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おじさんは疲れてるけど…

63歳のおじさんは、サラリーマンをやっている。

毎朝、毎夕、電車に乗る。

東京メトロの千代田線を、おじさんは利用している。

車内はいつも混雑している。

出社時はエネルギーがあるが、帰宅時になると本当に疲れる。
ただでさえ会社で揉まれ、おじさんは疲れ切っているのだ。

そこへ混雑する電車の中で、さらに揉まれるのはウンザリ
なのだ。

  座りたい…
  座りたい…
  あ~、座って身体を休めたい
  あぁぁ~、座りたい
  す…、座りたい…。

帰宅時のおじさんは、電車の中で、こんなことばかり
思っているのだ。

そして、シートが空いていないかと目をキョロつかせて
みるのだが、これまでに一度も空いていたことがない。

それでも、おじさんは絶えず目をキョロキョロさせて
シートの空きをチェックするのだ。

空きなど見つからないだろうと思いつつも、そわそわして
辺りを見回すのだ。

そんなある夜、疲れ切ったおじさんは、

  座りたい…
  座りたい…
  あぁぁ~、座りたい
  誰か、席を譲ってくれ!
  そこのボ~っとした顔の
  学生!
  おまえ、次の駅で降りろ!
  頼むから、降りるんだ!
  あ~、す…、座りたい…。

そう思いつつ、だんだん腹が立ってきた。

疲れて、疲れて、それで腹が立ってきた。

それでおじさんは、両手でつかんでいた車内のつり革を
ねじり始めた。

怒りを込めて、ねじって、ねじって、ねじりまくった。

さらに全体重をかけて、またねじってみた。

ついにおじさんは、つり革を引きちぎった!

そして、その現場をシッカリ車掌に見られていた…。

呆気なくおじさんは捕まった。

実を言うと、この半年ほどで、つり革が盗まれたと言う
事件が200件くらいあって…

それらも、このおじさんの仕業なのか?

とにかく、おじさんは警察署へ連れて行かれた。

警察官に、なんで車内のつり革なんか引きちぎったのかと
尋ねられたので、

  電車の中が混んでいて、立ちっ放しで
  疲れた。
  そうしたら腹が立ってきて、
  東京メトロを困らせてやろうと思って…

おじさんは、正直に自分の気持ちを答えた。

すると警察官は、フンと鼻で笑って、

  って、そんなことしたら余計、
  疲れるんじゃねーの?

と、冷たい眼差しをおじさんに向けた。

その後、おじさんは狭い部屋の中で1時間以上、取り調べを
受けた。

200件分の全てがおじさんの仕業なのかどうか、実はおじさん
自身も、正確な数まで覚えているわけじゃなかった。

しかし、おじさんは今回だけではないことを認めた。

そして、器物損壊の現行犯で逮捕されることになった。

今後は、引きちぎったつり革の弁償問題とか、その辺のコトを
東京メトロと取り決めることになりそうだ。

とは言っても、おじさんはサラリーマンだが、お金はそんなに
持っていない。

おじさんは悩んだ。

  一体、いくらぐらい
  請求されるんだろう?

おじさんは考えた。

  「オレが引きちぎった東京メトロのつり革」って
  ことで、ネットオークションにでも出してみるか!

おじさんは、少し気を紛らせた。
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