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笹やん 運の尽き

バイト先の冷凍食品センターの近隣は新興住宅地です。
3年ほど前から、次々と建売住宅が建つようになり、
今は、ほぼ完売状態。

それだけたくさん人が住んでいる区域ってコトです。

センターの西側の道路は、一方通行の細い道路で、
道路とセンターの敷地の間に、割と幅が広く取って
ある側溝があります。

その側溝は、前々からゴミが捨てられやすい場所で、
さらに、この時期になれば雑草が覆い茂り、一目見る
だけで、もううんざり…って感じです。

で…

近隣の町内会から、センターにクレームが入ったそうで…

  私たちもゴミ拾いをしているんですが、
  こちらでもお願いします。
  おたくに勤めていらっしゃる
  バイトさんたちがゴミを捨てているのを
  見たという人もいるんですよ!


  たまには草むしりをしてくださいよ!
  小さな虫がたくさん湧いて、
  ここを通るたびに不快な思いを
  してるんです!


  子どもたちの通学路にもなっているんで、
  歩きながらタバコ吸うのやめるよう、
  バイトの人に注意してもらえません?
  2、3日前だったか、見たんですよ!
  ここのバイトの人だと思うんですが、
  3人で歩きながらタバコ吸って、
  吸い殻をポイ捨てしてたんです!
  ハッキリ言って、迷惑です!

そんなクレームが、センター長に届いたとのことで、
午前8時30分~9時頃まで、社員のフジエさん、イトーさん、
そして我らが笹やん…

以上3名に、センター長が、ゴミ拾いと草刈りを命じました。

笹やんチームは、バイト人数が多いという理由から、2名の
バイトを動員することになり…

何故か、僕とバイト仲間のヤノさんに白羽の矢が
当たっちゃいました。。。

  ったく、なんでオレらが
  こんなことさせられるんや!

さっそくグチり出す笹やん。。。

  ですね…、ですね。

イトーさんも賛同します。

フジエさんは、いつも通り困ったような顔つきをして
薄ら笑いを浮かべています。

このヒトは、別に困っているわけじゃなくても顔が
常に困った表情になっているヒトです。。。

それにしても…

この辺りを歩いているだけで、無数の蚊なのか、何か
知りませんが、とにかく細かい虫が集団になって飛んで
いき、時々、虫の集団が顔に当たり、鼻から吸い込む
ことがあって、気持ち悪いです。。。

  ああ──────っ!
  何やコレっ!?
  うっとーしーなぁ──っ!

笹やんも、顔の前を飛び交っていく無数の虫を、手で
払いながら、大きな声を上げています。

  ですね…、ですね。

イトーさんも激しく手を動かしながら賛同します。

  さあ、この辺から始めるかぁ…

側溝の南端で立ち止まったフジエさんが、100円ショップで
買った鎌を手にして言いました。

フジエさんとイトーさん、それに笹やんが鎌で草刈りをして、
ヤノさん、そして僕がゴミ拾いです。

しばらく、僕たちは黙々と作業に励みました。

側溝に沿って、南から北へと、ゴミを拾い…、草を刈り…

それにしても想像以上…って言うか、想像を絶するゴミが
捨てられています。

捨てられているのは主に飲料のペットボトルやスチール缶、
そして吸い殻ですが、それらの数が…

この辺りを飛んでいく細かい虫の集団に匹敵するんじゃ
ないかと思えるほど、無数に捨てられているのです。

ヤノさんと僕は、これらのゴミを分別しながら、それぞれの
ゴミ袋に入れていくわけですが…

あっと言う間にペットボトル用のゴミ袋がいっぱいになって
しまいました。。。

空缶もたくさん捨てられており、ビールやチューハイなど
アルコール飲料の空缶も多いようで、

  この辺はコンビニが多くて、そこで
  買って自転車に乗りながら飲んで、
  そのままポイ捨てするヤツも多いんじゃ
  ないのかなぁ

と、ヤノさんは言ってました。

そして、しばらくするとヤノさんが、

  何やコレ!?
  なんでこんなモンが
  捨ててあるんやっ!?

大声を上げました。みんな驚いて、ヤノさんの方を見ます。

ヤノさんが、ステンレス製のゴミ拾いで何かを挟み上げて
見せました。

それは黒いビニール袋でした。

僕らはヤノさんに近づき、そのビニール袋の開いていある
ところを見てみました。

そこには…

白、ベージュ、水玉柄などの布状のモノが入っているようで、
ずいぶん前から捨てられていたらしく、かなり変色していま
した。

さらに近くで見てみると…

女性の下着でした。。。

数枚の女性の下着が、黒ビニール袋に入れられて捨てて
あったのです。

  コレってさぁ…

ヤノさんが、ゴミ拾いで袋を挟み上げたまま、何か言おうと
しているところへ、

  カハハ、カハハハハ…
  カハハハ…

イトーさんが、妙な笑い声を上げました。

  おい、イトー!
  おまえ、何を興奮しとるんや?

笹やんも嬉しそうな顔つきをして、イトーさんをからかいます。

  カハハ、カハハ…
  カハ… カハハ…

イトーさんは、ネジが一本外れた玩具のように頼りなく身体を
揺すりながら、まだ笑っています。

  コレって、いわゆる
  下着泥棒ってヤツかなぁ?
  うっかりして、ここに
  落としちゃったとか…?

ヤノさんが言うので、僕は「…だと思うよ」と答えておきました。

納得したのかヤノさんは、黒ビニール袋ごと可燃ゴミ袋に入れて
進んで行きました。。。

それからまたしばらく、僕らは無言で作業していると…

  おいっ!
  パンツの次はエロ本だ!
  どーなっとるんや、ここは!?

笹やんが叫んだのでした。

僕らは、笹やんの方へ近寄ると…

そこには、何度も雨に当たって形が崩れ、色が褪せてしまった
30センチ四方ほどのダンボール箱がありました。

その中には、ギッシリとエロ本が詰め込まれているのでした。

  カハ、カハハ…

また、イトーさんの不思議な笑い声が聞こえてきました。。。

笹やんは、にんまりと笑いながらイトーさんを見ると、

  おい、イトー…、
  おまえ、相当、女に飢えとる
  みたいだなぁ…
  この本、貰っていくか?

そんなコトを言いました。

  え…?
  あ、あっ…
  いいです。いらないです…。

イトーさんは、急に取り乱して、目を泳がせながら答えます。

その時です!

  おい、笹やん…

フジエさんが、笹やんに声を掛けました。

しばらくの沈黙…

一体何事かと、僕らは不安と期待を胸に、フジエさんを
見つめるのでした。

  笹やん…
  犬のウンコ踏んどるぞ…


  は?


  見ろ…
  そこ、犬のウンコ落ちとったぞ


  う゛ わっ!!


  臭っ!


  くっさ────っっ!!


  つあぁぁぁ~~~
    っあああ~~


  くっせぇー!

それぞれ、思いのまま、ありのままの声をあげました。。。

そして、笹やんから飛び退くように離れていくのでした。。。

笹やんは、苦々しい顔をして片足をゴシゴシと雑草になすり
つける仕種を何度も何度も繰り返しました。

そうこうするうちに…

側溝の草刈りとゴミ拾いを終えて、センターに戻ると、
笹やんが、センター長に呼び止められました。

  おい、笹○!
  今月末の在庫表、来月1日の
  10時までに提出しろよ!
  絶対だぞ!


  は?
  

  は?…じゃねーわ!
  1日が第一水曜日になるから
  昼の会議で報告しないといけないんで、
  必ず1日の10時までに出せって
  前から言ったやろ!
  出さんかったら、おまえ…
  どーなるか分かっとるやろうな!?


  ・・・・・・・・・・・・・・・。  

どうやら笹やん、ウンのつきです。。。
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