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笹やん 捜査線Ⅱ

この辺りに数店舗の店を構える回転寿司のチェーン…、

一皿105円(税込)、平日ランチタイムは一皿94円(税込)
なんてチラシも毎週のように入ってきます。

その回転寿司チェーンにも、バイト先の冷凍食品センターは
商品を納めていまして…、

ま…、寿司屋へ納めるモノと言えば、寿司のタネ…、

冷凍のマグロに、ヒラメ、鯛、エビ、イカ、タコ、穴子に
赤貝、ホッキ貝…

玉子まで冷凍なんですねぇ…、いやぁ~、回転寿司のタネって
ほとんど冷凍モンで賄えちゃっているンですね!

そんなコトも、ここでバイトして、わかったことです。

…って話はイイとしまして、その寿司のタネがセンター内で
紛失するという事件が、先週の火曜日から続けて3回もあった
そうです。

紛失した商品は、冷凍マグロ赤身、それと冷凍サーモン。

それから、2回目の時は鉄火巻用マグロも無くなったそうで。。。


  だから決まってマグロ赤身とサーモンが
  無くなってるんです!
  おかしいでしょ!?
  昨日もマグロとサーモンですよ!

笹やんが、センター長に大きな声を出して、そんなコトを
言っていました。

  火曜日は××店でマグロ、サーモンが
  届いていないって連絡が入ったナ…、
  水曜日は△△店で、マグロにサーモン、
  それと鉄火マグロだったな…。
  で、昨日がまた××店で火曜日と同じく
  マグロ、サーモンが届いていないって連絡が
  あったんだナ…

そう言ってセンター長は、腕組みしながら首をかしげています。

  マグロ赤身、それとサーモン…、
  どちらも、各店舗に毎回納めています。
  それだけバイトのヤツらだって、
  この二つの商品は、よく出る商品だと
  認識してるンで、納品する数量も、店も
  ちゃんと確認していると思うんです。
  それなのに…、

笹やんが、そこまで言うと、

  そーゆーことはイイから、
  出庫間違えとか、積み込み間違えとか、
  庫内作業にミスがなかったか確認しろよ!

センター長が制するように言いました。
しかし、笹やんは…、

  いやぁ…、だから今言ったように、
  マグロとサーモン、どっちも毎回、
  必ず各店舗分を出庫して積み込んで
  いるんスよ!
  バイトのヤツら…、
  いくら何でも、この二つに関しては
  間違えようがないっスよ!

食って掛かるような口調でセンター長に言っています。

  間違いようがないかどうか、
  もう一度、ちゃんと確認して来いヨ!
  よく出る商品だからこそ、気を緩めて
  間違えるってコトもあるだろっ!

そうセンター長が言えば、笹やんも、

  気を緩めるも何も…、
  緩めようがないじゃないですか!
  マグロ赤身とサーモンですよっ!
  何で緩むんですかっ!

そんなコトを大声で言い返しています。

  おまえ…、
  ナニ言っとるンだ?
  意味わからんし…

イラッとした感じでセンター長が言えば、

  なんで、マグロ赤身とサーモンなのか…って
  コトですね。
  赤貝や鯛切り身、ほかにもエビだってあったのに、
  なんで、マグロ赤身とサーモンだけが狙われたのか…

笹やん、ゆっくりと腕を組みながら、そう言いますと、

  まだ言っとるンか!
  そんなこと…。
  イイから作業に戻れって!

さらにイラつきながら、センター長が怒鳴ります。。。

  寿司ネタで一番人気なのは
  何ですか?

笹やんが聞くと、

  エエ加減にしとけヨ!
  おまえ…、
  怒るぞ、マジに…

センター長、マジにキレかかっているみたいです。。。

そんな二人のやり取りを、僕らバイトは作業をしつつ、
チラ見しつつ、笑いを抑えつつ…、

それから1時間もしないうちに…、午前10時45分だったと
思いますが…、

  おいっ!
  また××店からマグロとサーモンが
  届いてないって連絡あったソ!

センター長が、大きな声で言いながら庫内に駆け込んできました!

フォークリフトに乗っていた笹やん、センター長の声を聞き、
スーッとリフトを積み込み場の端に寄せ、スタ!ッと飛び降り、

  事件は大詰めですよ!
  火、土、日…、
  水、木、金曜日にはちゃんと
  ××店へ納品されたのに…、
  火、土、日のドライバーは
  誰です?
  そいつが先ず怪しい!

そう言う笹やんに、センター長が、

  全然ちゃうワ!
  火曜のドライバーはタナカで、
  木、金、土はシカダ。
  今日はニシさんだ!

と怒鳴りました。
これに笹やん、ちょっと眉をピクつかせながら、

  そーでしたか…、
  つまり、コレ、犯行のあった曜日、
  3つの曜日に3人のドライバー…、
  どうやって絞り込むか…

そんなコトを言っています。

  笹○…、おまえ、犯行って何や?
  なぁ?
  おまえ、配達のドライバーを疑ってるンか?
  つーか、おまえ、どーゆーつもりだ!?
  庫内作業に問題がなかったのか、それを
  充分に確認もせず、ドライバーを疑うなんて、
  サイテーだぞ!

センター長に言われ、笹やん、ややムッとした口調で、

  庫内のヤツらに問題はありません!
  さっき言ったように、マグロ赤身とサーモン、
  どちらも毎回出庫しているんですよ!
  気が緩もうが何だろうが、ほぼ全店に
  毎回出してる商品なんですよ!
  いいですか?
  今日の納品分だって、××店以外の店にも
  納品してるんですよ!
  いいですか?
  それなのに、ほかの店にはマグロもサーモンも
  オーダー数量通り、納品されていて、
  余分に納品されてるって連絡は入ってないんですよ!
  いいですか?
  ・・・・・・・いいですか?
  これがどーゆー意味か分かりますか?
  え?
  いいですか?

そう言いました。

  ・・・・・・足りなければ連絡してくるが、
  余分に納品されていたら連絡して来ないだろーな…。
  そうだよ…、マグロもサーモンも、ひょっとしたら
  余所の店に、間違えて納品したかも知れん…。

そんなコトをセンター長が言うと、

  あり得ないでしょ!
  3回も続けて別の店に納品しちゃったって
  言うんですか?
  あり得ません!
  いいですか?
  きっと犯人は、それとも、その家族の誰かが、
  マグロの赤身とサーモンが大好きで、
  それで、続けてマグロとサーモンを盗み続けて
  いるんですよ!

と、笹やんは断定するような自信ありげな言い方をしました。

  バカ!
  そっちの方があり得ないだろっ!
  なぁ?
  立て続けにウチでマグロとサーモンの
  寿司作って、家族で食ってンのか!?
  なぁ?
  そんなの考えられるか?
  なぁ?
  おまえ…、
  マジでそんなコト言ってンのか?
  なぁ?
  エエ加減にせーよ!

こうなるとセンター長も呆れてしまったのか、そんな表情で
笹やんに言い返しています。

  だって、ウチん中で、エビもイカも
  鯛も…、ってワケにいかないでしょ!?
  手間掛かるし、場所取るし…、
  だったら好きなモンを絞り込んで
  腹いっぱい食いたいと思うでしょ!

笹やん、負けじと声を大きくして言えば、

  エエ加減にしろっつーの!
  おまえの頭の中、どーゆー構造に
  なっとるんだ!?
  なぁ?
  犯人とか、そうじゃなくて、
  先ずドライバーから離れろっつーの!

真剣に怒り出したセンター長、声を荒げて言いました。

  この前の水曜日以降、
  △△店では未納事件が起きて
  ないですね…。
  犯人は捜査の目をくらますため、
  1度、△△店から盗んで行ったと
  考えてもイイんじゃ…

まだ、そんなコトを言っている笹やんに、センター長が、
今度は、まさしく怒声をあげて、

  エエ加減にしろっ!
  バカヤロー!
  アホなことばかり言っとらずに
  作業に戻れっ!

と言い捨てて、事務所の方へ歩いて行きました。

それをニヤ~っと笑いながら見送る笹やん…、
全然、こたえてません。。。

そして、その後も、僕らバイトに向かって、あれこれと
言い続けてました。

  あそこはどの店も商品が納品される際、
  検品をしないそうだ…。
  ひょっとしたら、実は納品されていたのに、
  届いてないと言っているかも知れん…。
  いや…、待てよ…。

そう言うと、笹やんは出庫中の商品を放っておいて、
事務所の方へ歩き出しました。

それから10分ほど経って、センター長とドライバーらしき人を
1人連れて、笹やんが戻ってきました。

そして、回転寿司チェーンの××店の出庫表を見せながら、
笹やんがしたり顔で話し出しました。

  これが昨日の出庫表ですが、マグロ赤身とサーモン、
  この二つをひとつのスチロールケースに入れて
  積み込んでます。
  実は、今日の分も同じです。
  火曜日は、はっきり覚えてませんが、
  土、日ほど数量が多くないはずですから、
  スチロールケースの中には別の寿司のタネも
  入っていたかも知れませんし、あるいは…、
  小さなダンボールに入れる場合もあるんで、
  そうしたのかも知れません。

さらに、

  何が言いたいかって言いますと、
  ××店へ納品されるマグロ赤身とサーモンは
  常に同じケースの中に入っていたと言うこと
  ですよ。
  これは、××店に限ったことじゃなく、
  マグロ赤身とサーモンは収納ラックが
  同じで、出庫するヤツらも一緒に
  出して、まとめてケースに入れてます。
  だから、他の店でも同じケースに入れて
  納品されてるばずです。

笹やんが言うと、センター長は、

  で…、何が言いたいンや?
  ××店の分だけ、そっくりそのまま
  マグロとサーモンのケースが
  どこかへいってしまったと
  言うわけか?
  で…、どこへいったンや?

と冷静を努めるように言いました。

今度は笹やん、ドライバーらしき人を見て、

  ××店に限らず、あそこは検品せずに
  納品するよな?
  シカダ…、おまえ、昨日、
  ××店へ行ったとき、間違いなく
  マグロとサーモンが入ったケースを
  納品したか?

と尋ねました。どうやらこのドライバーらしき人は、昨日、
××店へ配達したシカダさんと言う人のようです。

  いやぁ、そう言われるとな~…、
  僕らドライバーはケースの中身まで
  確かめないから…。
  でも、店ごとに納品するケースの数は
  確認した上で積み込んで、納品のときも、
  その数通りに降ろすから…。
  ××店の時もケース数は合ってたヨ!

大人しそうな顔立ちのシカダさんが、腕を組みながら、
そう言いました。

それを聞いて笹やん、勝ち誇ったような顔でセンター長を見て、

  でしょ?
  ね?
  ちゃんと庫内では出庫して、積み込みまで
  確実に作業できてンですよ!
  それで、このシカダの言った通りだとしたら、
  もう、コレ…、店側に問題があるんスよ!

そう言うと、センター長が首をひねりつつ、

  ××店の様子を確認した方がよさそうだな…、
  それと、今日、配達したニシさんにも
  納品状況を聞いてみよう…。

と言いました。

  これで、かなり絞り込めましたね。
  犯人は店側の誰か…ってコトです。
  △△の店も、同じように店側の
  誰かが…、

笹やんがそう言うと、

  犯人呼ばわりするな!
  ドライバー疑ったり、店の人間を疑ったり、
  おまえ、警察官じゃないンだぞ!
  そんなことより、この先、どーすれば
  こう言った問い合わせがなくせるか、
  それを考えろよ!

センター長が、またまたイラつきながら言いました。

結局、この紛失事件、今日のところは解決にまで至りません
でしたが、こんな感じで一段落着いたようで。。。

作業改善、クレーム削減などについては全く気のない
笹やんですが、こうした事件には真っ先に首を突っ込み
ます。

好きなんでしょうね…。

解決に向け、笹やんの活躍を期待します!  
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