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笹やん 一直線

笹やんが事務所へ行ったきり、戻って来ません。

20分ぐらい前にセンター長が、笹やんのところに来て、

  昨日作った収納ラック別の
  在庫記入表、印刷しておけ

と指示し、笹やんはそれに応え、事務所に向かって行った
のですが、それにしても時間が掛かり過ぎているなぁ…、と
思っていたら、ちょうど笹やんが庫内に戻ってきまして…、

何だか意味ありげな笑いを浮かべ、僕に向かって、右手を
上げて、おいでおいで…、と言うように手招きしています。

明らかにイヤな予感…。

僕も、意味ありげに笑い、そ~~っと笹やんに近づいて
いくと、事務所に一緒に来てくれと言います。

ホント、イヤな予感です…。

バイト先の冷凍食品センターの事務所には、2名のパートの
おばさんがいるだけでした。

その二人が、戻ってきた笹やんを見て、これまた意味ありげな
笑いを浮かべています。

  何だ!?
  この空気…、一体、
  何があったんだ!?

そう思いながら、僕は自然と一歩一歩、慎重な足取りで事務所の
中へ入っていきました。


  これなんだけどサァ、
  何とかならない?

パソコンの画面を指差して、笹やんが僕に言いました。

画面を見ると、そこにはエクセルシートに作成された表が映って
います。

別に何のことはない、普通の表です。

左上の箇所にラック番号が入力され、左端の列には商品コードや
品名などが入力されています。

  これが…、何か…?

僕が笹やんに尋ねると、

  いい?
  これサァ…、印刷するとサァ…、
  いい? 見てて…

そう言って、画面上の「印刷する」をクリックしました。

  あっ!

同時に、パートのおばさんが叫んだようですが、接続している
コピー機の音で、はっきり聞こえませんでした。

  ウィィィ~~~ン…、

  シャカ~、シャカ~…

コピー機が指示通り、パソコン画面に映っているエクセルの表を
印刷している音が聞こえます。

  シャカ~、シャカ~…

  シャカ~、シャカ~…

  シャカ~、シャカ~…

  シャカ~、シャカ~…

何枚か印刷された用紙が出てきているようです。

  シャカ~、シャカ~…

  シャカ~、シャカ~…

その時、パートのおばさんの一人が立ち上がって、大きな声で、

  ちょっと、ダメじゃない!
  笹○さん!
  ちょっと、コピー止めて!
  さっきみたいに紙が全部出ちゃうから!
  ちょっと、ちょっと!
  早く止めてよっ!

そう叫びながら、コピー機の前で腰をかがめたり、あれこれ
スイッチを押したりしています。

  シャカ~、シャカ~…

  シャカ~、シャカ~…


  わあ~~~、ダメね!

  シャカ~、シャカ~…

  シャカ~、シャカ~…


  どうしよう!?
  これ…、

  シャカ~、シャカ~…

  シャカ~、シャカ~…

  わあ~~~、
  また紙が全部なくなちゃう!

  シャカ~、シャカ~…

もう一人のパートのおばさんが、僕の方を見て、コピーを
止めることは出来ないかと尋ねてきたので、僕はパソコンの
画面から、印刷の中止をクリックしました。

間もなくコピー機は停止しました。

  アレ!
  今、どうやったの?

笹やんが、食いつくように画面を見ながら言いました。

それよりも…、

コピー機から印刷された用紙を手に取って見ると、そこには…、

ただ一筋の線が印刷されているだけ!!

真っ白いA4用紙に1本の細い線が、スーッと横に印刷されて
いるだけです。。。

それが、何十枚もコピー機から出てきていたのです。

どうやら、僕が事務所に来る前に、同じように印刷を開始して、
今のように線しか写っていない用紙が出続け、コピー機の中に
納められているA4用紙を全て使い切ってしまったようです…。

す~~っと鼻から大きく息を吸い込んで笹やんが、

  このコピー機が壊れたのか…、
  パソコンの方がおかしいのか…?

そう言いながら、乱暴にマウスをいじり回しました。

すると…、

  ウィィィ~~~ン…、

と、コピー機が作動して、

  シャカ~、シャカ~…

  シャカ~、シャカ~…

また印刷を始めてしまいました…。

  シャカ~、シャカ~…

  シャカ~、シャカ~…


  ちょっと、笹○さんっ!
  今、ヘンなところ押したンでしょ!?
  どーするの!

  シャカ~、シャカ~…

  シャカ~、シャカ~…


  いや、オレは何もしとらんっ!
  知らんゾ!

  シャカ~、シャカ~…

  シャカ~、シャカ~…


  それじゃ、何でコピーしてるの!?
  笹○さんが、ヘンなことしたからでしょ!


  シャカ~、シャカ~…

  知らんっつーの!
  何もしとらん!

  シャカ~、シャカ~…

  シャカ~、シャカ~…

笹やんとおばさんが大声で言い合っています。
もう一人のおばさんが半狂乱になったような声で叫びました。

  ちょっと!
  止めて!止めて────っ!

  シャカ~、シャカ~…

僕は再び、印刷中止の操作をしました。。。


  ねえ!
  今、どうやったの?

また、笹やんが食いついてきました…って、オイ!
これぐらい知ってろヨ…と思いましたが、一応、笹やんに
印刷中止のボタンの位置を見せて教えてあげました。

それよりも…、

これはパソコンやコピー機のせいじゃなくて、作成した表に
問題があるんじゃないかと思い、改めて画面の表を確かめると、
エクセルの一行、18行目に引かれた罫線が、本当ならH列までで
終わっていないといけないのに、XFD列…つまり最後の列まで
引かれています。

操作中にどこをどうしたのか分かりませんが、笹やんが誤って
罫線を最後の列にまで入力してしまったのでしょう。

だから、作成した在庫表は1ページだけですが、印刷指示を
出すと、18行のXFD列まで引かれた罫線が全てA4用紙に印刷されて
出てくるのです。

全部で何枚分になるのか分かりませんけど…。

誤った罫線を消した上で、上書き保存してエクセルを閉じます。

これで一件落着ですが、1枚の在庫表を印刷するために何十枚、
いや、百枚以上のA4用紙を無駄にしてしまったわけです。。。


  ま…、1本の線が写ってるだけだから、
  もう一度、コピー機にセットして使おう!
  もったいないからナ!

そう言って、笹やんは線だけが写っているA4用紙をそろえて
コピー機の中にセットしました。

それから笹やんも僕も、庫内に戻り、商品出庫の作業をして
いました。

そろそろ昼メシにしようという時刻になり、僕らは出口へ出た時、
センター長が笹やんを呼び止めて、こんなことを言ってました。

  おい、笹○!
  さっき、パートのホソダさんから
  聞いたけど、オメー、めっちゃ
  ミスプリントしたそうだなっ!
  コピーすると出てくる紙はどれも
  線が入っとるし!
  コピーする面は裏側だから線が
  入っている方を上にしとけヨ!
  ったく…、
  オメーは、おバカ一直線だな!

笹やんは、ヘラヘラしながら聞き流しているようでしたが…。

おバカ…、一直線? 一直線って…?

意味ありげでなさそうな、センター長のそんな表現が妙に
気に掛かりました。
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