。

黒に近いグレイのスーツが、彼女をさらに怜悧に見せている。

しばらくの間、おじさんは彼女を凝視していた。

一方、彼女は全くおじさんに気づいていない。ドアの窓から
深夜の街の景色を眺めているのだ。

若くて、なかなか美人で、仕事がデキそうで…

そして、どことなくお高く留まった感もある彼女を見ている
うちに、おじさんはムラムラしてきた。

会社でも、家庭でもロクに相手にされず、ただ流される
ようにして毎日を過ごしているうちに、気力が失せていく
一方で、得体の知れない欲求が溜まっていたのかも知れない。

魔が差す…という言葉、この時のおじさんにピッタリの
ようだ。

おじさんは、欲求に支配されたように、彼女へスルスルと
近寄り、彼女の身体に触れた。

おじさんは痴漢をした。

彼女が何か叫んだ。

何を言ったのか、おじさんにはわからなかった。

気づいた時は、降ろされた駅のホームで2人の駅員に両腕を
つかまれていた。

駅長室だか何かへ行くからと駅員に言われたのを覚えている。

その部屋に連れて行かれそうになる時、おじさんは我に返った。

そうして、おじさんがとった行動は逃げることだった。

おじさんは走った。

ホームの端まで走った。

そこまで走って、次におじさんはホームから線路に飛び降りた。

おじさんは52歳である。

運動神経は鈍り切っているのだった。

おじさんは右足をくじいたようだ。

激しい痛みを感じた。

感じながらも、おじさんは線路の上を走った。

走りながら、おじさんは思った。

  捕まりたくない!

その思いが、おじさんに熱意と気力を与えた。

今、おじさんの中には、

  逃げろ!

と言う熱い思いが湧き起っているのだった。

痛みを覚えつつ走る… 走らなければならない!

これは気力である。

しかし…

52歳であり、運動不足の身体がついて来なかった…。

おじさんは息を切らした。

深夜なので辺りは暗い。

足の痛みも増してきたことだし、おじさんは線路の脇に
うずくまった。

暗闇が、おじさんの姿を隠してくれるかも知れない。

そんな期待をしてみたが、ダメだった。

  いたぞ!


  そこにいるのか!

すぐに駅員たちの声が聞こえてきた。

おじさんは気合を湧き起らせて走ったものの、その距離
わずか100メートル程度だったのだ…。

おじさんは捕まった。

それからおじさんは、警察署へ連れて行かれた。

取り調べを受けるとのことで椅子に腰掛けているうち、
おじさんの頭の中には、会社で仕事を押しつけてくる
奴らの顔、そして、自分に対する関心を失ってしまった
妻の顔、全く口をきかない二人の息子たちの顔がグルグル
回りながら浮かんでは消えた…。

そうしたら再び、おじさんの中に熱意と気力が少しだけ
湧いてきた。

  あいつらに、痴漢をしたことが
  バレてはならん!

そんな熱意から来る気力だった。

だから、おじさんは黙秘した。

何を尋ねられても黙秘した。。。
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タグ:痴漢 気力
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