笹やん 仕掛人
僕が日曜日だけバイトしている冷凍食品センターに、今日は
「ミスゼロ推進活動」のコンサルタント・イシダさんが視察に
やって来ると笹やんから聞きました。
イシダさんは、40代半ばと思われる超濃厚な化粧をして、
ケバケバしい服装の女性で、笹やんの天敵でもあります。
彼女は、これまた濃厚に香水の匂いをプンプンさせており、
笹やんは彼女を“ニオイ”と呼んでいます。
で…、
センター内の作業ミスを撲滅させることを主旨とした「ミスゼロ
推進活動」の作業改善確認リーダーに任命されている笹やんは、
たぁ────ッ
も─────ッ
また“ニオイ”のヤツから、
無理難題をアレコレ言われるんだよなぁ…
ハア────ッ
うっとーしーなー…
と、首だか肩だかの凝りをほぐすように、首をグリングリンと
右回転、左回転と回しながら、さも鬱陶しそうに言っていました。
それにしても、「ミスゼロ推進活動」がスタートして、かれこれ
10ヵ月ぐらい経ちますが、目に見えるほどの改善効果はないんじゃ
ないかと思います。
それに、改善を指摘された箇所が、実際に改善できているかを
確認し、指導するべきリーダーの笹やんが、こんなふうですから
もはや「ミスゼロ推進活動」も名ばかりで、形骸化していると
言ってもイイんじゃないかと思っています。
ま…、僕は週に1回だけしか来ないので、正確にはわかりませんが、
雰囲気的に、まったく活動していない感じです。。。
あ─────ッ
どーすっかなー…
何にもやってないけど、
どーやって答えりゃイイかなー…
やっぱり…
何も活動していないことが、この笹やんの言葉で証明された
ようなモンです。。。
ところが…、
3、4ヵ月前から、このセンターで働くことになった社員の
イトーさんは、他の社員に比べて、この活動に熱心に取り組んで
いるように見えます。
入って間もないため、こんな“改善活動”も新鮮に映るのでしょう。
イトーさんは、何か後ろめたいことがあったり、動揺したり
すると、すぐにキョロキョロと目を泳がせてしまう癖があり、
センター内では“泳ぎ目のイトー”として通っています。
笹やんは、このイトーさんもあまり快く思っていないようで、
たまに言い争っているシーンを見かけます。
そのイトーさんが、フォークリフトに乗って作業している笹やんを
呼び止め、
笹○さん、先月後半から今月前半までの
作業改善事項を一覧にしてくださいましたか？
と質問してきました。
それを笹やん、あからさまに不機嫌そうな顔つきで、
かいぜんじこお～？
いちらん～？
ナニそれ？
そう言いながら、リフトを操っています。
先週のミーティングでセンター長に
言われたじゃないですか。
作成しておくようにって。
僕からも改善事項をいくつか
お伝えしましたよね。
イトーさん、若干、声を荒げて、笹やんに言いました。
そんなもん、忙しくて
やっとれん！
見ろ！
今だって、こんなに出庫商品が
あるんだゾ！
これ出庫したら庫内整理しなきゃ
ならんのだゾ！
入庫商品が最近、めっちゃ多いんで
ラックに納まり切らんのだ！
オマエ、少し現場を手伝え！
そんな“改善ごっこ”ばかりやってないで！
そう言い捨てて、笹やんは、ピッピッピ…っとリフトの電子音を
響かせつつ、イトーさんから遠ざかっていきました。
ここは引けない！とばかりにイトーさん、足早に笹やんの
リフトを追いかけ、
ですから、少しでも効率良く商品を
収納するように、商品の収納ロケーションを
見直して改善しましょう…って、
僕が提案したじゃないですか！
僕も収納ロケーション見直しを現場作業の
合間に進めているんです！
そのことを今日、イシダさんも交えて
相談しましょう…って昨日も笹○さんに
言ったじゃないですか！
僕には、よくわからない内容ですが、明らかにイトーさんは、
怒ってるってコトはよくわかります。。。
ピッ！とリフトを停止させ、笹やんはイトーさんの顔を見下ろし、
よし！
今日、コンサルが来たら、
オマエから、その相談を持ち掛けろ！
それを今日のメインテーマにしよう！
改善事項をいくつも出して、アレコレ
考えるより、ひとつずつ集中して
考えていった方がイイ！
なっ？
そう言うと、イトーさんの目が、少しだけ泳いだように見えました。
しかし、キッパリとした口調でイトーさんは、
わかりました！
でも一覧を作成していないことに
ついては、僕、知りませんから…
その点については、笹○さんから
説明してくださいね！
と言いました。
すると笹やん、キッと目つきを改めて、しっかりと頷きながら、
わかった！
と言いました。
午後1時30分
“ニオイ”こと、コンサルのイシダさんが、やや後ろからついて来る
センター長を、まるで従者を従えるように作業現場にやって来ました。
それが笹やんの方へ近づいてきます。
相変わらず強烈過ぎる香水のニオイ…、
今日はテカテカした銀色っぽいブラウスに、赤紫色の厚手の
ジャケットを着ており、視覚と臭覚がクラクラしそうです。。。
笹やんは、ニヤけたような顔つきで、近づいてくる“ニオイ”と
センター長を見比べながら、突っ立っています。
まずセンター長が言いました。
笹○、イシダさんに先月後半からの
改善事項の一覧を提出して
見てもらえ
すると笹やん、
それが、バタバタしてまして
まだ全部できていなくて…、
で、今日はイトーから、商品の
収納ロケーションを見直して
入庫作業を改善すると言う
大きなテーマを相談させて
いただきたくて…
と言いながら、横にいるイトーさんを促しました。
そこでイトーさん、ペコリとイシダさんにお辞儀をして、
アレコレと入庫作業について話し出し、ラックの図面とか
収納商品リストなど、書面を見せて説明を進めました。
それを聞きながら、イシダさんは真剣な表情で、時々頷きながら、
そうね…
うん、うん
などと相槌を打っています。
僕が見た感じでは、イシダさんはイトーさんの改善に対する
姿勢などが気に入っているようで、好感を持っていると思いました。
イトーさんも、イシダさんに対して従順な態度で接しており、
イシダさんにとっては、笹やんに比べたらイトーさんの方が
格段に扱いやすいだろうと思われます。
一通り説明を聞いた後、イシダさんは、
とても改善効果が期待できる提案ですね。
少し時間が掛かるかも知れないけど、
最後までやり遂げてください。
きっと素晴らしい成果が出せると思います。
と、満足気にイトーさんの顔を見て、そう言いました。
この段階で、もう、このテーマはイトーさんの仕事になったわけです。
イトーさんは改善活動に
向いているわね。
ほかにも何か改善事項が
見つかった？
そんなことをイシダさんが、イトーさんに向けて言うと、
すかさず笹やんが、センター長に向かって、
あの～、ちょっとすみませんが、
改善確認のリーダー、イトーに
やらせてはどーですかねぇ？
ワタシ、ここ最近、入庫と出庫の
作業に負われっ放しで、バタバタでして…
イトーなら、改善活動に興味も強そうですし…
どーですかねぇ？
そう言いました。
ここでイトーさん、目が泳ぎ始めました。
キョロキョロ…
キョロキョロ、キョロキョロ…
キョロキョロ、キョロキョロ、キョロキョロ…、
秒速5往復ほどの速さで目が左右に泳いでいると言ってもイイぐらい、
とても感動的な目の泳がせ方です！
もう僕は我慢できず、そっと顔を背けて、みんなに隠れて
笑っちゃいました☆
イトーさんも、このイシダさんがヘビのように執拗に改善活動に
ついて活動内容や成果などを聞いてくることを知っており、
従順な態度を示してはいても、本心では避けたいと思っている
のでした。。。
それを笹やんの一言で、センター長が、
イトー…
オマエ、やってみるか！
なんて言い出し、さらにイシダさんからも、
そうねぇ…
イトーさんがリーダーになって
もらいましょうか。
意欲的ですしね☆
と言われてしまい、もう引くに引けない所に立ってしまっている
ようです。
そんな状況に、イトーさんは激しく目を泳がせ、動揺している
わけです。。。
そんなイトーさんを、澄ました顔で見つめる笹やん…、
自分は鬱陶しい任務から解かれ、イトーさんへ見事に振って
しまいました。
それも、イシダさん、センター長の二人から同時に了承される場で！
見事な仕掛っぷりです！
時々、こんなふうに笹やんは、目を見張るような仕掛をします！
やっぱり、笹やんは侮れない！
仕掛人・笹やんの一幕でした。
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「ミスゼロ推進活動」のコンサルタント・イシダさんが視察に
やって来ると笹やんから聞きました。
イシダさんは、40代半ばと思われる超濃厚な化粧をして、
ケバケバしい服装の女性で、笹やんの天敵でもあります。
彼女は、これまた濃厚に香水の匂いをプンプンさせており、
笹やんは彼女を“ニオイ”と呼んでいます。
で…、
センター内の作業ミスを撲滅させることを主旨とした「ミスゼロ
推進活動」の作業改善確認リーダーに任命されている笹やんは、
たぁ────ッ
も─────ッ
また“ニオイ”のヤツから、
無理難題をアレコレ言われるんだよなぁ…
ハア────ッ
うっとーしーなー…
と、首だか肩だかの凝りをほぐすように、首をグリングリンと
右回転、左回転と回しながら、さも鬱陶しそうに言っていました。
それにしても、「ミスゼロ推進活動」がスタートして、かれこれ
10ヵ月ぐらい経ちますが、目に見えるほどの改善効果はないんじゃ
ないかと思います。
それに、改善を指摘された箇所が、実際に改善できているかを
確認し、指導するべきリーダーの笹やんが、こんなふうですから
もはや「ミスゼロ推進活動」も名ばかりで、形骸化していると
言ってもイイんじゃないかと思っています。
ま…、僕は週に1回だけしか来ないので、正確にはわかりませんが、
雰囲気的に、まったく活動していない感じです。。。
あ─────ッ
どーすっかなー…
何にもやってないけど、
どーやって答えりゃイイかなー…
やっぱり…
何も活動していないことが、この笹やんの言葉で証明された
ようなモンです。。。
ところが…、
3、4ヵ月前から、このセンターで働くことになった社員の
イトーさんは、他の社員に比べて、この活動に熱心に取り組んで
いるように見えます。
入って間もないため、こんな“改善活動”も新鮮に映るのでしょう。
イトーさんは、何か後ろめたいことがあったり、動揺したり
すると、すぐにキョロキョロと目を泳がせてしまう癖があり、
センター内では“泳ぎ目のイトー”として通っています。
笹やんは、このイトーさんもあまり快く思っていないようで、
たまに言い争っているシーンを見かけます。
そのイトーさんが、フォークリフトに乗って作業している笹やんを
呼び止め、
笹○さん、先月後半から今月前半までの
作業改善事項を一覧にしてくださいましたか？
と質問してきました。
それを笹やん、あからさまに不機嫌そうな顔つきで、
かいぜんじこお～？
いちらん～？
ナニそれ？
そう言いながら、リフトを操っています。
先週のミーティングでセンター長に
言われたじゃないですか。
作成しておくようにって。
僕からも改善事項をいくつか
お伝えしましたよね。
イトーさん、若干、声を荒げて、笹やんに言いました。
そんなもん、忙しくて
やっとれん！
見ろ！
今だって、こんなに出庫商品が
あるんだゾ！
これ出庫したら庫内整理しなきゃ
ならんのだゾ！
入庫商品が最近、めっちゃ多いんで
ラックに納まり切らんのだ！
オマエ、少し現場を手伝え！
そんな“改善ごっこ”ばかりやってないで！
そう言い捨てて、笹やんは、ピッピッピ…っとリフトの電子音を
響かせつつ、イトーさんから遠ざかっていきました。
ここは引けない！とばかりにイトーさん、足早に笹やんの
リフトを追いかけ、
ですから、少しでも効率良く商品を
収納するように、商品の収納ロケーションを
見直して改善しましょう…って、
僕が提案したじゃないですか！
僕も収納ロケーション見直しを現場作業の
合間に進めているんです！
そのことを今日、イシダさんも交えて
相談しましょう…って昨日も笹○さんに
言ったじゃないですか！
僕には、よくわからない内容ですが、明らかにイトーさんは、
怒ってるってコトはよくわかります。。。
ピッ！とリフトを停止させ、笹やんはイトーさんの顔を見下ろし、
よし！
今日、コンサルが来たら、
オマエから、その相談を持ち掛けろ！
それを今日のメインテーマにしよう！
改善事項をいくつも出して、アレコレ
考えるより、ひとつずつ集中して
考えていった方がイイ！
なっ？
そう言うと、イトーさんの目が、少しだけ泳いだように見えました。
しかし、キッパリとした口調でイトーさんは、
わかりました！
でも一覧を作成していないことに
ついては、僕、知りませんから…
その点については、笹○さんから
説明してくださいね！
と言いました。
すると笹やん、キッと目つきを改めて、しっかりと頷きながら、
わかった！
と言いました。
午後1時30分
“ニオイ”こと、コンサルのイシダさんが、やや後ろからついて来る
センター長を、まるで従者を従えるように作業現場にやって来ました。
それが笹やんの方へ近づいてきます。
相変わらず強烈過ぎる香水のニオイ…、
今日はテカテカした銀色っぽいブラウスに、赤紫色の厚手の
ジャケットを着ており、視覚と臭覚がクラクラしそうです。。。
笹やんは、ニヤけたような顔つきで、近づいてくる“ニオイ”と
センター長を見比べながら、突っ立っています。
まずセンター長が言いました。
笹○、イシダさんに先月後半からの
改善事項の一覧を提出して
見てもらえ
すると笹やん、
それが、バタバタしてまして
まだ全部できていなくて…、
で、今日はイトーから、商品の
収納ロケーションを見直して
入庫作業を改善すると言う
大きなテーマを相談させて
いただきたくて…
と言いながら、横にいるイトーさんを促しました。
そこでイトーさん、ペコリとイシダさんにお辞儀をして、
アレコレと入庫作業について話し出し、ラックの図面とか
収納商品リストなど、書面を見せて説明を進めました。
それを聞きながら、イシダさんは真剣な表情で、時々頷きながら、
そうね…
うん、うん
などと相槌を打っています。
僕が見た感じでは、イシダさんはイトーさんの改善に対する
姿勢などが気に入っているようで、好感を持っていると思いました。
イトーさんも、イシダさんに対して従順な態度で接しており、
イシダさんにとっては、笹やんに比べたらイトーさんの方が
格段に扱いやすいだろうと思われます。
一通り説明を聞いた後、イシダさんは、
とても改善効果が期待できる提案ですね。
少し時間が掛かるかも知れないけど、
最後までやり遂げてください。
きっと素晴らしい成果が出せると思います。
と、満足気にイトーさんの顔を見て、そう言いました。
この段階で、もう、このテーマはイトーさんの仕事になったわけです。
イトーさんは改善活動に
向いているわね。
ほかにも何か改善事項が
見つかった？
そんなことをイシダさんが、イトーさんに向けて言うと、
すかさず笹やんが、センター長に向かって、
あの～、ちょっとすみませんが、
改善確認のリーダー、イトーに
やらせてはどーですかねぇ？
ワタシ、ここ最近、入庫と出庫の
作業に負われっ放しで、バタバタでして…
イトーなら、改善活動に興味も強そうですし…
どーですかねぇ？
そう言いました。
ここでイトーさん、目が泳ぎ始めました。
キョロキョロ…
キョロキョロ、キョロキョロ…
キョロキョロ、キョロキョロ、キョロキョロ…、
秒速5往復ほどの速さで目が左右に泳いでいると言ってもイイぐらい、
とても感動的な目の泳がせ方です！
もう僕は我慢できず、そっと顔を背けて、みんなに隠れて
笑っちゃいました☆
イトーさんも、このイシダさんがヘビのように執拗に改善活動に
ついて活動内容や成果などを聞いてくることを知っており、
従順な態度を示してはいても、本心では避けたいと思っている
のでした。。。
それを笹やんの一言で、センター長が、
イトー…
オマエ、やってみるか！
なんて言い出し、さらにイシダさんからも、
そうねぇ…
イトーさんがリーダーになって
もらいましょうか。
意欲的ですしね☆
と言われてしまい、もう引くに引けない所に立ってしまっている
ようです。
そんな状況に、イトーさんは激しく目を泳がせ、動揺している
わけです。。。
そんなイトーさんを、澄ました顔で見つめる笹やん…、
自分は鬱陶しい任務から解かれ、イトーさんへ見事に振って
しまいました。
それも、イシダさん、センター長の二人から同時に了承される場で！
見事な仕掛っぷりです！
時々、こんなふうに笹やんは、目を見張るような仕掛をします！
やっぱり、笹やんは侮れない！
仕掛人・笹やんの一幕でした。
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Facebook コメント
おはようございます。
笹やんさん、なかなかの策士ですね。
職場が一緒なら惚れていますね
笹やんさんに、完全に…
by もも子 (2013-03-18 06:30)
もも子さん、こんにちは
毎度ありがとうございます。
冴えている時もありますが、ふらふら
してる時もある笹やん…。
ホント、正体がつかみにくい気まぐれな
人です。
by あべしん (2013-03-18 22:55)