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笹やん ショータイム

午後2時過ぎ…

バイト先の冷凍食品センターでトラブル発生!

いつまで経っても出庫指示書が発行されてきません。

出庫指示書とは、それぞれの納品先に納品する、それぞれの
商品の種類と数量を記載したリストのことです。

僕らは、このリストに基づいて商品を出庫し、仕分けるわけで、
これがないと作業が出来ません。

  おいっ!
  おまえら!
  何 ボケーッと突っ立っとるんや!
  早よ仕事せぃ!!

笹やんがフォークリフトに乗って近づきながら、手持ち無沙汰で
ボ~ッと突っ立ってるだけの僕らに、大きな声で言いました。

  ンなコト言ったって、
  指示書出てきてないし!

熟年の女子バイトも大声で言い返します。

周りを見ると、どうやら他の納品先の商品を出庫する担当の
バイトたちも同様で、僕らのようにボ~ッとしています。

出庫指示書が出て来ない…

何があったのか知りませんけど、これじゃ作業できません。。。

  どーなっとるンや!?

笹やんが、フォークリフトから降りてキョロキョロと辺りを
見回しました。

見回してどうなるモンでもありませんけど…。

そこへ、イトーさんと言う社員が小走りにやって来て、

  あの…、あの…、
  笹○さん…
  あの…、ヤバいことになっちゃって…
  あの…、とにかくヤバくて…

そんなコトを言いながら、笹やんに救いを求めるような目線を
送りました。

このイトーさんと言う人は、みんなから“泳ぎ目のイトー”と
呼ばれているように、ちょっと何かあると、すぐに高速で目を
泳がせる癖があります。

今も、左右に…

それもスゴイ速さで目を泳がせています。

これに対して笹やん、

  おい、イトー…
  出庫指示書が出て来んから、
  みんな、ボ~ッとしとるやないか!
  どーなっとるンや!?

と、大きな声でイトーさんに問いかけますが…、

問われたイトーさんは答えようもなく、ただ目を高速で泳がせ
るだけ…

すると今度は、タカハシさんと言う、これまた、このセンターの
社員の人がやって来て、

  あの…、トラブルが起きたみたい
  です。
  コンピューターが故障したのかも
  知れません。
  出庫指示書が出力されなく
  なりました。
  画面も変です。

と言いました。

タカハシさんは、イトーさんとよく似た歳だと思いますが、
とても大人しく物静かな感じの人です。

その彼が、冷静な姿勢で、

  原因はわかりませんが、全ての納品先の
  出庫指示書が出力されなくなってます。
  それだけじゃなく、キーを叩いても
  何ともなりません。
  全く反応しません。

そう言いました。

さらに、タカハシさんは太くて、まるで1本につながっている
ような眉毛を八の字にして、

  ひょっとしたら、何かのウイルスに
  感染してマヒしたのかも知れないです。
  何者かに侵入された可能性もあって、
  復興のメドが立たないみたいです。

と言いました。

そこで笹やん…

  ウイルスか…
  注射でも打ったれや!
  治るかもしれん

などと、しょ~もない冗談を言ってますが、事態は深刻です。

この笹やんのジョークに、イラッとした表情を少しだけ見せた
タカハシさん、

  センター長に連絡を取ろうと
  してるんですが、さっきから
  電話に出てくれないンで…

今日は朝からセンター長が不在…、何の用事か知りませんが
本社へ行っているそうです。

  午前中まで問題なく指示書が
  出てたのに、何で急に
  おかしくなったんや?

と言う笹やんに対して、タカハシさんがチラリとイトーさんを
見てから答えました。

  さあ…、僕もわかりません。
  イトーさんに言われて、事務所の
  パソコンを見てみると、
  もう画面がおかしくなってて…

するとイトーさん、超高速で目を泳がせ…、

  ぼ、僕が、なんだかヘンな
  キー押しちゃったかも
  知れないですねぇ…

そこで笹やん、険しい目線をイトーさんに送りつつ、

  なんや?イトー!
  おまえが壊したンか!?

決めつけたように言いました。

  イエイエいえ…!
  違いますよ!
  そんな…
  壊すつもりじゃなかったんで…


  それじゃ、どんなつもり
  だったンや?


  出庫指示書を出力するつもりで…


  ほお…


  納品先の××商事と○○デリカの分を
  出そうと思って、キー操作したンですけど…


  ほお…


  どこをどうやったのか覚えてないンですけど…


  ほお…


  急に画面がバラバラって感じで
  文字とか見づらくなっちゃって…


  ほお…


  いつもだったら、ちゃんと
  出力されるのに、やっぱ、
  ヘンなキー押しちゃったンですかねぇ?


  ってオレに聞くな!
  知るか、そんなこと!


  ああ、スンマセン…
  ちょっと慌ててたもんで…
  それで画面表示も確かめずに
  間違ったキー操作しちゃったんですかねぇ?


  だからオレに聞くなっつーの!


  スンマセン…
  それでヤバいと思って、タカハシさんを
  呼んで見てもらおうと思ったンですが、
  全然ダメみたいで…
  どうしたらいいですかねぇ?


  知るかっ!
  オレに聞くなっつーの!

この二人のやりとりに、タカハシさんは苦りきった笑い…、

僕らバイトは、吉本の新喜劇を観ているように声をあげて
笑うという、なごやかな雰囲気に包まれてきました。。。

が…、

そんな場合じゃなく、出庫指示書がないと作業が進まないので
何とかしなければなりません。

とりあえず、笹やんと僕ら数人のバイトを含め、イトーさん、
タカハシさんは再び事務所へ行くことになりました。

  おい、ちょっと見てやれ

笹やんは、軽い口調で僕に言いますが、そんなシステム障害
みたいな状態のパソコンを見ろと言われても、何とも出来ません。。。

とりあえず一旦、シャットダウンさせることにしました。

  あっ!
  消しちゃった!
  エエんか?おい!
  もし立ち上がらんかったら、
  おまえのせいやゾ…

笹やんが、僕にそう言うのです…。

  おい!
  ちょっと待てくれ!
  何でオレのせいになるンや!?
  それ、おかしいやろ?

僕は、半分笑いながら笹やんに抗議しました。

おかしくなったパソコンの電源を切っただけで、責任転嫁されては
たまったモンじゃありません。

心なしかイトーさんの目の泳ぎが緩んだのは気のせいでしょうか?

その間、比較的冷静なタカハシさんは、センター長と連絡が取れた
らしく、事情を説明し、対応の指示を受けているようでした。

やがてタカハシさんが、

  あの、パソコンはしばらく
  立ち上げないでください。
  今、本社の方で状況を確かめた上で、
  対応を連絡するそうですから、
  その連絡が入るまで、そのままに
  しておいてください

と言いました。

と言うわけで僕らは、しばらく無言で、その場に突っ立って
いましたが、笹やんが突然、

  こんなモンに縛られる
  生活なんて!

と大きな声を発しながら、このデスクトップパソコンの
画面を叩きました。

  あっ!
  そんなことしたらヤバいかも!
  立ち上がらなくなったら、
  マジ、笹○さんのせいになりますよ!

驚いた口調でイトーさんが言いますと、笹やんがニヤッと笑って
言いました。

  なんやイトー…、
  おまえ、元はと言えば自分が
  悪いのに、他人のせいにする気か?


  い、いやイヤイヤ!
  そう言うわけじゃ…
  って言うか、僕が悪いんですかねぇ?


  当り前やろ!
  おまえがちゃんとしてたら
  こんな事にならンかったやろ!
  慌ててやるから間違うンや!


  でも、キーを間違えたぐらいで、
  画面がヘンになりますかねぇ?


  今さら何や?
  往生際の悪いヤツやな。
  慌ててカチャカチャとキーを
  力んで押すからパソコンが
  ビックリしたんやろ!


  パソコンがビックリしますかねぇ?


  したから壊れたンやろ!


  ホントですかぁ…?


  だいたい、おまえは普段から
  落ち着きがない!
  なんや、その目ぇは?
  キョロキョロと…
  真っすぐにこっち見んかいっ!


  見てますヨ。
  ちゃんと見てるでしょ!


  いや、見てない!
  キョロキョロしてるだけや!
  おまえ、何か病気と違うか?

この二人のやりとりに、再び僕らは笑い出しました。
今度はタカハシさんも素直に笑ってます。

そのうち本社から連絡が入り、パソコンを立ち上げてもイイと
指示され、電源を入れると、何ごともなかったように起動し、
出庫指示書も発行されました。

30分余りのタイムロス…

でしたが、この間、笹やんのショータイムだったと思えば、
それはソレで。。。

楽しいショーの後、僕らは普段通り、商品を出庫したり
仕分けたりしました。
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