笹やん 悲哀歌
今日、バイト先の冷凍食品センターの社員、イトーさんが
超高速で目を泳がせながら、頭を抱えていました。。。
もともと痩せ型のイトーさんですが、この頃は誰が見ても
やつれてる…
としか思えないほどです。
なぜ、やつれてるのか…？
それは、今月初旬に、ここへやって来たコンサルタント会社の
タカダさんから、
今月中で構いませんから、
庫内の作業を工程ごとに
書面化して、それに対する
注意事項も全て書面にして
おいてください
と指示されたそうで…
作業の効率、生産性を向上させ、ミスのない完璧な作業を
継続させるためのカイゼン活動…
それを指南するためにタカダさんは、ここへ来たわけですが…
イトーさん同様に、この活動のリーダー的役目であるはずの
笹やんが、タカダさんに歯に衣着せぬ言霊を放ったため…
タカダさんは機嫌を損ね、後日、センター長へ連絡し、先ほどの
書面作成を伝え…
センター長は、笹やんとイトーさんに通達したのでした。
が…
笹やんが受けるわけもなく、現状ではイトーさんが、独りで
書面を作成しているようで…
業務終了後、毎日4、5時間も居残っているとか。。。
イトー、その書面って、前々から
作ったものがあっただろ？
今になって新たに作ること
ないだろ？
気楽に笹やんが言います。
僕もそう思ったんですけど、
その…
作ったつもりだった書面、
結局、完成していなくて…
それに、部分的に抜けてたり、
作業が変更されてる箇所もあって…
血走った目を泳がせながら、イトーさんは力なく言い返します。
フン！と鼻から息を吐き出して、笹やんは、
そんなもん、真剣に作るモンじゃ
ないだろ？
適当にまとめて出しときゃいいだろ？
と言えば、
そうしたいんですが…
センター長から、毎日のように言われて…
イトーさんが、今にも倒れそうになりながら答えます。
センター長…？
何を言われてるンや？
今度のタカダさんは、チェックの
厳しい人だから、いい加減な
コトすると後々、大変なコトになるから、
手を抜くな！って…
はじめが肝心だぞ…って、念押されて。
何を今さら！
って言うか、自分が叱られたくないから、
それで、おまえに手を抜くなってコトだろ？
･････････････
･････････････
ここで、沈黙するイトーさん。。。
たぶん、イトーさんは腹の中で、こう思っているでしょう。
おまえに…って、笹やん…。
この仕事、笹やんと一緒に
やるはずだったでしょ？
この件を、すっかり他人事と思っている笹やんは、涼しい顔で
まぁ、そう悩むな。
昼から、オレも手伝ってやってもイイし、
パソコンできるバイトも貸してやるから。
イトーさんを励ますように言いました。
･････････････
･････････････
イトーさんは沈黙。やはり腹の中で、こう思っているでしょう。
何が、悩むな…だ。
何が、手伝ってやってもイイ…だ。
もともと一緒にやるはずだったろ！？
今月も残りわずかとなって、イトーさんは思うように書面化が
進まず、焦り、悩み、やつれていくのでした…。
で…
昼過ぎになって、笹やんに呼ばれ、僕とヤノさんも、イトーさんを
手伝うことになりました。
事務所に入り、その一隅のブースに寄り添うようになって、笹やん、
イトーさん、ヤノさん、僕は、パソコンの画面を見ながら、
この作業工程は、半年前に変更したけど、
何て書けばイイの？
あっ！
ここって商品の移り変わりが激しいから、
単純に出庫って言ってもなぁ…
イチイチ書いてなれないしなぁ…
この場合、無難に表現しておいた方がイイよ。
各種とも指定の格納庫より出庫とか…
うんうん、指定の…って言い方にしちゃえ！
全部、指定の、指定の…って書いちゃおう！
おっと、ここの工程が未入力だ！
仕分け前の注意事項…
昔、取り決めたことあったっけ？
何だっけ？
それって、アレコレ変更しまくったでしょ？
結局、今、何もやってなくない？
そう言えば、仕分け前の検品手順って項目が
あったけど、どこに保存したんだっけ？
アレ？
この中に入ってないけど、どこだっけ？
もう、面倒くせーなっ！
互いにアレコレ言いながら、キーを叩いたり、クリックしたり…
笹やんは画面を叩いたり。。。
それにしても、以前から作成したとは言え、ページ数にしたら
膨大な量になると思います。
膨大すぎて、余計にわかりづらい書面になっているようでもあり…
おい、もういいぞ！
やがて、飽きてきたらしい笹やんが、投げの一言を放ち、マウスで
操作しているイトーさんの肩に触れたようです。
その弾みで、イトーさんは操作を誤ったのか…
あぁ～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～
実に、か細い、しかも長く余韻のある虚ろな声をあげました。。。
あぁ～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～
～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～
～～～～～～～～～～～～～～
ど、どうしたんや？
あぁ～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～
～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～
～～～～～～～～～～～～～～
おいって、どうしたんや？
あぁ～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～
～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～
～～～～～～～～～～～～～～
ここでヤノさんが、
ヤバッ！
と、一声を発しました。
見ると、画面が横方向にゆらゆらと筋状になって、波打って
いるようです。
笹やんも、少し焦り気味になって、
何や？
このゆらゆらは…？
誰に尋ねるともなく言いました。
あぁ～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～
～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～
～～～～～～～～～～～～～～
全身を硬直させつつ、目だけを超高速で泳がせているイトーさんは、
あぁ～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～
～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～
～～～～～～～～～～～～～～
か細い、そして何とも切なくやるせない声をあげ続けています。
あぁ～～～～～～～～～～～～～
あぁぁ～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～
あぁ～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～
～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～
～～～～～～～～～～～～～～
やがて笹やんまで、イトーさんに合わせているのか、悲壮感のある
切ない声を出して、ハモらせ始めました。。。
あぁぁ～～～～ あぁ～～～～～～～～～～～～～
～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～
あぁ～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～
あぁぁ～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～
～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～
～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～
～～～～～～～～～～～～～～
～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～
あぁ～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～
～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～
～～～～～～～～～～～～～～
僕は、必死に笑いを噛み殺していました。。。
いつまで経っても、パソコン画面は修復せず、ゆらゆらとした
筋状の波が見えます。
ゆ～らり～ ゆ～らめ～いて～♪
そ～よぉ～ あた～しは
ダンシングドール…♪
何の前ぶれもなく、いきなり、そんな歌を歌い出した笹やん…。
僕は、堪え切れず、ブースから飛び出し、身体を「く」の字に
折り曲げ、思いっきり笑い出しました。
もうダメだよ！
固まっちゃったよ！
一度、強制終了するしかないよ！
ヤノさんの声が聞こえてきました。
その声も、どことなく笑いが混じった感じでした。。。
しばらくすると、虚ろな表情になってイトーさんがブースから
出てきました。
そのあとに笹やんも。。。
イトー、もういいよ。
もうこれ以上、いいよ。
イトーさんを慰めるような口調で、彼の背中に向かって言いました。
･････････････
･････････････
無言のイトーさん、きっと腹の中で、こう思っているでしょう。
くそっ、笹やんめ！
オレのこれまでの時間は
何だったんや！？
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超高速で目を泳がせながら、頭を抱えていました。。。
もともと痩せ型のイトーさんですが、この頃は誰が見ても
やつれてる…
としか思えないほどです。
なぜ、やつれてるのか…？
それは、今月初旬に、ここへやって来たコンサルタント会社の
タカダさんから、
今月中で構いませんから、
庫内の作業を工程ごとに
書面化して、それに対する
注意事項も全て書面にして
おいてください
と指示されたそうで…
作業の効率、生産性を向上させ、ミスのない完璧な作業を
継続させるためのカイゼン活動…
それを指南するためにタカダさんは、ここへ来たわけですが…
イトーさん同様に、この活動のリーダー的役目であるはずの
笹やんが、タカダさんに歯に衣着せぬ言霊を放ったため…
タカダさんは機嫌を損ね、後日、センター長へ連絡し、先ほどの
書面作成を伝え…
センター長は、笹やんとイトーさんに通達したのでした。
が…
笹やんが受けるわけもなく、現状ではイトーさんが、独りで
書面を作成しているようで…
業務終了後、毎日4、5時間も居残っているとか。。。
イトー、その書面って、前々から
作ったものがあっただろ？
今になって新たに作ること
ないだろ？
気楽に笹やんが言います。
僕もそう思ったんですけど、
その…
作ったつもりだった書面、
結局、完成していなくて…
それに、部分的に抜けてたり、
作業が変更されてる箇所もあって…
血走った目を泳がせながら、イトーさんは力なく言い返します。
フン！と鼻から息を吐き出して、笹やんは、
そんなもん、真剣に作るモンじゃ
ないだろ？
適当にまとめて出しときゃいいだろ？
と言えば、
そうしたいんですが…
センター長から、毎日のように言われて…
イトーさんが、今にも倒れそうになりながら答えます。
センター長…？
何を言われてるンや？
今度のタカダさんは、チェックの
厳しい人だから、いい加減な
コトすると後々、大変なコトになるから、
手を抜くな！って…
はじめが肝心だぞ…って、念押されて。
何を今さら！
って言うか、自分が叱られたくないから、
それで、おまえに手を抜くなってコトだろ？
･････････････
･････････････
ここで、沈黙するイトーさん。。。
たぶん、イトーさんは腹の中で、こう思っているでしょう。
おまえに…って、笹やん…。
この仕事、笹やんと一緒に
やるはずだったでしょ？
この件を、すっかり他人事と思っている笹やんは、涼しい顔で
まぁ、そう悩むな。
昼から、オレも手伝ってやってもイイし、
パソコンできるバイトも貸してやるから。
イトーさんを励ますように言いました。
･････････････
･････････････
イトーさんは沈黙。やはり腹の中で、こう思っているでしょう。
何が、悩むな…だ。
何が、手伝ってやってもイイ…だ。
もともと一緒にやるはずだったろ！？
今月も残りわずかとなって、イトーさんは思うように書面化が
進まず、焦り、悩み、やつれていくのでした…。
で…
昼過ぎになって、笹やんに呼ばれ、僕とヤノさんも、イトーさんを
手伝うことになりました。
事務所に入り、その一隅のブースに寄り添うようになって、笹やん、
イトーさん、ヤノさん、僕は、パソコンの画面を見ながら、
この作業工程は、半年前に変更したけど、
何て書けばイイの？
あっ！
ここって商品の移り変わりが激しいから、
単純に出庫って言ってもなぁ…
イチイチ書いてなれないしなぁ…
この場合、無難に表現しておいた方がイイよ。
各種とも指定の格納庫より出庫とか…
うんうん、指定の…って言い方にしちゃえ！
全部、指定の、指定の…って書いちゃおう！
おっと、ここの工程が未入力だ！
仕分け前の注意事項…
昔、取り決めたことあったっけ？
何だっけ？
それって、アレコレ変更しまくったでしょ？
結局、今、何もやってなくない？
そう言えば、仕分け前の検品手順って項目が
あったけど、どこに保存したんだっけ？
アレ？
この中に入ってないけど、どこだっけ？
もう、面倒くせーなっ！
互いにアレコレ言いながら、キーを叩いたり、クリックしたり…
笹やんは画面を叩いたり。。。
それにしても、以前から作成したとは言え、ページ数にしたら
膨大な量になると思います。
膨大すぎて、余計にわかりづらい書面になっているようでもあり…
おい、もういいぞ！
やがて、飽きてきたらしい笹やんが、投げの一言を放ち、マウスで
操作しているイトーさんの肩に触れたようです。
その弾みで、イトーさんは操作を誤ったのか…
あぁ～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～
実に、か細い、しかも長く余韻のある虚ろな声をあげました。。。
あぁ～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～
～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～
～～～～～～～～～～～～～～
ど、どうしたんや？
あぁ～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～
～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～
～～～～～～～～～～～～～～
おいって、どうしたんや？
あぁ～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～
～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～
～～～～～～～～～～～～～～
ここでヤノさんが、
ヤバッ！
と、一声を発しました。
見ると、画面が横方向にゆらゆらと筋状になって、波打って
いるようです。
笹やんも、少し焦り気味になって、
何や？
このゆらゆらは…？
誰に尋ねるともなく言いました。
あぁ～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～
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全身を硬直させつつ、目だけを超高速で泳がせているイトーさんは、
あぁ～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～
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か細い、そして何とも切なくやるせない声をあげ続けています。
あぁ～～～～～～～～～～～～～
あぁぁ～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～
あぁ～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～
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やがて笹やんまで、イトーさんに合わせているのか、悲壮感のある
切ない声を出して、ハモらせ始めました。。。
あぁぁ～～～～ あぁ～～～～～～～～～～～～～
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あぁ～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～
あぁぁ～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～
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あぁ～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～
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僕は、必死に笑いを噛み殺していました。。。
いつまで経っても、パソコン画面は修復せず、ゆらゆらとした
筋状の波が見えます。
ゆ～らり～ ゆ～らめ～いて～♪
そ～よぉ～ あた～しは
ダンシングドール…♪
何の前ぶれもなく、いきなり、そんな歌を歌い出した笹やん…。
僕は、堪え切れず、ブースから飛び出し、身体を「く」の字に
折り曲げ、思いっきり笑い出しました。
もうダメだよ！
固まっちゃったよ！
一度、強制終了するしかないよ！
ヤノさんの声が聞こえてきました。
その声も、どことなく笑いが混じった感じでした。。。
しばらくすると、虚ろな表情になってイトーさんがブースから
出てきました。
そのあとに笹やんも。。。
イトー、もういいよ。
もうこれ以上、いいよ。
イトーさんを慰めるような口調で、彼の背中に向かって言いました。
･････････････
･････････････
無言のイトーさん、きっと腹の中で、こう思っているでしょう。
くそっ、笹やんめ！
オレのこれまでの時間は
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