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笹やん 交渉人

連休期間ともなりますと、家族で、友だちと、外で食事を
することが多くなるようで…

バイト先の冷凍食品センターも、今日は出庫量が多いだけで
なく、納品先の軒数もバカみたいに増えていて、みんな、
バタバタでした。

で…

こういう時、大きなミスが付き物のようで…

それは、納品先の回転寿司チェーン店へ納めるはずの
「トロビンチョウ柵-120」という商品を…

昨日の配送便で、別の納品先であるチェーンの居酒屋へ納品して
しまったことが、11時を少し過ぎた頃に発覚しました…。

  笹○ーっ!
  どこにおるんや!


  笹○───っっ!
  出て来──い!!


  さ…、笹○───っ!!

血相変えたセンター長が、庫内で叫び回っています。

ここで話を整理しておきますと…

「トロビンチョウ柵-120」という商品は回転寿司チェーン店の
定番商品で、常時、一定量を在庫してあります。

なかなかの売れ筋らしく、かなりの在庫量です。

尚、回転寿司チェーン店の商品仕分けを担当しているのは
フジエさんという社員です。

一方、チェーン居酒屋の商品仕分け担当は、我らが笹やん。。。

この居酒屋では、刺身のタネとして、マグロ、タイ、ヒラメなど
いろいろ出庫されますが、「トロビンチョウ」も、その中のひとつ
です。

但し、このトロビンチョウは「トロビンチョウ柵-120」ではなく、
別商品です。

普段なら間違えることはなかったと思いますが、この時期は
繁忙期で各商品の在庫量も増え、それぞれのトロビンチョウが
収納庫に納まり切らず、仮の収納庫にまとめて在庫されていた
ようです。

それを昨日、笹やん管轄のバイトが、うっかり間違えて、回転寿司用の
トロビンチョウを出庫し、そのまま仕分けてしまったようです。

  おっ!
  笹○っ!!
  こんな時に、どこで
  ぶらぶらしとったンや!?

呑気そうな顔で、ふらりと現れた笹やんを怒鳴り飛ばすセンター長。

  おめー、昨日、×××へ
  間違えてトロビンチョウ柵-120を
  出したヤツ、誰かわかっとるンか!?


  は…?

目をパチパチさせて、センター長を見る笹やん。

事情を聞いて、

  ええ~~っ!
  マジっすか!?
  出庫したのは、たぶん…
  キシオカかタムラか…?

そう答える笹やん。

二人とも、今日は休みで、この場にいません。

  二人とも、昨日、今日の
  バイトじゃないのに、
  なんで間違えたンやろ…?

首をひねる笹やんに、センター長はツバを飛ばす勢いで怒鳴ります。

  なんで間違えたじゃねーわ!
  在庫があふれて仮置き場にある商品は
  うっかりミスが起きやすいから、
  仕分ける前に再確認しとけって
  言ったにも拘わらず!
  なんで確認せんのや!?
  なぁ?
  おめーの管理ミスでもあるンやぞ!


  そんなこと言われても、こっちも
  忙しくて手が離せなかったんで…


  おまえなぁ…、
  いつもそんな言い訳しやがって!
  忙しい時こそミスが起こりやすいから
  手を抜くなって何回言わせる気や!?
  手が離せんとか言うけど、確認するぐらい
  出来るやろ!
  チラッと商品を確かめるだけのコトやろ!
  そんなコトがなんで出来んのや!?


  そんなこと言われても、あの商品は
  2種類とも同じサイズの無地ダンボールに
  入ってて、見分けがつきにくいじゃんねぇ!


  今さら何言っとるんや、おまえ…
  見分けがつきにくい商品だからこそ、
  確認が必要だって前々から
  言っとるにも拘わらず、今さら、おまえ…
  泡沫転倒っつーか、支離滅裂やな。
  おめーの言うことは…。

と、ここで返す言葉を詰まらせた笹やんに、追い打ちを掛けるように
センター長が怒鳴ります。

  1時間ぐらい前に、フジエが来て、
  トロビンチョウ柵-120の在庫が
  合わんと言って昨日の出庫実績を
  調べさせたら、×××のトロビンチョウの
  受注数が、そのまま在庫不足数量と
  一致しとるやないかっ!
  ええ!?
  どーしてくれるンや!?
  なぁ?
  ○○寿司の受注数31ケースに対して
  7ケース足りん。
  どーしてくれるンやて?
  なぁ?


  今度は、いつ入庫するんで…?


  明日や…。
  だけど、○○寿司からは毎日
  20ケースほど注文が入る。
  それだけ売れ筋なんや…
  その売れ筋を欠品させたら、
  クレームになってまうやろっ!


  ええっ!
  そんなに毎日出るンですか!?


  だから、この時期は在庫も余分に
  持たせたつもりだったのが、
  おめーが間違えるから
  その余分の在庫もなくなって、
  このザマや!


  まあ、この際、トロビンチョウに
  違いはないですから、○○寿司に、
  ×××へ納品しているトロビンチョウを
  出してはどうですか?

したり顔で言う笹やんに、センター長が、かなりイラついた
様子で、人差し指を立て、ブンブン激しく、笹やんの顔の
真ん前で手を振りつつ、

  だから、おめーの頭は柵-120の在庫と
  いっしょで足りんっつーことやっ!
  なぁ?
  ええか?
  居酒屋の×××は、トロビンチョウを
  刺身で出すんやぞ!
  ○○寿司のトロビンチョウとは
  カットサイズが違うんやぞ!
  わかるか?
  なぁ?
  ×××のトロビンチョウでは幅が狭くて
  寿司ネタにならんのやっ!

興奮して喚くように大声で言うセンター長。。。

この様子を見ている僕らバイトは、

  さあ、これから面白くなるぞ…♪

などと腹の中で思いつつ、ニヤニヤしながら眺めているわけで…。

  でも、昨日、○○寿司のトロビンチョウを
  納品したはずの×××からは、一軒も
  クレームがありませんね…。

腕を組んで、何やら考え事をするかのような顔つきになった
笹やんが言うと、フン!と鼻息をたて、バカにしたような目で
笹やんを見ながら、

  そりゃ×××にしてみれば、
  いつもと少しサイズが違うと
  思うだけで済ましてまうやろ…。
  刺身にしたっておかしくない
  サイズだから…。

諦めたような声で答えました。

  こうなったら仕方ありませんね。
  欠品させるのが嫌なら、○○寿司へは
  ×××のトロビンチョウを納品して、
  各店舗へ連絡しましょう!

腕組みしたまま、笹やんは意を決したように言いました。

  ほう?
  なんて連絡するんや?


  いつもと少しサイズが
  違いますから、包丁を斜めに
  入れて切ってください…って
  説明するんです。


  アホっ!
  そんな説明受けて、
  わかりました…って
  納得するわけないやろ!


  でも、こんな連休中で、お客さんも
  多いことだから、品切れさせるより
  マシでしょ?
  そこを交渉するんです!
  品切れすれば食べに来たお客さんを
  ガッカリさせる。
  それより、ちょっと包丁の入れ方を
  変えるだけで、寿司として立派に
  提供できるじゃんねぇ!


  怒られるだけやろっ!
  商品間違えて、その上、
  なにエラそうに言っとるンや…って
  思われるだけやろ!


  そこを上手くネゴるんです!
  交渉するんスよ!
  ネゴっすよ!


  ・・・・・・・・・・

ここでセンター長は口を閉じ、しげしげと笹やんを見つめます。
それは、完全にバカにした目つきです。。。

  じゃあ、おまえ、
  交渉人になれ…。

センター長は静かに、笹やんに言いました。

  え゛…?

まさに目をテンにして絶句する笹やん。

  いやぁ、オレは…
  その…
  口下手ですし…


  何言っとるんや!
  おめー、自分で
  言い出しといて…
  それに元はと言えば
  おめーのミスやろ!


  そうかも知れないですけど…、
  オレ…

急に激しく狼狽する笹やん。。。

ネゴるのではなく、ゴネてる…?

この段階で、僕らバイトは腹を抱えて笑ってしまいました。

で…

結局、回転寿司チェーンに対しては、先方に事情を説明して
了承を得た上、数量を調整して「トロビンチョウ柵-120」を
納品することになったようです。
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